車のある風景 松任谷正隆 | なほの読書記録

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I'm really glad to have met you.



「JAF Mate」誌に連載(2018〜2023年)されていたエッセイ集。

車にまつわるエピソードが盛りだくさんで、読みやすくて面白く、昭和40年代の頃を思い起こすことができました。

とても共感できるエピソードばかりで、ひとりで頷いたり、ほくそ笑んだりしながら読んでいました。

第四章「クルマ選びに思う」にある「人生最後に乗るクルマ」の話の精神科病院のオチは、思わず笑ってしまいました。

第七章「クルマ乗りの心得」にある「半分と半分の論理」の話は、本当にそのとおりだと思いました。

世の中には自分よりちゃんとした人間が半分、自分よりちゃんとしてない人間が半分いると、できるだけそう思うようにしている。自分が真ん中あたりにいるというのも実はちょっと怪しいものだけれど、おかしなドライバーは存在するわけで、そういうときには動物の国に迷い込んでしまった、と思うようにしている。言葉なんて通用しない。さっさと逃げるだけだ。

普通のドライバーなら進化していくのである。でも進化しないどころか退化していくドライバーも半分はいることを忘れないでほしい。

《「車のある風景」松任谷正隆 著 JAFメディアワークス 刊より一部引用》


第八章「今、そしてこれから」にある最後の話「死ぬ前に乗る(所有したい)クルマ」は、我が身に置き換えてみると、切実に悩み考えさせられました。


巨匠の徳大寺有恒さんはVWゴルフで、大御所の小林彰太郎さんはランチア・ムーザだったそうです。


私自身、最初のクルマだったS30の現代版であるRZ34にひと回りして戻るか、と妄想してみたり、メカ的にその対極にある未来志向の電気自動車EX30なんかもいいなぁ、と憧れてみたりしてしまいました。


でも現実は巨匠や大御所のように、案外普通のクルマだったりするのかなぁ、と先を想像してしまいました。


松任谷さんが過去に所有した数十台の中から特に思い入れの強かった9台の愛車にまつわる四方山話(自動車回顧録)も掲載されており、クルマ好きの方にオススメのエッセイ集でした。