母とわたしの3日間 2024.5.25 シネマート新宿2 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 この映画を見てて思い出した映画がある。

 

1954年「エノケンの天国と地獄」

 ストーリーはこの世にいた時、悪事を働き地獄に落ちた男が10年の地獄の刑期を終え、この世に少しだけ戻れることになった。死んだ時、妻は妊娠中だった息子は10歳になり、遊び仲間と広場で相撲を取っているのを見つけ、自分もその中に入れてもらう。息子と相撲を取り、満足して天国に帰るのだった。

 

 

 天国と地獄の想定はどこにもあるし、誰でも理解できるものだろう。宗教は生きている人に天国をめざさせ、地獄に落ちないようにさとす。その道を案内するのが宗教家。

 

 天国から地上を見ている。他人である閻魔だけでなく、身近な人に覗かれてると思うと恥ずかしいことはできない。どちらにしても誰かが見てることを忘れちゃいけない。やっぱり地獄はあったほうがいい。

 

 

 韓国の母親ポクチャは天国から地上は見えなかったらしい。だってアメリカで大学教授しているはずなのに、韓国に戻っていたことを知らなかったもの。降りてきてみれば、生きていた時の店があって娘が料理を作っている。なんで?となる。

 

 親が子どもに期待するのはかまわない。でも過度な期待は子どもには重荷でしかない。韓国は学歴社会と聞く、みんなが目指す大学に希望者全員が入れることはない。入れる人がいれば外れる人もいる。卒業後の就職先選びにも繋がっていて、さらに将来の生活にも関係ある。

 

 UCLAをウクラと呼ぶことあるかな、まさかとは思うけど、ウクラあんがい言いやすいじゃないか。UCLAの教授を辞めるのは相当な理由があったからだろう。アジアンで女性が颯爽と活躍するのが難しい、鬱になるほどのことが重なったのだろう。

 

 ちょっと帰ってみよう、休暇ついでに母のやっていた食堂を再開しよう。戻れるところがあるのは良いことだ。寅さんじゃないけど彼女にとって母の食堂はまさに故郷そのものだった。

 

 でも残念ながら故郷で待っていてくれる人はいない。故郷の空、故郷の空気、懐かしい田舎の村、でも母はいない。幽霊でもいいから出てくれないものか。出たんですよ、来たんですよ、幽霊というか姿の見えない母が。

 

 天国の仕組みがわかってきたぞ。天国人は地上に降りることが出来る。3日間は限定かどうか。地上人との接触はダメで、姿も見えないし、話も出来ない。近くに寄るのは出来る。取り仕切る組織があって、この3日間を管理している。人の行動は気まぐれで管理しにくいが対応もしてくれる。いい加減なところと臨機応変なところがあるのは愛嬌だ。こういう良いことをしてるのだからより柔軟であってほしい。

 

 親は子の幸せを願っている。たぶんそういう親は多いと思う、そう願いたい。その想いが直接子どもに伝わればいいのに、そうならないこともある。この親子がそうだった。この母は自分はどんな犠牲を払ってでも子どものためならなんでもする。その気持ちが先走って、かえって子どもが見えなくなっていた。

 

 かたや娘のチンジュは母はまったく構ってもくれず寂しい思いばかり。母から事情と想いを説明されれば分かったかもしれない。でもそうしてくれなかった。すれ違った想いは大人になっても解消されなかった。そして母は亡くなった。

 

監督 ユク・サンヒョ

出演 キム・へスク シン・ミナ カン・ギヨン ファン・ボラ パク・ミョンフン チャ・ミギョン

2023年