バナナに手をのばすことならどんな類人猿にもできる。しかし、星に手をのばすことができるのは人間だけ。類人猿は森のなかで生き、競いあい、繁殖し、死ぬ―それで終わりだ。人間は文字を書き、研究し、創造し、探求する。なぜ人間だけユニークな進化を遂げているのか?神経学者が解明する脳と心の謎。
内容「BOOK」データベースより
ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドランはインド出身のアメリカの神経科医、心理・神経学者。最先端の脳科学研究を一般書として紹介した1999年邦訳「脳のなかの幽霊」で科学書作家として脚光を浴びる、2005年邦訳「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心の仕組み」も見事にヒットし、脳のなかシリーズ第三弾として2013年邦訳されたのが本書である。脳の部位破損(交通事故外傷や脳卒中等による)により生じている症例を基に脳の部位ごとのメカニズムを仮説と論証によって解明していこうとする科学的アプローチや著者自身の構想がぎっしりつまった一冊。脳科学に興味のある人は一度は読んでみて損はないでしょう。
ここ数年の脳科学ブームは凄い、注目を集めるためか科学万能主義を唱えるメディアの論調といえば世の中の事象全てが脳科学で解明できると言わんばかりである、だが実際の最先端脳科学はまだまだ未知数の学問で可能性に満ち溢れた分野である。新書や健康本にありがちな、脳トレや生活脳習慣といった内容を期待して読むと路線が違うので注意が必要です、一般人向けに簡易に配慮して書かれた書物ですが全体的には学問色の強い一冊です、ですがそういった雑学本の索引になっている事も多い本書、一度学問色の強い脳科学本を味わってみるのも面白いのではないでしょうか?私は「脳のなかの幽霊」からシリーズ三作を読んでいますが、とても興味深い話題が多いです、誰かに思わず話してしまいたくなるような実例や話題が満載です(ですが脳損傷という不遇を味わった人々の話でもあるので扱いは要注意ですが・・・)。今作には登場してはいませんが例えば自分の妻を帽子と認識して必死で被ろうと試みる患者であるとか、その他にも常識では考えも及ばない苦難とも言える現象に陥っている患者が多数紹介されています。話題にしてしまうほどに滑稽なんだけれど深刻な症例の数々がそれぞれたった一箇所の脳損傷が原因で起きるとすればどうでしょうか?我々が当たり前だと思って生きている事や、当然のように脳味噌をのっけて生活している事が如何に素晴らしい事であるかを感じる事が出来ます。人類の素晴らしさを探求しようとする深い考察と熱意がぎっしりつまった一冊といえるでしょう。
ラマチャンドランの良い所は、いい意味で白黒をつける方式ではなくあらゆる可能性を言及し物事を判断している点だと思います。例えば毎回冒頭に語られる創造主論と進化論の対立に関する話題でも現代科学者として進化論を支持しつつも人間(ホモサピエンス)の特異性に神秘が隠されているとした中間視点(可能性)をもった立場をとってらっしゃる。何れかの立場に自身を固定するのではなく両者の利点や理屈を知った上であえて自らのスタンスを築き上げている。まさに科学進歩の相応しい人物であると言えます。また角の立たない物言いもグッドです、明らかに否定された理論を紹介する時以外は現行の説に関しての一切の不適切・不快な発言がないのが非常に親しみ易さを感じます。学術系の書物は相対する理屈や理論を叩きのめす意図を持って書かれている事も多いですからね。勉強させていただきます!と素直に感じる事の出来る作品です。おすすめ♪
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