妻がわが子である赤ん坊の首に噛みつき血を吸っている―怪奇なる名作“サセックスの吸血鬼”や、巧妙な語り口による傑作“三人ガリデブ”をはじめとする、晩年のドイルが描く最後のホームズ。四〇年にわたる物語がついに幕を閉じる。決定版『シャーロック・ホームズ全集』の最終配本。「全集への前書き」「参考文献抄」付。
内容「BOOK」データベースより
河出出版シャーロック・ホームズ全集第9弾。5つの短編集最後の作品にして全集最後の作品。読者へむけたコナンドイルの前書は、やがて人生が終わるのと同じく登場人物であるホームズにも終わりが訪れるのだと読者に別れを告げる内容になっているので必見である。また本書では最後にして初の試みとなる、ワトスン先生の伝記ではなくホームズ自身が綴った物語が収録されているのが特徴的、最後の最後に読者に対してホームズがまさにサヨナラを言う為に登場してきたような独特の雰囲気が出ておりファンならずともグッとくる演出であるといえます。
前作「ホームズ最後の挨拶」が時系列で最後の物語とされる向きが強く、最後のメッセージをもってシリーズが幕を閉じるとするファンも多いそうである。 だが読者に対してこれでホームズとお別れであると作者が明言した前書の存在からやはり本書が最終の物語である事は間違いがない・・・ホームズは数十年に渡って描かれたシリーズ作品(途中の中断があるものの)にも関わらず最初から最後まで読者を惹き付けて止まなかったことがともて素晴らしい所だと思います。そして探偵といえばホームズと言われるまでに定着したキャラクターを世に生み出した功績は今後も褪せることはないでしょう。
「前書き」「マザリンの宝石」「トール橋」「這う男」「サセックスの吸血鬼」「三人のガリデブ」「高名な依頼人」「三破風館(スリー・ゲイブルズ)」「白面の兵士」「ライオンのたてがみ」「隠居絵具屋」「覆面の下宿人」「ショスコム荘」
ピックアップするのは「白面の兵士」と「ライオンのたてがみ」です。全部で56ある短編のうちでこの2編だけがホームズが一人称で語った物語です。事件や真相のみを語らずに情緒的に物語的に描こうとするワトスン先生に対しいつも非難の声を上げるホームズ、それならば自分で書いてみろよと言われて書いたというのがこの2作品です。いやぁ~結局自分自身が情緒的に書いてしまっているってオチがついちゃうあたりがホームズのチャーミングな所なんですよね。最後の最後にこんな手法を用いてホームズの魅力をさらに高めるなんてコナンドイルはやっぱり天才です。
さて、河出文庫版シャーロック・ホームズ全集もこれで最後となりました、ホームズはミステリファンならずとも一度は耳にした事のある有名人。実際に読んでみて、その不滅不動の人気を垣間見ることが出来たように思います。ホームズの世界では科学捜査なんて手法も発展していない時代で、犯行現場には無数の痕跡が残っていたりと、現代ミステリーでは歯ごたえのない事件扱いを受けるようなトリックも多い。だけどもホームズ自身の特性や性格が余りにも魅力的過ぎてそんなツマラナイ所に文句を言う人は少ないだろう。探偵小説の金字塔シャーロック・ホームズはミステリファンならず全ての本読みに捧げたいシリーズ作品である。
河出書房新社
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