ジカ熱で成人が死亡することはあまりありません。肺炎合併例での死亡は以前から報告されていますが、ウイルスそのものによっておきた肺炎ではないと考えられています。
ジカウイルスがギラン・バレー症候群(神経の病気)および急性散在性脳脊髄炎を合併することがあることは、はっきりしています。そちらが悪化した場合の死亡はありえますが、それもまれなことです。(この合併症に関する以前の記事はこちら★とこちら★★)
子供では、新生児の小頭症(その後の発育障害)で死亡することはありますが、大人は致命的になることが少ないです。
昨日(4月29日)の報道では、プエルトリコの70歳代の男性が、ジカウイルスによる血小板減少症で死亡したとのことです。血小板が少ないと、皮膚や内臓にぶつけてもいないのに自然と出血がおきて、最悪の場合死亡します。なお、この患者さんは2月に亡くなったのですが、なぜか今になって公表されました。
写真はジカウイルスによる死亡例を報道する2016年4月29日のNBCニュースから。
世界の膨大なジカウイルス感染者数を考えると、血小板減少症はまれな合併症ですので、ジカ熱を過剰に恐れる必要はありません。
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実はジカウイルスで血小板減少症が起こることは以前から報告されていましたが、あまり注目されていない感じでした。
下記は、プエルトリコの人ではありませんが、血小板減少症をおこした患者さんの写真です。手が腫れています。また、自然におきた皮下の出血で、皮膚の紫~茶色の変色がありますね。
これは3月にLancet誌で報告された皮下出血(紫斑)と皮下の血腫(血のかたまり)の写真。スリナムで感染した患者さんです。
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今回の報道でわかること。
①ジカ熱では、成人でも血小板減少症で死亡する例がある(しかしこれはまれな合併症なので、過剰な心配は不要)。
②十分に研究が進んでいない病気では、まだわかっていない合併症・症状がこれからも見つかる可能性を忘れてはいけない。
③未知の合併症は治療法も確立されていないので、ジカ熱に関しては病気にならない(ウイルス感染しない=蚊に刺されない)ことが最重要。
医療はつねに勉強だと思います。