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ほんとなかよし

本紹介ブログ(と格好つけてる読書感想ブログw)
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ネタバレ自重・的外れで独断偏見に満ちているけど
読んだ誰かが読書をちょっとだけ好きになるブログ

だったらいいな・・・

鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連の賑やかなあの人や、困惑するような珍客も。人々は懐かしい本に想いを込める。それらは予期せぬ人と人の絆を表出させることも。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読みとっていく。彼女と無骨な青年店員が、その妙なる絆を目の当たりにしたとき思うのは?絆はとても近いところにもあるのかもしれない―。これは“古書と絆”の物語。


内容 「BOOK」データベースより


大人気作品ビブリア古書堂シリーズ第三弾!サブタイトルにある“絆”をテーマに家族愛と中心とした古書関連の事件を紐解いてゆく栞子、自身が抱える母子の確執も相まって家族の想いがぎっしり詰まった一冊。遅々として進まぬ五浦 大輔との恋仲は一体どうなってゆくのか!?

人気シリーズものの宿命を背負い始めた印象、読者レビューを見ていると“マンネリ”や“延命”といった辛辣な言葉が並ぶようになっています、しかしこれは褒め言葉でもあります。第三弾ともなると当然ですが固定読者が付きはじめます、前作を読み各々が物語の“その後”を空想した状態で読書に取り掛かります。それだけ期待される名作であったと過去作品が評価されている証拠でもあるのですから・・・今後読者の期待に答えていくのかどうかは作者の方針や力量が大きく左右する部分なので注目点です。読者の期待といった観点から「ビブリア古書堂」シリーズの魅力を2点ほど、まず第1に栞子筆頭に主要登場人物の相関関係の物語、これは各事件とは別に物語全体を通して進行する部分です、例を挙げると栞子と大輔の恋模様であったり栞子の母子確執問題などなど、今回レビューなどで“延命”と捉えられたのはこの部分では無いかなと感じます。誰の目を見ても明白な恋仲になる2人がモジモジして少しも進展が観られない様子は恋愛作品などと比較するとイライラするほどの遅い展開。前作で確執が浮き彫りとなった栞子の母との展開も、ほぼ進展が無かったといってよい程です・・・音信不通の母と連絡を取る内通者の存在が明らかになる程度の展開で新しい驚きが読者に起きるのだろうかと言うと疑問を感じざるを得ません。今後に判明する大きな伏線でも潜ませていない限り“延命”行為と読み取られても仕方が無いと言えます。厳しく書きましたが、第2の魅力がある限り「ビブリア古書堂」シリーズは大丈夫でしょう。その魅力は、古書関連の事件!圧倒的な古書知識を持ち鋭い洞察で数々の事件を解決する栞子は名探偵そのもの、肝心要の古書事件がネタ切れにならない限り読者を繋ぎとめておく事は可能だと思います。いうなれば“名探偵コナン方式”。探偵モノと言えばアーサー・コナン・ドイルが作者が飽きるまで続編を書いたと言われるぐらいのジャンルです。“延命”の評価は最高の褒め言葉かもしれませんね。

さて、個人的に良かった事は、宮沢賢治詩集「春と修羅」をテーマにした物語があったこと!古書では無いですが自身が読んだ作品が題材になっていたのは嬉しい事でした、ネタバレにも繋がる事なので伏せておきますが、「春と修羅」に関する裏話・豆知識は素直に驚きを覚えました。宮沢賢治さんの「春と修羅」という作品に対する想いや考え方が書かれていたのがグッド!もう一度その情報を基に読み直してみようかなと思います。様々な絆を感じさせてくれるビブリア第三巻!私は宮沢賢治の作品との絆に感動。



ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
三上 延
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17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、これから訪ねてくるという客の応対を任せると告げ、出かけてしまう。客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていき、いつしか次々に訪れる客のふしぎ話は、おちかの心を溶かし始める。三島屋百物語、ここに開幕。


