>オリジナルフルアルバム

>タイトル:JUMP ROPE FREAKS

>アーティスト:ズーカラデル

>リリース日:2022年 1月 19日

>記事作成日:2022年 3月 11日






聴きました!


ズーカラデルの最新作。

この方々の作品はここまで何作か聴いてきましたが…“これまでのズーカラデル”を踏襲しつつも、だけどマンネリ感とは無縁の瑞々しい音楽が詰まっていて、凄く良い作品でした。

メロコアブームを知ってる世代は、なんとも言えない郷愁で胸がいっぱいになったんじゃないでしょうか。




『まちのひ』

華やかで力強さもあるポップロックチューン。オープニング曲であり、それに相応しい“分かりやすい”曲だとは思いつつ、でもなんか端々から漏れ伝わってくる感傷やメッセージ性みたいなものにはハイライトの雰囲気もあったりして。


シーラカンス

配信シングル。当時から大好きだった。

小気味の良いオケに、奔放なメロディが乗っていて。メロは奔放なんだけど、歌詞はかーなりセンチメンタル。モラトリアム期の感じというんですかね…イケイケの勢いはもはやなくなって、だけど気持ち的にはまだ全然やれるつもりだしやるつもりだしやれると思われたいし…そんな何とも歪なエネルギーが、ギッシリ詰まってる。そんなふうに、ぼくには聴こえる。それが懐かしくて、少し羨ましくて、切ない気持ちになるんだ。


『つまらない夜』

どの曲も、サウンドはホントに勢いがあって瑞々しくて一言で言うと「若々しい」音楽なんだけれども、歌詞にはなんとも言えない感傷が…感傷というよりもむしろ哀愁と言うべきエモさがあって。おっさんの背中が発するやつみたいな(笑) この曲は、それが特に強い。音の若々しさと歌詞のエモさに、なんかキュンとしてしまうんだ。


『正しかった人』

冒頭から、リズム隊をはじめとする演奏陣が“総攻撃”をしかけてくる。耳馴染みは良いんだけど迫力もある音がガツンとぶつかってきて、本編が始まると一気に繊細になる。メロディラインをフィーチャーするように。

緩急のあるアレンジがぼく好み。


『ノエル』

メロディのセンチメンタルで言えば、本作中でこの曲が最も強いと思う。サビの哀愁、桁外れ。歌詞の中身とも相まって、サブカル色の強い単館系青春群像劇みたいな聴き心地。静かなのにエモーショナル。これは、なかなか、言葉で表現しづらい感触。そして、ぼくが大好きな感触。


『どこでもいいから』

ゲストボーカルを招いて。「すげぇ聴いた事ある!聴いた事あるのに名前出てこない!!!」と悶々としてたんですが、何とFINLANDSの塩入冬湖さんだった! 普段のクセの強い歌い方が若干マイルドになってた印象。

曲調は、Yogee New Wavesとかあの辺りがやってそうな、21世紀型シティポップのテイスト。肩の力の抜けた、チルみの強いお洒落な仕上がり。これ、この曲単体でクレジットを見ずに聴いたら、ぼくは絶対ズーカラデルだと気付かないと思う(笑)


『ローリア』

これまた、哀愁たっぷりのロッカバラード。3連のリズムってそれだけでエモーショナルだけれども、この曲は歌詞にしろ演奏にしろプレイにしろ、全部の要素が“適度に”エモーショナル。“全米が泣いた”ような非現実的な心の動きではなく、帰り道の夕日のオレンジに心動かされるような、そんな“自然”で“適度”で日常の匂いがする、心の揺さぶられ方。


『スタンドバイミー』

控えめに言って、名曲かと。この『スタンドバイミー』という曲を聴いて、「この感触は何かに近いな…」と考えて、出てきた答えは「あ、『スタンドバイミー』だ!」でした(笑) ジュブナイル映画の金字塔。別に内容が似てるとかそんな意味じゃなくて…ハナタレ小僧でもないけれども大人でもない、そんなある種の“中途半端”な存在ゆえの迷いや、希望や、強さや、弱さ。そういうものが詰まっていて、ぼくなんかはもう鼻の奥がツンと来てしまうワケですよ。

