本屋大賞2位、毎日新聞夕刊連載の、初読の作家さんの小説。
【あらすじ】
物語は1981年、1991年、2001年、2011年の4話に2021年のエピローグという構成で、10年刻みで進んでいく。
主人公は1981年当時、小学3年生の律と18歳の理佐の姉妹+ネネ(ヨウム)。
姉妹が身勝手な母とその婚約者から逃れ、山あいの町で見ず知らずの隣人らに見守られ、8歳だった妹の律が38歳になるまでの歳月をたどる成長の物語。
1981年、18歳の理佐は短大の被服科に進学するはずだったが、母から「入学金は婚約者のために使ってしまった」と言われて呆然となる。
さらに、母の婚約者が家に来て、妹の律をたびたび家から閉め出していたことに気付いた理佐は、律を連れて家を出る。
理佐と律は山間部の町で夫婦が営むそば店で仕事(手伝い)をすることに。
そば店の守さんと浪子さんは気さくな夫婦。
姉妹は浪子さんの父が住んでいたアパートを借り、生活必需品を少しずつ揃えながら生活を築いていく。
また、そば店では水車小屋でそばの実を石臼で挽いており、そこにはヨウムのネネがいた。
ネネの世話をすることも仕事の一つで、理佐だけでなく律も水車小屋を訪れ、おしゃべりで歌が大好きなネネと交流を深めていく。
さらに、老齢の画家の杉子さん、律の担任の藤沢先生や同級生の寛実ちゃん、律の友人の寛実ちゃんと男手ひとつで育てる榊原さん、中学生の笹原研司、理佐の夫となる鮫渕聡、浪子さんに誘われて理佐が参加した婦人会の女性たち、水力発電所に仕事をするためにこの町に移り住んできた聡などに出会い、様々な年代の人たちに支えられ、助けてもらいながら律と理佐は大人へと成長していく。
【感想】
淡々と進むストーリー。
まるでゆったりとした川の流れのようで、緩やかに穏やかなに二人が成長していき、しみじみと味わうことができました。
40年の間に出会いと別れがあって、人の成長を喜び、人の幸せを心から願う人々の温かさが伝わってきました。
登場人物はみないい人ばかりで、互いに無理のない範囲での親切や閉じていない人と人との関係性、地域コミュニティが心地よく感じました。
藤沢先生の「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」の言葉に共感しました。
裁縫が好きな理佐と、本好きの律が互いを思い合い、親が力になってくれない状況を乗り越えていく姿が愛おしく感じました。
人と人がささやかに助け合い、支え合う姿が心に染み入る一冊でした。
鳥の中でも賢いと言われるヨウムは、色を識別することができ、数字もある程度理解するなど3歳児くらいの知能があり、そして50年程生きられるということを知り、驚きました。
ヨウムのネネ役さえ見つかれば、NHK朝の連続テレビ小説になりそうな話だと思いました。