雲の上団五郎一座 1998.10.23 フィルムセンター | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 雲の上団五郎一座が、どさ回りゆえ公演場所を転々とする様はもの悲しい。次の舞台が決まってないのは心細いだろう。公演できないのは仕事がないっていうことだ。金も入らず先も見えない。でもそんな暮らしは慣れているようだ。いく先々でツテを求めている。

 

 四国に来て酒井英吉という青年に声をかけられた。彼から次の公演につながる縁ができたが、とんとん拍子とは行かず、悲劇か喜劇かの展開。一座のメンツを見れば喜劇以外は考えられない。

 

 舞台劇を映画化したんだ。そういえば、見覚えがあった。でも、今ではこの中に出てきた人の多くが亡くなってしまって、上演できないだろう。残念なことだ。映画は後に残るからいいが、舞台はその時、その場所に居合わさないと見ることが出来ない。私は舞台をほとんど見に行かないから、芝居に関しては発言できない。

 

 この映画だけでなく、昔の映画を見るといい俳優がたくさんいたことを知る。今ではいなくなってしまって、まともな映画は出来ない。今一番必要なのは俳優だろう。出来る役者が少なくなってしまって、テレビのタレントしかいないのだから、なさけない。でも、元に戻らないことを言っても詮無きこと。なつかしい俳優たちの名演をうっとりとみつめるだけだ。

 

 映画を作った時点でどのように考えていたか、終わりの方はずっと舞台中継のようになっていた。後々にまで残しておこうとしたかのようだ。映画としての形はくずれたとしても、この措置は正解だったと思う。そういえば、舞台とか音楽会などが映画で出てくると、そのままだらだら、というのが多いように思う。舞台は残そうと思うと、切れない、だから長くなるのだろう。冗長になっても、後から見る者にとっては貴重な記録になっている。そうかと言って、舞台まるごとを映画にしてもつまらないだろうが。

 

 それでも、この映画に出ている人はどさ回りをしなくてもすむような人だから、わびしさはないが、実際の旅役者は大変だろうなと思う。だけど、別な楽しみというか、面白さもあるだろうし、何しろ好きで役者をやっているのだから、誰に文句を言うことではない。

 

監督 青柳信雄

出演 フランキー堺 水谷八重子 榎本健一 三木のり平 八波むと志 丘寵児 早埼文司 古川保夫 和気成一 森川信 沢村いき雄 由利徹 南利明 佐山俊二 森明子 花菱アチャコ 清川虹子 藤木悠 北川町子 筑波久子 高島忠夫 内田朝雄

1962年