>オリジナルミニアルバム
>タイトル:DOOR
>アーティスト:チアキ
>リリース日:2021年 6月 5日
>記事作成日:2021年 7月 28日





聴きました!

赤い公園の初代ボーカリスト・佐藤千明さんの、ソロ作。アルバム作品としては初になるんですね。ソロ移行以後、「どう展開するのかなー」って思ってたけど中々音源が出てこなくて、配信シングル『向かい風/Blueberry Night』が出て「いよいよか?」と思ったらまた静かになって。コロナ禍で製作がストップしたという理由もあったみたいですが…兎にも角にも、「ようやっと!!!」のヤツです。



『Oops!』
バンドの音がデジタルフレーバーでデコレートされたトラックに、しなやかで華やかなボーカルが乗っかる。「あぁ〜、チアキさんの歌声だ!!!」って感じ。大袈裟に言うなら、五臓六腑に染み渡る感覚。正直、赤い公園時代にはこの歌声をそこまで特別に思ってなかったんですが…今回本作を聴いて、自分がこの方のこの声と歌い方をここまで好きだったんだと初めて自覚。

『曇天』
アッパーチューン。
このポップでカラフルでパンキッシュでエネルギッシュな曲を聴くと、嫌でも、『猛烈リトミック』の辺りのキャッチーに振り切れた赤い公園を想起せずにはいられないんだ…そして、色んな事が思い浮かんで、なんでか悲しい気持ちになってしまう。。。そんな曲じゃないのにっ! そんな聴き方はアーティストにも楽曲にも失礼なのにっ!!!

『trffic jam』
タイトなリズムにゾクゾク。夜の匂いというか、何となくそういうものを感じる。もちろん別に卑猥な話ではなくて…甘美な魅力とそこはかとないおどろおどろしさと、そういうものがない混ぜになった独特の空気感。そういうものが薫ってきたんですよねぇ。
バンドの圧が爽快ですね。音で殴られる感じ。ズシンと重く、なのに鋭い。

『under the deep sea』
物静かなピアノから始まって、少しずつ、花開くように“開いていく”感覚の曲。最初はちょっと華奢で儚げで繊細なイメージなんですけども、ちょっとずつ熱を帯びていく。次曲に向けたインタールード。

『夜を』
静と動の、静謐と激情の、絶望と希望の…そんな両極の対比。圧倒的に美しく、物悲しく、そして美しい。イメージ的には、氷のナイフ。
終盤の、荒々しく雄々しく猛々しく、でも何とも感傷的なボーカルに、なんか初期の赤い公園を思い出しました。「鬼気迫る」という表現が非常にぴったりな。

『Blueberry Night』
切れ味鋭い悲壮なまでのバラードのあとは、珠玉のポップチューン。マリンバでしょうかね、軽快でまろやかな打楽器と人懐っこいエレキギターの絡みが愉快。ボーカルも、ちょっとヤンチャで、可愛らしい佇まい。こちらには、千明さん在籍後期のポップな赤い公園を想起させられました。

『プラットホーム』
なんて可愛らしい…ちょっとどっか斜に構えたというか、奔放なというか、そんな雰囲気のあるチアキさんのボーカルですが、この曲はもうそういうのを取っ払って可愛らしさに特化した感じのボーカル。意外と、新しい一面なのでは。

『生活』
生活臭が凄い! 言葉で嗅覚を刺激される感じ。誰かの日記を覗き見してるような…というか誰かの何でもない日々を覗き見しているような曲。
綺麗な事ばかりじゃない、でも嫌な事ばかりでもないのが、生活。その、ポジにもネガにも振り切れてない感じが凄くリアル。
将来の生活を、まだ頭の中でイメージしている段階の二人なんですかねぇ。そんな時期が一番楽しかったりするんですよね。思い悩む事すらも楽しい…あとあと思い返せばそんな時期を、今まさに過ごしている主人公の曲。
ピアノ一本の、だけどどの曲よりもドラマチックなオケも非常に素敵。
この一曲を聴くだけのためでも、本作を聴く価値がある(いやもちろん、他の曲も素敵なんだけども)。



そんな、計8曲。

あらゆる語弊や、誤解や、違和感や、ハレーションを恐れずに言うなら…赤い公園よりも、赤い公園な感じがしました。
『猛烈リトミック』の時期の作品みたいにポップに振り切れたような楽曲から、『透明なのか黒なのか』のように混沌としたエネルギーがカタマリでぶつかってくるような楽曲から、『熱唱サマー』のように刹那的で瞬間的な閃光みたいに眩しい曲から…赤い公園の歴史をまとめたみたいな作品に、ぼくには聴こえました。そんな聴き方を制作者が望んでいないであろう事は重々承知しつつ、「でもだって、そういう風に聴こえちゃったんだからしょうがないじゃん」っていう感じ。
津野米咲という天性のクリエイターが生み出す楽曲を、佐藤千明という天性のボーカリストが表現する赤い公園というバンドの偉大さを再確認すると共に、そのバンドのエッセンスがこうして“次”に残っていた事への喜びも確認出来ました。

…なんか、赤い公園赤い公園言い過ぎた気がしますが、クリエイターとしてのチアキという人物のポテンシャルにも、当然圧倒された次第です。





お気に入りは、
#02 『曇天』
#03 『trffic jam』
#05 『夜を』
#07 『プラットホーム』
#08 『生活』





この作品が好きなら、
・『LITMUS』/Co shu Nie
・『ロンググッドバイ』/きのこ帝国
などもいかがでしょうか。





CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/
…配信限定作品ですが。










ぼくの、もう1つのブログもご贔屓に!