1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。
内容 「BOOK」データベースより
「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011」読後一番読みたくなった一冊が本書「アンダーグラウンド」。当時海外で執筆活動を行なっていた村上春樹氏を日本に帰国する想いに駆らせた2大カタストロフが1995年に起きる。当時小学六年生だった私の記憶にも鮮烈に残る1月17日阪神淡路大震災に加え3月20日に地下鉄サリン事件。インタビューにて村上春樹氏は自身の過去の作品はあまり読み返さないし感慨に耽ることも少ないとおっしゃるが、「アンダーグラウンド」は例外で読み返すと涙が零れ落ちるとの事である。本書は作家村上春樹の色合いを消し去り徹底的にノンフィクションに拘った一冊でサリン事件の被害者や関係者を中心にインタビューし構成された作品である。ノンフィクション作品では異例ともいえる事実の徹底究明を目的とせずに被害者が事件当日に辿った経緯経験をありのままに証言し物語として紡ぎだす作品であり、事件の詳細や証言の矛盾や相違点は散見するも被害者・関係者の当時の心境や実体験を重視する事のみに重きを置いた確信犯的な構成となっている、それだけに全ての物語が心に訴えかけるリアリティが尋常ではなくフィルターや思惑に濾過されない人間の想いといったものがズシンと読後に残る作品。それに加えて被害者・関係者中心にインタビュー構成されているにも関わらず一般的にイメージされる(メディア等が築き上げる)被害者=無垢な善人といったスタンスで描かれていない点が非常に興味深い作品で偏った視点や誘導によった構成が無く1995年3月20日突如日常生活に訪れた悲劇の現場で何が発生していたのか、何を想い人々は体験したのかを描ききっています。これぞノンフィクションと思わせる作品。2大カタストロフと村上春樹氏は言う。阪神淡路大震災から生まれた短編小説「神の子どもたちはみな踊る」では村上春樹色が全開で、あぁ一流作家さんは重大事変をこんな風に感じているものなのだなぁと理解とは程遠い感覚ながら思ったものである。それだけに作家村上春樹色の消えた「アンダーグラウンド」が非常に対照的で驚いたのが印象的。読書をしていると重たい作品に出会うことがある、難解な理論で構成された書物やつまらない作品を延々と読み続ける辛さに出会う事もしばしばである、だけどそういった重さとは別の意味で「アンダーグラウンド」は重たい作品であると言える。被害者・関係者のインタビュー集という事で多種多様な人々の価値観や発言に触れるのだが共感できる部分が多く、共感できずとも理解が出来る話題ばかりなので読みやく700超ページ数も気にならないぐらいであるが、なんでしょうかそれだからこそ辛くて読み進める事が出来ない印象、胸が締め付けられるって表現がしっくりくる読後感ですね。それなりの覚悟を持って読み始めなければ、ちょっと興味本位で地下鉄サリン事件を知りたい程度の想いでは作風の重層感に押しつぶされそうになるでしょう。僅かばかりのあとがきに込められた村上春樹氏の訴える善悪といった基準を超えた社会の抱える闇のようなものに関する考察も凄い!!思えば阪神淡路大震災からすでに直近大震災が2011年3月11日東日本大震災が発生し記憶の更新が成され既に2年近くの歳月が経過している現在であるが、本書で描かれた問題提起が未だに有効であるのはどうなのだろうか?村上春樹氏が原発問題に対する発信を行なった事が有名で何か善悪で基準を図る構図に組み込まれてしまった印象が強いが、彼が発信した意味のようなものはそういった次元を超越した部分にあるのだなと改めて本書をもって感じた。だがこれはあくまで私の受け止め方でしかない。簡単に答えを与えてくれない所も村上作品の面白い所でしょう。村上ノンフィクションを是非。
関連リンク ´д`)つ 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011
