親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。
内容 「BOOK」データベースより
私にとって「こころ」は過去2回も途中で投げ出してしまった作品で、今回が3度目の挑戦となりました。夏目漱石をこよなく愛される方曰く「こころ」は夏目漱石の集大成に位置する作品であり、初手に選ぶのは、無謀極まりないとの事で、他の作品などで漱石世界観を掴んでから読む事を薦められました・・・そのアドバイスを無視しての強行突破を試みた今回の読書ですが、不思議と読了までスムーズに読む事が出来たように思います。以前挑戦したときから比べて重版や長編小説に慣れ親しんだ経験から作品の重量感を感じなくなったおかげだろうか?然し、作風が醸し出す「死」や「孤独」といった負の印象が相変わらず強く、なかなか頁をめくれず普段の3倍は時間がかかってしまいました。作品を一言で表すと「個」や「エゴイズム」でしょうか。けっして大局的な話題ではなく、題名の「こころ」が指す通り人間の内面心情にスポットが当たった局所的な物語だと思います。然し人間の醜さや本性と言った言葉で表現される原罪に近い感情を見事に書き出す事で人は?愛するとは?また正義や信念とは一体何なのか?と問いかけられている様な気分になります。現代社会は直接的なコミュニケーションは減っている分、インターネットや携帯電話の普及で内心の曝け出す機会は増えているように思います(あくまで主観ですが)、その現代人には若干不可解にも思える内面の吐露が出来ない古き日本男児、日本人の秘すれば花と言った美徳を味わえるのも「こころ」の良い点ではないかと思います。受け止め方如何では救いのない孤独の世界が見えますし、何故私に先生は告白したのか、その後私がどう振舞ったのか等の謎を残したまま終幕を迎える点も余韻があり後世まで読み継がれる作品足らしめるのではないでしょうか。超級名作はやはり素晴らしい一冊でした。
