『ティファニーで朝食を』 トルーマン カポーティ 村上春樹訳 | ほんとなかよし

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第二次大戦下のニューヨークで、居並びセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他ならぬホリーだった…。表題作ほか、端正な文体と魅力あふれる人物造形で著者の名声を不動のものにした作品集を、清新な新訳でおくる。


内容 「BOOK」データベースより


タイトルの中編小説「ティファニーで朝食を」を筆頭に、「花盛りの家」・「ダイヤモンドのギター」「クリスマスの思い出」と収録された翻訳小説。 各話を通じて受けたカポーティ作品の印象は逃避行!ティファニーではおよそ常識や調和といった平凡生活から乖離した魅力ある女性が主人公として描かれているし。花盛りの女主人公は人生の苦境から愛という素敵な居場所へ見事に移住している。ギターでは獄中という不自由な空間からある種同性愛的なユートピアへの脱獄(結果実らないのだが)、クリスマスは子供時代から大人への精神的成長や変遷が見事に描かれているように思う。訳者あとがきに最高の表現があったので利用すると、「イノセンスの翼」が作品に垣間見られる。これほどに作品を的確に表現した言葉は無いだろうし、実際そう思って訳された作品ではその翼を感じる事ができるのではないでしょうか?さて、タイトルの「ティファニーで朝食を」に絞って感想を書きたいと思う。ティファニー作品の全てでもあり象徴的なホリーはミステリアスで興味深い存在だ。彼女自身何色にも染まっていないのだが、本人いわく気分が「アカ」色らしい・・・「アカ」と言えば情熱や愛情を思い浮かべる事が多いだろうけど彼女のアカはけっして美しいアカでは無いのだろう。その色を想像するだけでも楽しい。また興味深いのが彼女の回想や発言からしか登場しない兄の存在だ!作中の観測者である小説家=僕を兄の名前で呼ぶ彼女、兄の戦死の報を受け一時的にパニック?状態になる彼女!いずれも彼女にとって大きな存在である兄は読者の前に姿を見せることはないが、重要な鍵が握られている存在である事は容易に感じ取る事ができるだろう。ここからは個人的な推測でしかないが、両親を失った兄妹(姉弟)が登場する作品はすべからく背景にダークな印象が色濃く残るように思う。簡単な例を挙げると小説ではジャン・コクトーの「恐るべき子供たち」、漫画では浦沢直樹の「MONSTER」、映画では青山真治の「EUREKA」どの作品も印象的な程に陰鬱で猟奇的・常識外な話が多い。ティファニーは美しくもあり快活な展開ではあるが物語の根底部分は何か社会との隔絶であったり拒否反応的な要素が盛り込まれた作品なのかもしれません。観測者の僕が願ったように、また訳者がそう感じたようにホリーはけっして幸せな道を歩んだわけではないのかもしれない、しかし彼女が歩く荒廃した風景をどう捉えるか、その風景がどこまで続くのかを想像するだけでワクワクしてしまう。浮世を流す彼女が流れ着いた先が永遠に気になる一冊。