『藪の中』 芥川 龍之介 | ほんとなかよし

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わたしが搦め取った男でございますか?これは確かに多襄丸と云う、名高い盗人でございます―。馬の通う路から隔たった藪の中、胸もとを刺された男の死骸が見つかった。殺したのは誰なのか。今も物語の真相が議論され続ける「薮の中」他、「羅生門」「地獄変」「蜘蛛の糸」など、芥川の名作、6編を収録。


内容「BOOK」データベースより


「藪の中」「羅生門」「地獄変」「蜘蛛の糸」「杜子春」「鼻」芥川龍之介の傑作短編が集まった一冊。


「藪の中」:題名が、真相が不明な状態を指す言葉として定着した程に有名な短編。

4人の目撃者と3人の当事者が証言する強姦殺人事件・・・各々の主張が食い違い本当の真実が見えない未解決事件の物語。芥川研究文献は数多くあれど「藪の中」を題材にしたものが随一である事は言うまでもない。本作品の真相を論じ合ったが最期、無限の解釈や読解が生まれて尽きる事は無いとされています、もはや真相を解明するよりも「藪の中」を論争する行為そのものを研究題材とする議論が生まれている程なのだから、社会的影響の大きい作品だといえる、とても面白い。だけど、真相は藪の中である・・・


「羅生門」:生きる為に必要と判断される悪=人間のエゴイズムを通して人間の善悪を克明に描き出した作品、飢饉に天災相次ぐ平安の世で極限の状況下に置かれながらも盗人になるぐらいならば餓死をすると最後の良心を抱えて生きていた男だったが・・・死体が放置され荒れ果てた羅生門である老婆と出会う、そこで男はある勇気を得る・・・学校の教育図書としても扱われる作品ですが、大人になって読んでも考えさせられる一冊ですね。 やはり羅生門という場所を舞台にしているのが素敵ですね、人間は置かれた状況下でどんどん変化をするって事なのでしょうか・・・勇気と表現する所がまた凄いですね。


「地獄変」:羅生門とならび学校図書として扱われる作品ですが高等教育相当での使用が多い、収録作品の中では読解が難しい物語ではないでしょうか?芸術の為ならば全てを犠牲にしても厭わないというある絵師の物語で、芥川龍之介自身の芸術至上主義に投影される事が多い作品。人間の芸術活動に対する業のようなものが描かれています。読み深める事も面白いが、人間の狂気というある種ホラー要素を含んだ作品ですので、背筋をゾッとさせながらさらっと読むと面白い作品。いやぁ~しかし狂気に取り付かれているのは絵師か周囲か計り知れない怖さがあります・・・


「蜘蛛の糸」:これまた有名な作品ですね、芥川短編集では必ずといって良い程収録されています。もはや題名を聞くだけで物語の流れを頭に思い描ける程に抜群の知名度を持った作品、芥川龍之介が手がけた最初の児童文学小説といわれる。

地獄の責め苦を受けていた悪人・カンダタ、生前の唯一の善行(蜘蛛を助ける)によって仏様から救いの手を差し伸べられる・・・天国へ続く一本の蜘蛛の糸・・・信賞必罰を描いたエピソードは解りやすく納得の物語、何度読んでも面白い!私がこの作品で好きなのは、ほんと仏さまにとって散歩道での出来事程度って描き方が凄いんですよね!なんだろう、人間の善悪って離れた所から見れば本当に取るに足らないものなのかな?なんて思ってしまいますwだからって軽視する事は出来ませんが・・・ぷらぷら散歩をしている仏さまを思い描いて読んでいただきたい。

「杜子春」:芥川短編の中で私が最も好きな作品。際限ない欲求と博愛という人間にとって欠かす事が出来ない要素を織り交ぜて見事に感動する物語を描いています。人間嫌い・人間不信になってしまった男が、俗世を離れて仙人として生きたいと考えるのだが・・・やがて自らが世間の恩恵を受けて生きている事を悟る、様々な気づきを与えてくれる作品で感慨深いものがある。この物語は、物事は全て考えようで捉え方次第で周囲の世界は変わるといった啓示を与えてくれます。心に刻み込みたい物語。

元ネタとなる「杜子春伝」は若干異なる筋書きとの事で、終盤部分が大きく異なっている。芥川龍之介は日本児童用に物語を改変しており、その部分の上手さは流石一流作家といったところでしょう。


「鼻」:人間誰しもコンプレックスは持っているものです、そして顔はそのコンプレックスを生み出す最たるものでしょう。一般人とは異なる鼻をもった男の物語。鼻を普通にしたいしたいと願っていたのだけれど、いざ普通の鼻になってみると・・・それはそれでしっくりこない、やがて鼻が元通りの変な形に戻ったのだけど男は安堵するのだった・・・

人間は不幸ごとがあると優しくされるけどもいざ幸福になると妬まれるものです、自分だけが良くなっても周囲よりも特出して良くなればそれはそれで不幸になるという事でしょうか、世間の幸福についての形が描かれているような作品。自分の体の事なのに、それを評価するのは結局周囲なのだという事を感じさせてくれる物語で深読みすればけっこう怖い物語です。コンプレックスもちの人は是非一考してみてはいかがでしょうか?



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