『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』 谷崎 潤一郎 | ほんとなかよし

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エスカレートする遊びの中で、少年と少女が禁じられた快楽に目覚めていく「少年」、女に馬鹿にされ、はずかしめられることに愉悦を感じる男を描く「幇間」、関東大震災時の横浜を舞台に、三人の男が一人のロシア人女に群がり、弄ばれ堕ちていく「一と房の髪」など、時代を超えてなお色鮮やかな、谷崎文学の真髄であるマゾヒズム小説の名作6篇。この世界を知ってしまったら、元の自分には戻れない。


内容 『BOOK』データベースより


オススメの読書を語るときに作品名ではなく作家そのものを紹介してくれる人も多い、谷崎潤一郎が一押し!と大絶賛している人がいたんだけれど、どこがどう良いのか?どの作品がオススメか質問する事を失念したが為に本屋でどれを買おうかと苦悩していると目に入ったのが『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』。短編集にわざわざ冠してある“マゾヒズム”、谷崎潤一郎の作風を語る上では逃せない単語ですが、サドかマゾか?SかMか?と血液型診断並みに低俗低級な性格判断材料として会話に挙がる現代人にとっては馴染みある単語として興味・関心を惹くので、ネーミングセンスとしてはグッドだと思います。(購入判断材料に最適)しかし作風や作品の根幹を表す単語“マゾヒズム”を冠する事は読書にとっては弊害になる場合もあります。それは作品から受ける印象の固定化が発生するからです、全六編の短編は確かに“マゾヒズム”的な要素が詰まった作品です、ですが“マゾヒズム小説集”と冠せずに単独で作品に触れたときに“マゾヒズム”との解釈や感想を書くか?と考えると、違うような気がしました。つまり題名を読む事で、作品から何かを感じ取る読書から作品から“マゾヒズム”要素を探し出す読書に変わってしまいかねない危険性があるので注意が必要だと思います。私の様な文学知識もなく作者や作風の下調べすらしない読書スタイルの人は特に注意を!さて私が一番印象に残った短編は「麒麟」!舞台は古代中国、人間の“道徳”を象徴する人物である孔子と“欲”の権化である南子婦人が登場する物語。人間社会の規律規範を司った聖人の一人として名高い孔子を掛け合いに酒池肉林の暴虐を己の美貌(肉体美)から体現する皇帝婦人を対置させる事で人間の根底にある欲望と、その欲望の前に脆弱にならざるを得ない様を見事に描いている。聖人が誕生する際に登場するとされる空想上の生物“麒麟”の姿すら所望する様は背筋が凍りつく場面でもある。聖人と称される人物たちを讃え敬う書物は星の数ほど多くあるので、その善性を最大限活用する事で人間の悪性を描き出す手法が面白い!谷崎潤一郎の作風の一側面である“マゾヒズム”の世界に浸り、人間の醜いと言われる部分を魅せつけられる作品、品行方正を求められる現代社会に生きる人にこそ読まれるべき願望丸出しの短編集。



谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)
谷崎 潤一郎
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