昨日、また中国でジカ熱患者さんがみつかりました。これで9人目。
患者さんは23歳の広東省に住む男性で、2月19日にベネズエラからに戻ったそうです。帰国1週間後に発疹が出て、ジカ熱と診断されました[注:潜伏期間は2-12日といわれています]。現在恩平市の病院に隔離され状態は安定しているそうです。早く良くなるといいですね。
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ところでジカ熱の患者さんに、ギラン・バレー症候群という、筋肉が麻痺する病気が合併することが以前から指摘されていましたが、本当にジカウイルスが関係しているかはっきりわかっていませんでした。
ルーズベルト大統領もギラン・バレー症候群だったようです(ジカ熱以外の原因による)。
若き日のアメリカ大統領、フランクリン・ルーズヴェルト(1882-1945)。日本に宣戦布告した大統領ですね。彼は下半身の麻痺があり、車いすで移動していた。当時ポリオの診断を受けていたが、実際はギラン・バレー症候群を患っていたようである(2015年の論文)。ルーズヴェルトは脳出血で死亡した。上記写真はこちらから引用。
昨日(2月29日)発表されたLancet誌の論文では両者の因果関係がほぼ確実なようです。この論文ではフランス領ポリネシアのギラン・バレー症候群の患者(42人)、この病気がないジカ熱患者(70人)、その他の病気で受診した患者(98人)を調査しています。詳細は省略しますが、ギラン・バレー症候群の患者全員からジカウイルスの抗体(ウイルスに感染した証拠)が検出されました。
論文では(下のグラフ)ジカ熱患者増加に少し遅れてギラン・バレー症候群患者数の増加がみられたことが示されています。
横軸は日付、オレンジ色はジカ熱患者数、赤はギランバレー症候群患者数。縦軸のスケールはオレンジと赤で違います。上記論文から引用。
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ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome)は、急性・多発性に筋肉を動かす運動神経が主に障害され、通常左右対称に下肢から始まり、上半身に広がり四肢に力が入らなくなる病気です。かぜや胃腸炎の後に起きることがあり、まれに呼吸ができなくなって死亡する例がみられます。様々なウイルス、細菌感染に伴って発生します。ジカウイルスだけが原因ではありません。
わたしの勤めるクリニックでも、以前この病気を疑った患者さんがおりました。
新しい病気の出現に伴って新しい知識が増えてきます。常に勉強しないと。