涅槃 下 垣根涼介 | なほの読書記録

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I'm really glad to have met you.


下巻を読んでの感想は、上巻を読んでの感想と大きく異なることはありませんでした。


読み応えがありました。
2巻組の長編でしたが、読む価値が十分にあったと思います。

以下、読んでいて気に入ったフレーズです。

人はたいがいの場合において、自分の見たい現実しか見ようとしないものだ。

そもそもこの世に絶対などということが、果たしてありうるだろうか。
もしあるとすれば、人はいつか死ぬるという、その一事のみだ。

人は皆、生まれ落ちたその時から、その時代や土地柄の檻からは、常に無縁ではいられない。自分では平明に世を見ているつもりでいても、その目には常に薄い膜のようなものがかかっている。
つまり、それが偏見。生い立ちや今の立場から来る自らの枠に、ごく自然にとらわれているということ。
人は生まれながらにして自らの枠にとらわれている。

世間ではこうなっているから、こうあってしかるべし、という物差しや考え方を否定することの大切さ。

人の心の機微とは、つくづくわからないものだ。

働き続けねばならない。走り続けなければならない。死ぬまで走り続けなければならない。

恩義ようなものを感じておられますならば、それは、私に返さずともよろしいものでございます。どなたかに返せばよろしいのです。そしてそのお方も、やがていつかは誰かに恩義を返す。何も、当人でなくてもよいのです。そのようにして人の縁がつながり、この広い宇内は広がっていくーーー そう、かつて申されたお方がおられました。

一人で生きてきたのではない。すべてがつながっていく。

歴史は、常に生き残った勝者の都合によって捏造され、喧伝される。滅んだ系譜。敗者は、その歴史の中で沈黙するのみである。