『すべて真夜中の恋人たち』 川上 未映子 | ほんとなかよし

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だったらいいな・・・

「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々のなかで三束さんにであった―。究極の恋愛は、心迷うすべての人にかけがえのない光を教えてくれる。


内容「BOOK」データベースより


自己表現が乏しく主体性が無い内向的な女性、与えられた仕事は完璧にこなすものの職場でのポジションを確立できずに独立、化粧は最小限に着飾ることもなく一般女子に比べると貧弱と表現されるプライベート生活・・・そんな彼女が勇気をもって第一歩を踏み出した所から物語は大きく進んで行く。


素敵な物語ですね、恋愛小説や人生の教訓めいた小説のような劇的な何かが起こるタイプの小説ではないのですが、女性の心にある繊細な感受性を丁寧に巧みに描いた作品です。悩みを抱えていたり自分の心に向き合いたいと思う人の心にずしんと残る作品ではないでしょうか?


“わたし”は物語序盤とても朧げにしか映っていません・・・物語が進行するにしたがい、徐々に変化していく“わたし”、特に三束(みつつか)さんとの運命的な出会いの場面は必見といえるでしょう!それまで朧だった存在がぐっと輝きを見せます!一般的な恋愛小説のように劇的に華が咲いたり輝かしい演出なんて一切ありません、ただ“わたし”のフルネームが表示されるだけなのです!“わたし”だった人物に、一気に表情が生まれる、アイデンティティーが生まれる瞬間なのです!!一場面の何気ない一文だけで人の心を動かすことができる、これは天才的な作家のセンスといわざるを得ないでしょう。


また、この小説は固定観念の怖さも描き出しています。出版物の誤字脱字を探す校正という職業の主人公なだけに読者は必然的に誤字脱字を頭の片隅に残した状態で読書をしています・・・ある部分で明らかに一般的な感覚とは違った呼称が使われる場面があります・・・そのときに、これは間違いだ!と思ってしまったが最後、作者の術中に嵌っているんですよね。 貴方の思った事は固定観念に過ぎずじっくり眺めてみれば間違ったことではなく正しい事なのですよ?と諭されているような。この部分も是非味わってもらいたいものです。

恋愛に対して極度に奥手な“わたし”ですが、その昔にトラウマとなるべきエピソードもあり。それを読む事で彼女に対するいわゆる偏見が払拭されてしまう辺りも固定観念の怖さでしょうか?最初はただの負け犬独身アラサー物語だと思っていたものが、たった一つのエピソードで180度見方が変わってしまう!他人に対する他人の評価なんてものの脆さや怖さを感じる事になります。 また主人公の友人である石川聖という女性がとても良い味を出しているので必見ですね♪彼女も周囲の偏見に晒されている人物、でも主人公と対照的にマイウェイを突き進むタイプの女性です、相反する二人のコンビの形にも注目してあげたい所。“すべて真夜中の恋人たち”の意味深な言葉に行き着いた恋の終着点には様々な解釈が生まれて賛否両論があるかと思いますが、私的にはとっても素敵な恋愛物語だったなと思います。


川上未映子さんの小説には世間に馴染めない人物が描かれる事が多いんですよね、社会を少し違った目線で見ていたり感じている人物が多く登場します、それらの人物がどうやって世間一般と折り合いをつけていこうかと必死でもがいていたり戦っている姿が素敵に描かれる事が多い。それらの物語を読んで心が救われたと感想する人も多いので・・・社会や世間に少し疲れたなと感じている人は勇気をもらえる作家さんだと思います。


すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)
川上 未映子
講談社 (2014-10-15)
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