内容 「BOOK」データベースより


以前から書店で気になっていつつもなかなか手を出さなかった宮部みゆきさん。ミステリーと時代小説に定評があり両ジャンルに馴染みの無かった私には遠い作家さんでした・・テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」が面白かったこともあり原作を買おうと書店に出向いたのが最近のこと(遅)、目的物を目の前にして思わず購入してしまったのが「おそろし」でした。主人公おちかがちょこんと座った可愛らしいイラストだけでも魅力があるのに“百物語”とあり怪談話に馴染みの無い私の好奇心をくすぐるには十分でした。思わず衝動買い。過去の悲劇を背負い時が止まったかのように日陰の生活を望むおちかが、奉公先「三島屋」主人が気まぐれから始めた百物語収集の聞き手役に抜擢される事から始まる怪談物語、聞き手と語り手が入り乱れ生者と死者が交差する摩訶不思議な展開はやがておちかの止まった時間を突き動かすだけでなく周囲を巻き込み大きな流れを生み出してゆく・・・おちかの過去との向き合う場面は必見、三島屋百物語の胎動を感じる一冊。「おそろし」の魅力は、現実の怖さと非現実の怖さの使い分け!生々しい程に人間的で醜い恨みや呪いから発生する事件の背後に見え隠れする物の怪や霊的な仕業と思える不可思議な出来事、この二つの要素を上手に絡めて展開する物語に様々な怖さを読者は体験する事ができます。また百物語形式の本作ですが、作中に常に語り手役と聞き手役が登場するのも嬉しい所です、読者は常に聞き手役と心理をリンクさせて読書をするだけで作品を楽しむことが出来るようになっており、聞き手おちかが身震いする場面では身震いをして、悩む場面では同じく悩んでみて楽しんでみましょう。逆におちかが語り手になった時等は、その場面の聞き手役と同調して物語に耳を傾けてみてください。ちなみに一つ一つの物語はやがて収斂されて一つの結末へと向かっていきますので各登場人物の相関関係や名前などは常に記憶しながら読み進める事を心がけてください、ロシア文学の登場人物名ほどではありませんが、時代小説に慣れの無い私には人物名を覚える事も儘ならずせっかくの美しい流れを思い出す作業で寸断してしまう情けない有様で・・・私だけかな?w作風ですが、怪談話を扱う小説からは想像出来ないぐらいに全体的に明るい印象です、過去に対峙するおちかの姿勢が美しいのと、物語の語り手聞き手の見事な会話の掛け合いがとてもテンポが良く、出来た漫才を観ているかのようなボケとツッコミのような流れがありますので、暗い印象は一切受けませんのでグッド。三島屋百物語、ここに開幕。とあるように次回作が気になる仕掛けも登場します。今後注目のシリーズ!?



おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)
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エスカレートする遊びの中で、少年と少女が禁じられた快楽に目覚めていく「少年」、女に馬鹿にされ、はずかしめられることに愉悦を感じる男を描く「幇間」、関東大震災時の横浜を舞台に、三人の男が一人のロシア人女に群がり、弄ばれ堕ちていく「一と房の髪」など、時代を超えてなお色鮮やかな、谷崎文学の真髄であるマゾヒズム小説の名作6篇。この世界を知ってしまったら、元の自分には戻れない。


