19世紀のイギリスは多くの植民地を持っていた。そこで、さらなる土地を求めて世界をさすらうイギリス人たちがいた。彼らは未だ未踏の地に乗り込んで、そこを征服しようと企んでいた。それもイギリスの植民地にするためではない、自分がそこの王になる目論見なのだ。
ダニエル・ドレイボット(ショーン・コネリー)とピーチ・カーネハン(マイケル・ケイン)はヒマラヤのさらに奥地のカフリスタンで王になると宣言して旅立った。今の世の中で王になろうなんて、夢見るだけでも困難なのに、王になろうとして、なった男の話だ。王は絶対の権力を持ち、なんでも思うがままになるはずだ。だから王になって宝石財宝を自分のものとし、合法的に持ち帰ろうとまでは考えなかったにせよ、とにかくそんなことが目的だったに違いない。文明人としてたかをくくっただろうが、それにしても二人は勇気があった。
作戦はこうだ。自分を神と信じ込ませること。これは偶然が偶然を呼んで成功した。いともあっさりと1人のボスをてなづけると、次から次へと戦いを広げて行き、次々に彼らを服従させてゆく。鮮やかすぎてあっけにとられる位。しかし王ともなると、そうやすやすとなれるものではなかった。そしてまた偶然が彼を王にのしあげる。胸バンドに刺さった矢がそうだった。その偶然が、彼を神としての王の位置からただの男におとしいれる。危うい綱渡りの末、負けてしまうことになる。
王となった男は何をすべきか。もちろん財宝の類を持って英国に帰るはずだった。何を思ったのか、王になったら、そうするつもりにはなれなくなった。本当にこの国を良いものにして行こう、行けるんだと思い始めていたのだ。それは成金趣味の思いつきだったかもしれない。ずいぶんと思い上がった考えかもしれない。しかしその時、彼は本当にそうしようと思い、そうできると信じていたのだ。できることなら彼にずっと王であって欲しかった。それが何らかの破局として終わったかもしれなくてもいいじゃないか。
このバカバカしい冒険談は手放しで楽しめばいい。まるっきりの嘘っぱちかもしれないが、それもいいじゃないか。
このように堂々とした盗っ人には拍手をしたい。ショーン・コネリー好演、マイケル・ケインも新しい役にチャレンジしているし、クリストファー・プラマーもなかなか良い。(ただイメージとかなり違うのです始めのうち彼だとは思えなかった)好ましい一編であった。
監督 ジョン・ヒューストン
出演 ショーン・コネリー マイケル・ケイン クリストファー・プラマー サイード・ジャフリー ドグミ・ラルビ カロウム・ベン・ボウイ シャキーラ・ケイン
1975年