>オリジナルフルアルバム

>タイトル:NEW BORN GHOST

>アーティスト:Tele

>リリース日:2022年 6月 1日

>記事作成日:2023年 6月 19日






聴きました!


“お初”のアーティストさん。

読み方は“テレ”さんだそうな。グループではなく、谷口喜多郎さんという方のソロプロジェクト。この谷口さんが、作詞作曲に加えて編曲まで自らこなしているのだそうな。そして、どうやらまだ20代前半のご様子。

…えっ? 神さま、この人の事を優遇し過ぎじゃない⁉︎笑 まぁ、実際には、ご本人の努力があってこその(天から与えられたアドバンテージではない)この音楽性なんでしょうけども。




『アンダルシア』

躍動感のある、バンドアンサンブルが心地良いアップテンポ曲。

初めて聴いた時、初めてなのに何だか懐かしかったんですよ。その理由を自分でもしばらく分からないままだったんですが…特にリズム隊のアレンジに、青春パンク感があったからだと気付いたんです。メロディアスなベースソロとボーカルとの“ツインボーカル”構成もそうだし、サビのドラムスの“ッタッタッターンターンタンッ”(語彙力)もそうだし。当時の青春パンク勢は“爆音こそ正義”って感じでとにかくデカい音でこれを鳴らしていて、対してこの方は非常に洒脱にスマートにメリハリを付けたトラックメイキングをしているので、最初はその類似性に気付きもしなかったんですが。でもきっと、このアレンジをただただ力任せに爆音で鳴らしたら、青春パンクチューンになると思うんです。

ご本人がそこへのオマージュをした訳では無い(つまり偶然)だとは思うんですが…青春パンク世代のぼくには、なんか無性に懐かしくなる曲でした。

あっ、念のため言っときますが、この曲と青春パンクの“どっちが上”とか“どっちが正解”とかそういう話ではないですよ。どっちも好きという話。


『バースデイ』

そんで、2曲目にはもう全然違う曲調を持ってくるという。冒頭2曲の振れ幅だけで、既にこのアーティストの多彩ぶりが悟れるってものです。

ベースラインとか、ほんのりユーモアも感じさせるギター辺りには、ちょっとYogee New Wavesあたりを彷彿とさせるチル感あり。一方で、歌詞には、大袈裟に言えば怒気みたいなものも感じさせられて。その絶妙なアンバランスさに末恐ろしさを感じます。こんなにスマートなアンバランスさは、狙って出せるものではない。


『私小説』

今度は“どポップ”。物凄くジェイポップな感じ。Saucy Dogとかsumikaとかみたいな“嫌味のない”ポップネス(歌詞に適度なシニックはありますが)。お笑い界が顕著でしたが、“優しい○○” “傷つけない○○”がブームみたいになって、そういうネガティブな刺激の少ないコンテンツが主流になって…そういう流れの中に置いて差し支えない曲だと思います。とにかく聴き易い。


『夜行バス』

瑞々しい曲。雰囲気で言うなら、夜の景色というよりは眩しい光に満ち満ちた春の朝みたいな爽やかさですが。でも、この瑞々しさは確実に青春だし、青春時代といえば夜行バスと言えなくもない(笑)。地方から夏フェスに遠征するその夜行バスの中でこの曲を聴いたら、もうその時間だけは自分がこの世界の主人公だと錯覚出来る事間違いなし。

「この国にもはや幸せはない」なんてフレーズも、ぼくにはもうハイティーンが放つ眩しさしか感じられない(笑)。


『クレイ』

ここで更に新たな“球種”を。アコギのアルペジオと小鳥のさえずりが爽やかな、優しいバラード。秦基博さんとか、山崎まさやんとか、その辺りに通じる。優しくて、爽やかで、そして切なくて。ずっと前にお別れしたあの人が夢に出てきたうたた寝から醒めたみたいな、淡い感傷。


『花瓶』

「おいまじか」が最初の感想ですよね(笑)。どれだけの球種を持っているんだよ、と。ここまでのどの曲とも似ていない曲。ファンタジックというか何というか…“リアルを描写する”というよりは、“小説を読む”“ドラマを観る”に近い感覚。作られたストーリーを楽しむような曲。このところの感じで言うとメジャーデビュー以後のSEKAI NO OWARIの作風に近いし、元を辿ればミドリカワ書房さんのコンセプトに近い感じがするというか。


『誰も愛せない人』

タイトルは、なんて哀しいんだろうか…でも歌声は柔らかくて優しくて、それがまた感傷を誘うんだ。

歌詞は、まだ全然飲み込めてないっす(笑)。本作の中でも突出して、抽象的というか前衛的というか詩的というか何というか。無声映画を観る感覚に近いかも…説明が少なくて、与えられた情報のどこをどう繋ぎ合わせて解釈するのかをこちらに委ねられている感じ。これはこれで、全然嫌いじゃない。


『comedy』

これをコメディと捉えるなら、チャップリンの喜劇のイメージですかね。最近の人(というか現代の人)で言うなら、東京03とか、(ネタによるけど)さまぁ〜ずとか? コメディなんだけど、そこに哀愁が漂うヤツ。この曲の歌詞には「哀愁なんかで騙さないで」と釘を刺されちゃいましたが(笑)、ぼくにはこの曲が哀愁に満ちたコメディに感じるんです。


『ghost』

何度目かの「おいまじか」です…例えば『comedy』で〆ていれば、もっと“分かりやすい”アルバムだったと思うんですよね。バラエティには富んでるけど、「バラエティ豊かだね」で終われるというか。でも、この曲が入ってくる事で、「ん?どういう事だ?」っていう引っかかりが生まれる。「もしかして、他の曲も含めて、ぼくがまだ気付けていない深いメッセージ性があるんじゃないか」とか、「“こういうアーティストだと認識されたいんだろうな”っていうアーティスト像が、この曲で崩れますけど?」みたいな感じとか。なんか、色々と掻き回されるバラード。もっともっとぶっちゃけた言い方をすると、「俺の事、分かったつもりになってんじゃねーぞ?」と言われてるような気が(笑)。

凄く情緒的で、繊細で、儚げなバラードなんだけれども…なんか勝手にこのアーティストさんにSっ気を感じてしまっている。ふふふっ、良いぞ。




そんな、計9曲。


ここまで、割と意図的に“あのアーティストにテイストが近い”とかそういう書き方をしてきました。普段は、アーティストさんをアーティストさんで例示するというのは“パクリの指摘”とか“誰も得しないラベリング”みたいな感じで誤解を誘発したり意図しない不快感を醸し出してしまう可能性があるからあまりしないようにしているのですが…この方に関しては、ぼくのそんな安い例示なんかではびくともしないオリジナリティを感じたからこのような書き方をしたし、何よりも色んなアーティストを引き合いに出す事でこの方の引き出しの多さを記録しておきたかったので。

もう、本当に、バリエーションが凄いんだ。初めて米津玄師さんのアルバムを聴いた時のような衝撃に近い。


本作、去年(2022年)のリリースなんですよね。去年のうちに聴いてたら、確実に『2022年のアルバム・10選』に選んでただろうなぁ。






お気に入りは、

#01 『アンダルシア』

#03 『私小説』

#04 『夜行バス』

#05 『クレイ』

#06 『花瓶』

#09 『ghost』






この作品が好きなら、

・『ハッピーエンドへの期待は』/マカロニえんぴつ

・『シノニムとヒポクリト』/ササノマリイ

・『エスカパレード』/Official髭男dism

などもいかがでしょうか。






CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/











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