兄マイクロフトの依頼で盗まれた国家機密の行方をさぐる「ブルース‐パティントン設計図」、死病に冒されたというホームズが意外なる解決を導く「瀕死の探偵」、探偵業引退後のホームズを描いた「最後の挨拶」ほか、数奇な発端とあざやかな解決に満ちた第四短編集。コナン・ドイル円熟期の傑作群。
内容「BOOK」データベースより
河出出版シャーロックホームズ全集第8弾「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」。全部で5つある短編集の4番目の作品で、ホームズの晩年の事件を中心に綴られた作品である。冒頭ワトスン先生の今までの伝記形式とは違う、完全に読者にむけられたメッセージが寄せられている事が特徴的な作品。河出出版ホームズ全集では「ホームズの思い出」に収録されています短編「ボール箱」は出版社によっては「ホームズ最後の挨拶」に収録されている事があるそうです、切り取られた人間の耳が送りつけられるという残虐な場面から始まる怪事件を堪能されたい方は是非。
探偵業を引退、それに繋がる身体の衰弱による静養地でのホームズの活躍が見られるという特異な雰囲気で描かれる本作。何度となくハラハラさせられてきた読者も、今作のホームズには心配な目を向けてしまう事は間違いないだろうと思います。特に万人がイチオシする短編「瀕死の探偵」、時系列的にはホームズは死ぬ事はないだろうと解っていても、これからどうなるのだろうかと心底心配してしまうような状態に陥っているホームズの姿が描かれています・・・また、この事件の犯人は、細菌学者とも言うべき恐ろしい使い手で、ある種のスペシャリストであると言えます。ホームズの宿敵といえばモリアーティ教授ですが、ピックアップさえすれば同等か引けをとらないレベルのスペシャリストな敵役が沢山いるのもホームズシリーズの魅力でしょうか。
晩年が描かれるホームズですが、生涯独身を貫いた?ようです。事件それも国家規模を取り扱うホームズにとって一般人が求める安楽の生活なんてものは退屈の一言に尽きるのでしょうか・・・恋愛や愛情といった感性が微妙に欠落しているように思えます。かといってそういった心情が一切無いかといえば全然そんな所はありません・・・事件に巻き込まれた家族や人物に対して人並みの悲しみや憤りを表す事もしばしばですし、なんといってもワトスン先生との唯一無二の親友関係には美しいものすら感じます(けっして性的な意味ではなく)。二つの仮説を立ててみました、一点目は風変わりなホームズに近づくような女性が周囲に居なかった説、ワトスン医師も最初の頃は変わった人間だといっていたし人付き合いも少ないホームズ、単純に誰も近寄らなかっただけなのではないでしょうか?もう1つは、ホームズは変装の達人で演技も抜群です、盟友ワトスン先生すら見破れない変装を披露したり事件そのものを解決する手段に使ったりとするホームズ、何にでも変わることが出来る自分の姿を他人にも重ねてしまい信用をしない性格になったのではないでしょうか?まぁ単純にコナンドイルが創り上げた性格なだけに、その私生活と繋げて解釈するのが定説なんでしょうけれど色々と思ってしまう部分です。主人公のロマンスが描かれない純粋なミステリー作品それがシャーロック・ホームズ。
「前書き」「ウィステリア荘」「ブルース-パーティントン設計図」「悪魔の足」「赤い輪」「フラーンシス・カーファックスの失踪」「瀕死の探偵」「最後の挨拶」
短編の中でピックアップしたいのは「悪魔の足」、この物語は警察や科学が証明できない毒が用いられたという完全犯罪に挑むホームズなのだが結末が面白い♪犯人を目の前にして最後にホームズが下した決断が実に探偵らしいものであった。罪を憎んで人を憎まず、ただの法の番人とは一味違うという事を感じさせる作品で非常に印象的です。作中では身体的にも精神的にも弱ったホームズが療養地で過ごす中で事件が発生するというものなのですが・・・事件中毒というのか、ひとたび事件が発生すれば、元気になるというホームズの姿も面白い。ホームズ最後の挨拶は晩年のドイルの贈る素敵な一冊。
河出書房新社
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