うん、この曲は、控えめに言って名曲。


『若者たち』

この方々はアコギを効果的に使うなぁと、毎度感心するんです。メロディはキャッチーで、歌詞も平易な言葉で凄く分かりやすいんだけど…エレキとリズム隊のアンサンブルだけだと、ちょっとトガッた音になってしまって万人ウケはしなくなる(端的に言うと“若者のための音楽”になってしまう)と思うんですよね。でも、アコギのストロークが入る事で、親しみやすさみたいなものがぐっと増す。更には、エレキがパワーコードで厚みを出さなくてもよくなるから、メロディアスなリフとかを入れやすくなるから曲ごとの個性も出しやすくなってる。色んな意味で、アコギの使い方が上手いと思う。それが顕著に分かるのがこの曲。


『ウズラ』

曲タイトルに引っ張られてる部分も多々あると思うんですが、この曲を聴くたびに、ぼくは藍坊主を思い出すんですよねぇ(笑) 歌詞がカブッてるとかメロが似てるとかの話じゃ一切無いですよ? エラくキャッチーなメロディに、荒削りながらも人を惹きつける魅力に満ちたボーカルが乗っかり、アップテンポでほんのり切なさも併せ持つアレンジが寄り添っている。音質も決して良くはなくて(ごめんなさい)、でもその分はち切れんばかりのエネルギーが迸っていて爽快。初期の藍坊主を彷彿とさせる感じが、すごい。


『GHOST』

本作中随一のバラード。訥々と、語るように歌うボーカルが印象的。

歌詞の登場人物2人の掛け合い(?)には、そこにその人たちが実在してるんじゃないだろうかと言う程の現実感がある。一方でそこで発せられる言葉や想いには、どこか現実離れしたような、ふわふわした浮遊感みたいなものがあって。この曲自体が現実なのか夢なのか…不思議な感覚に陥る曲。

いや、「そこが良いんだよ」というお話。


『トーチソング』

前作『がらんどう』にも収録されていた曲。祭りの太鼓みたいな節回しの、ちょっと愉快なイントロから始まる曲ですが…本編は至って真面目。シリアスというか、結構胸にチクリチクリと刺さってくるようなフレーズが沢山ある曲。そのギャップがまた良いんですけどね。


『稲妻』

ちょっと、昭和的なレトロを感じる曲。歌謡曲風…しかも、マチャアキとかそういう“ハンブンコメディアン”みたいな人が歌う系の。どこかトボケたような雰囲気の中に、かすかなセンチメンタルが香る。夕焼け空の下、昔ながらの商店街でも歩きながら聴きたい感じ。


『未来』

軽快なポップソング。この親しみやすさも、このバンドの特徴。賑やかなピアノと直向きなボーカルのコントラストが、なんか良い。

演奏陣は一様にゴキゲンで、聴いてると自然と口角が上がる感じがします。


『ジャンプロープフリークス』

ラストは、タイトルチューン。アップテンポな曲に、言葉数多めのボーカルが映える。ほんと、結構情報量の多い曲なんだけれども、自然とスッと入ってくるんだよなぁ。

サウンドの奔放さと歌詞の感傷とのギャップ。もしくは、オケのアッパー加減と歌声の素朴さのギャップ。良い意味のギャップがあって、この感じにちょっとandymoriを思い出したりしました(これももちろん、楽曲の類似性の話ではなくて、バンドの佇まいの話です)。




そんな、計15曲。


ごく個人的な所感で言うと、2000年代(ゼロ世代)のJ-POP感を凝縮したようなアルバムに聴こえました。

パンクロック/メロコアブームから派生してのポップロック系バンド(例えばロードオブメジャーのか、それこそ藍坊主とか)の雰囲気は強くあるし、圧倒的なキャッチーさとそれと同じくらいのオリジナリティを併せ持った(あの時代の)ゆずみたいな佇まいも感じるし、何でもアリの作風にはミクスチャーロック系を想起させる部分もあるし。ミスチル、スピッツetcの、“(あの時代の)J-POPのど真ん中”って感じも、凄くするし。ゼロ年代の音楽的カルチャーを、色んな面で感じるんですよねぇ。

あの時代の音楽が大好きだったぼくにとっては、凄く愛おしくてそして凄くセンチメンタルに聴こえる作品。






お気に入りは、

#02 『シーラカンス』

#03 『つまらない夜』

#04 『正しかった人』

#05 『ノエル』

#08 『スタンドバイミー』

#11 『GHOST』






この作品が好きなら、

・『ソーダ』/藍坊主

・『ハチミツ』/スピッツ

・『テイクミー』/Saucy Dog

などもいかがでしょうか。






CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/











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