内容 『BOOK』データベースより


オススメの読書を語るときに作品名ではなく作家そのものを紹介してくれる人も多い、谷崎潤一郎が一押し!と大絶賛している人がいたんだけれど、どこがどう良いのか?どの作品がオススメか質問する事を失念したが為に本屋でどれを買おうかと苦悩していると目に入ったのが『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』。短編集にわざわざ冠してある“マゾヒズム”、谷崎潤一郎の作風を語る上では逃せない単語ですが、サドかマゾか?SかMか?と血液型診断並みに低俗低級な性格判断材料として会話に挙がる現代人にとっては馴染みある単語として興味・関心を惹くので、ネーミングセンスとしてはグッドだと思います。(購入判断材料に最適)しかし作風や作品の根幹を表す単語“マゾヒズム”を冠する事は読書にとっては弊害になる場合もあります。それは作品から受ける印象の固定化が発生するからです、全六編の短編は確かに“マゾヒズム”的な要素が詰まった作品です、ですが“マゾヒズム小説集”と冠せずに単独で作品に触れたときに“マゾヒズム”との解釈や感想を書くか?と考えると、違うような気がしました。つまり題名を読む事で、作品から何かを感じ取る読書から作品から“マゾヒズム”要素を探し出す読書に変わってしまいかねない危険性があるので注意が必要だと思います。私の様な文学知識もなく作者や作風の下調べすらしない読書スタイルの人は特に注意を!さて私が一番印象に残った短編は「麒麟」!舞台は古代中国、人間の“道徳”を象徴する人物である孔子と“欲”の権化である南子婦人が登場する物語。人間社会の規律規範を司った聖人の一人として名高い孔子を掛け合いに酒池肉林の暴虐を己の美貌(肉体美)から体現する皇帝婦人を対置させる事で人間の根底にある欲望と、その欲望の前に脆弱にならざるを得ない様を見事に描いている。聖人が誕生する際に登場するとされる空想上の生物“麒麟”の姿すら所望する様は背筋が凍りつく場面でもある。聖人と称される人物たちを讃え敬う書物は星の数ほど多くあるので、その善性を最大限活用する事で人間の悪性を描き出す手法が面白い!谷崎潤一郎の作風の一側面である“マゾヒズム”の世界に浸り、人間の醜いと言われる部分を魅せつけられる作品、品行方正を求められる現代社会に生きる人にこそ読まれるべき願望丸出しの短編集。



谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)
谷崎 潤一郎
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売り上げランキング: 83,241

キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく…。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。


内容 「BOOK」データベースより


アーネスト・ヘミングウェイの代表作品。この作品が大きく評価されノーベル文学賞受賞に至ったと言われる。オススメの一冊紹介で本書を薦められる際に一言、“読みやすい作品”。200ページにも満たない物語である事もさながら、無駄な贅肉を削ぎ落とした洗練された筋肉を彷彿とさせるシンプルな文体のヘミングウェイならではの読みやすさがある作品。読書未経験者でも難なく読めるであろう一冊は“読みやすい”が的確な表現。ヘミングウェイの作品は「武器よさらば」を経験済みで、頻度が多く緻密に描かれた食事シーンが印象的でした、心理描写や背景解説などが一切なくても食事シーンを読むだけで感じ取る事が出来る独特の作風に関心した記憶がございます。「老人と海」も至ってシンプルな物語、上記のあらすじ紹介文が作品の本筋全てをカバーしているぐらいで、むしろあらすじの方が作中よりも意図を書いてある気がするぐらいの印象。解説が、文学的見解を述べているなど重厚なだけに、本編のシンプルさが際立っている一冊である所が面白い。老人が海(代表としてカジキマグロ)と闘う物語で、生き物同士の生存を掛けた闘いを描く本作はある種の暴力性や残虐性を秘めた作品でもあるので、ハードボイルドな視点での読書が必要です。お花畑思考の自然観念を持っている方は不快に感じるかもしれませんので注意が必要ですが、死地に趣く・戦地を駆けるという描写は実際に戦争を経験したヘミングウェイならではの臨場感ですので注目場面といえます。また「武器よさらば」に続き、食事シーンが素晴らしいです。“腹が減っては戦は出来ぬ”を感じる事ができる腹ごしらえ場面では、自然と血沸き肉躍る感慨を受けますし、鮫についばまれ消失する戦友(カジキマグロ)の肉を喰らう場面は哀愁を感じ取る事ができます。すべての描写がすべて意味を持ち感情を突き動かされる。おそろしい作品です。ヘミングウェイは読者を選ぶ作品かもしれません、紹介にあるように外面描写中心の作品ですので心理描写が多い作品を好む読者には好かれないかもしれません、決意や選択を重視し行動をもって完結するタイプの人が読むとドはまりする作品だと思われます。読みやすく面白い小説。



