ゴースト 二係捜査3 本城雅人 | なほの読書記録

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「遺体なき殺人事件」の真相を追う、二係の刑事と記者が驚愕の真実を暴いていくストーリー。


【あらすじ】


新大久保の路地裏で、喧嘩の仲裁に入った医師の柿沢孝洋が殴られ、反撃して相手に重傷を負わせ、過剰防衛、傷害の容疑で逮捕される事件が起きた。

柿沢は傷害容疑で逮捕された。


二係捜査の森内洸は、柿本と昨年行方不明となった3歳児の母親・小深田亜理が、大阪に暮らしていたときの小中学の同級生であり、事件当時に病院を休んでいることを突き止める。


その亜理との関係を取り調べで追及された柿沢は、突然、子供を殺したと自供をはじめる。


しかし、埋めたと自供した場所には遺体がなかった。


なぜ柿本は遺体を遺棄した本当の場所を明かさないのか?

亜理を脅かすゴーストの正体とは?


中央新聞の事件記者・向田瑠璃の視点も絡めながら、二係の信楽京介 巡査部長と森内洸 刑事は真相を追う。


【印象に残ったフレーズ】


【信楽の言葉】

「嘘には理由がない時がある。だけれども隠し事には必ず理由がある。その秘密をこちらが暴けば、隠せなくなる」(P68


【男女の性意識をテーマにしたセミナーの女性講師の言葉】

「男性が外見を重視するのに対し、女性の大半は好きになる感情が外見や評判より、内面的なこと、それもふとした優しさやかけられた言葉などに起因することが多い」(P69


「男女とも不倫につながるのは夫婦のコミュニケーションがうまくいかなかったことが主な理由と言われているが、女性の場合はパートナーに対する期待が薄れ、失望などから新しい出会いへと心が動かされる」

「そして不倫相手にのめり込めば、夫への恋愛感情は消え、性交渉さえ避けるようとする」

「一方の男性の浮気心は消えなくて、恋愛ごっこの範疇を出ない」

「妻は妻、不倫相手は不倫相手と分けて考えるから、不倫相手だけでなく、妻とも同じことをする」

「特にエリートでプライドが高く自己評価も高い男は、どうして自分を好きにならないのだといっそうムキになる」(P147


【瑠璃の言葉】

「好きになる気持ちにはなれなくても、好意の順番はある。それは異性だけでなく、同性でも。そして恋人と同じように、好きになったり嫌いになったりもする。感情が永久にフラットであることは、生きている以上ありえない」(P227


【柿沢の言葉】

「人間って幸せも不幸も入るスペースが限られている。だから幸せになるには、一つずつ不幸を消していかなくてはならない」(P164


「世の中は、きみみたいな恵まれた家庭に生まれた人間ばかりではないんだ」(P249


【亜理の言葉】

「孝洋はどんな時も私のことを考えてくれるんだね。さすが心のお医者さんだ」


【印象に残った場面】


【亜理が孝洋に自分の夢を話す場面】

亜理が一番好きな映画「リトル・ダンサー」

原題は「ビリー・エリオット」

男の子が家族の反対を押しきってバレエダンサーになる映画。

ビリーが自分の意志でバレエ学校に行きたいと言って、お父さんの前で踊るシーン、私にもビリーほどの強い気持ちがあったらなって、いつも思ってしまうのよね」(P188


【感想】


中学生から続く柿沢と亜理の見えない深い絆が、真相を解明する鍵となっていました。


今回の事件が起こってしまったこととともに、亜理の半生を鑑みると、とても遣る瀬無い気持ちになりました。


ラストで、雲間から射し込む光芒が見えたように感じました。


今秋に出版予定の第4弾を読むのが今から楽しみです。

《「ゴースト 二係捜査3」本城雅人 著 角川文庫 刊より一部引用》