現代人 2024.6.21 国立映画アーカイブ | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 何の説明もなく社員がたくさんいる部屋が写る。課長室にいる人は課長だろう。何かにおびえている様子だ。主任と相談をしている。仕事のことを話すようではない。打ち合わせの予定を決めている。仕事の時間以外の予定、つまり時間外の予定?とこれには?が付く。オフィスでもなく時間外に誰かと打ち合わせ、何だか変な会社だな。

 

 ここは会社ではなく役所だった。それも東京の省のつく役所、1952年なので、東京もまだ整備されておらず焼け跡や空き地が方々に見える。彼らの職場は焼け残ったビルを改装して使っているような感じだ。ビルというビルは薄汚れた外装を見せている。この後ぐんぐん景気回復、生活向上へとなっていくのだが、ここではまだ雰囲気さえ見えていない。

 

 だが建設局管理課の連中は景気が良さそうだ。給料は薄給だろうが別な方面からの収入がある。簡単に言うとワイロですか、やひな男が役人の部屋にずかずかとやって来ては、親が子にあげるように金を渡す。今夜のバー代に使うのですかね。要するに官民ズブズブ状態。今でこそパーティー券問題で揉めてるが、この頃は官民ピッタリ息の合ってること!

 

 いくら隠そう隠そうとしても実態があるんだから隠せやしない。民が官に付け届けをするのは常識、そうやって社会がうまく回ってるんだから、問題あるの? と言われてるみたい。でもこれだけあけすけにやられると、この役所で正義づらするわけにもいかない。小田切はたぶん入ってきた当初は、ここは変だ、悪いことしてる、やめてほしい、と思って課長に進言したことだろう。でもそのうち部屋の雰囲気に染まり、悪貨は良貨を駆逐する、良貨は悪貨に駆逐されることになる。そうなったら引き返すこともできず、安易にもらえるものは貰っとく、これに陥る。

 

 荻野課長は妻が結核で高原で療養中、金が掛かる。しかし汚職仲間の三好主任が左遷されたのを機に業者との付き合いを止そうと決めた。ところが新しく主任になった小田切は若く進取の気質があるので頼もしく思っていたのに期待が外れ、散々かき回されることになる。愛人の取り合いになったり、めちゃくちゃだ。汚職を平気でする役人は家庭生活もダメ、正しい愛も築けない奴らなのです。

 

 彼らを称して現代人とはよく言った!昔も今もの現代人は変わっちゃいないってことです。これなら現代の現代人を描けるね、こんな現代人はなくなりはしない。

 

監督 渋谷実

出演 池部良 小林トシ子 山村聰 高野由美 山田五十鈴 多々良純 伊達信 山路義人 水上令子 安部徹 芦田伸介 高松栄子 日夏紀子 望月優子

1952年