老人と海 (新潮文庫)
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急変してゆく現実を理解せず華やかな昔の夢におぼれたため、先祖代々の土地を手放さざるを得なくなった、夕映えのごとく消えゆく貴族階級の哀愁を描いて、演劇における新生面の頂点を示す「桜の園」、単調な田舎の生活の中でモスクワに行くことを唯一の夢とする三人姉妹が、仕事の悩みや不幸な恋愛などを乗り越え、真に生きることの意味を理解するまでの過程を描いた「三人姉妹」。


背表紙より


三谷 幸喜さんが“これがチェーホフ?これぞチェーホフ!”を合い言葉に、喜劇「桜の園」を演出!なんと喜劇ですとな!チェーホフは「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」と読んでいますが・・・あれは悲劇。チェーホフ自体が悲劇戯曲作家とイメージしていた私はチェーホフの喜劇と聞いて居ても立っても居られず購入。

「桜の園」は、没落貴族が借金返済の為に自らの領地である桜の園と邸宅を競売に掛けられ喪失する物語である。本筋だけを見ると悲劇であり、桜の園の所有者である女主人ラネーフスカヤの競売売却の知らせの後の絶望感は尋常では無いし、その養女であり主要登場人物ワーニャの恋は実らずに終る等、悲劇的な要素には事欠かない物語である、実際に読者レビューなどでも悲観的な見方も多く大団円的な喜劇では無いのは確かである。しかしチャーホフ4大戯曲の中で「かもめ」を読んでいない3作品の中での比較になるが・・・唯一絶望の後に救済が用意されていたのが「桜の園」だったように思えます。「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」は、真綿を首で締めるかのような絶望感に囲まれて現実を直視した瞬間をもって終幕を迎える物語であった・・・「桜の園」は同じく絶望を向かえ未来への渇望を唱えるシーンがある、ただ他の二作品とは違うのは事後の物語が用意されている点で、順風満帆とまではいかないまでもしっかりと確かに次の一歩を踏み出している場面があるのは、それだけで物語に救いが用意されていて読後の不安感が緩和されます。また登場人物が滑稽に描かれている点も喜劇的な要素が強い、最終的に戯曲の最重要人物となるのだが老僕フィールスは良い味を出している、所謂おとぼけ爺さんで痴呆症を思わせる言動は切迫する金銭事情の屋敷のムードを和ませるには十分であるし。30才にして未だ定職に就かずに学生のトロフィーモフ!彼は人道や幸福論を演説させれば右に出るものが居ないキレものであるにも関わらず若ハゲをなじり倒され一蹴される憎めない人物で、彼が恋愛論を語った瞬間に「あなたは、中学二年生?」と言われるシーンは秀逸で印象的な事間違いなしです。このほか様々な登場人物が物語を面白オカシク展開させてくれるので喜劇的な要素は満点です。登場人物の多くがボケ役の様な設定の中で、時代の流れを汲み正道を行くツッコミ担当のような人物も登場します、商人であるロパーヒン、彼は桜の園売却に大きく関わる人物であるだけでなく農奴解放後のロシアを象徴するかのような人生大逆転劇を演じる人物でもあります、彼が作中でくだした決意と行動を前に読者は胸を熱くする事になるでしょう。農奴解放を向かえて大きく躍動しているロシアならではの転換期を描いている「桜の園」は、ちょっぴり物悲しくも楽しく笑って読む事が出来る喜劇作品。



桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)
チェーホフ
新潮社
売り上げランキング: 75,806