『静人日記』 天童 荒太 | ほんとなかよし

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だったらいいな・・・

見知らぬ死者を悼み、全国を放浪する坂築静人。時には拒絶され、理不尽な暴力さえ受けながら、静人の悼みは人々の心に様々な波紋を広げていく。やがて静人に、ある女性との運命的な出会いが訪れる―。毎夜、著者は“静人”となり、心にわきたつものを“日記”に書きとめた。直木賞受賞作『悼む人』の続篇にして序章。


内容「BOOK」データベースより


直木賞受賞作「悼む人」は、悼む人に関わる主要登場人物3名を中心に悼む行為の目的や必要性が描かれ、人間の死生観を描いた作品。 流石文学賞受賞作品といった重厚で深い物語は、超感覚的で神秘性が強く、容易に解釈や読解ができない作品。 「静人日記」は、そんな悼む人自身である静人が毎日綴った日記であり・・・悼む人が何を想い何を考えながら毎日過ごしていたのかが描かれている。 続編とあるが、「悼む人」の補完的な役割を果たしている作品であり、本書を読みようやく「悼む人」を理解したと言う人も多いのではないだろうか?


一度は考えた事はないだろうか?何故来る日も来る日も他人の死がニュースで流れるのか?僕は幼少の頃に人の死が僅か数分にも満たない時間で伝えられている事に対する不快感に近い感情があったことだけは良く覚えている。

死は絶対的に悲しい不可避な悲劇、近親者の死はとても悲しく命は尊いものと教えてくれる・・・だけど、ニュースで流れる他人の死は、涙はもちろんその死に対して一切の感情など生まれない。生まれる感情といえば事件や事故に対する一喜一憂でしかない。 それはそういうものだよ、いちいち考えていては生きていられないよ、死を無視しているから生きていられるんだよ・・・それが大人なんだよ。 だけど、文学作品の中だけかもしれないが・・・そういった妥協とも違う世間一般の常識に真っ向から抗って立ち向かった男がいる、それが「悼む人」。 この作品にはクドイほどに突然の死や非業の死を遂げた人々が登場します、よくぞここまで書けるものだなと思うのだけれど・・・実の所一度は耳にしたことのあるニュースで聞いた死ばかりなのです、作家特有の装飾や挿話で1つ1つの死が厚みをもって描かれているのだけれど・・・多くの死のニュースに感覚が麻痺しているのではないか?と自分自身を不甲斐なく感じてしまうのは私だけではないでしょう。 だからといって静人のような生き方までは出来ませんが、少しでも悼む気持ちをもった人間になりたいなと強く思わせる作品です。


本編に比べると神秘体験や世界観は比較的少なくなっているのも特徴、ですので比較的読みやすい雰囲気となっています・・・物語的にはそういった神秘の世界の深みにはまっていく前の静人が描かれているといえるのではないでしょうか・・・日常生活からどんどんと遠ざかっていく静人、日常に戻るための機会は幾度と無く訪れ、決定的な分水嶺が「静人日記」には登場します、「悼む人」の物語でなければ美しい恋愛物語の1つとして成立するのかもしれませんが、なんとも切ない物語となっています。死生観だけではなく、人間同士の愛についても深く考えさせられる作品に仕上がっています。



静人日記―悼む人〈2〉 (文春文庫)
天童 荒太
文藝春秋 (2012-10-10)
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