>企画アルバム
>タイトル:Sugarless Ⅱ
>アーティスト:スガシカオ
>リリース日:2011年 8月 10日
>記事作成日:2020年 11月 12日





久しぶりに聴きました!

先日、この名盤の感想を書いていなかった事が判明(笑) 感想を書くために聴き直してみたら、やっぱりいい作品だった…。



『コーヒー』
アルバムの一曲目のこの曲の、イントロを聴いただけで泣きそうになる。まさにコーヒーのような、魅力的でほろ苦い雰囲気の曲。そこに、山盛りの砂糖の代わりに目一杯の感傷をぶち込んで軽くかき混ぜたら、この曲の出来上がり。
マジで、この一曲を聴くだけの為にでも、このアルバムを買う価値がありますよ。

『月とナイフ(Piano ver.)』
のっけから、涙でぼくを脱水症状にしようとしているのか…あながちそれが冗談とも思えない、素晴らしくセンチメンタルで素晴らしく情感豊かな曲のリレー。
オリジナルよりもクセが無く、でも彫りが深い。

『ホームにて』
都会的な、小洒落たサウンド。あくまでもクールに展開するこの曲は、だけど何とも存在感がある。ちょっとだけ斜に構えた感じのさらりとした雰囲気が、凄くアーバンなんですよねぇ。

『夏陰〜なつかげ〜(Original ver.)』
こっちのほうがストリングスが効いてますね。穏やかな佇まいなんだけれども、その分、終わりゆく夏のなんとも言えない切なさがダイレクトに突き刺さってくる。あまりにも鋭利な感傷に、鼻の奥がツンとしてしまいます。

『ファスナー』
盟友・桜井和寿氏とのコラボ。誰得かと問われれば、即答で「ぼく得」。ウニ・いくら丼級。
一発録りなのかな、凄くライブ感のある仕上がり。ミスチルから入ってスガさんも聴くようになったぼくなんですが、この曲を聴くと「桜井さんも中々いいね!」なんて思ってしまう程に、スガさんが“俺の歌”として歌ってる。
桜井さんの歌声は、言うなれば“屋久杉”。図太いのがズドンとそそり立ってる感じ。一方でスガさんのそれは、紅葉真っ盛りの紅葉。繊細で艶やかで、美しい。その両者の声が重なった時に、ともするとお互いの良さを打ち消してしまわないかとも心配になるのですが、この二人に関してはその心配は不要だった。絶妙に絡まり合い、もつれ合い、くんずほぐれつのそれはエロティックですらある。

『TOKYO LIFE』
湿度ゼロ、ノスタルジーゼロ。スガシカオにしか書けない、ドライでニヒルな東京の歌。この湿度感は、生粋の東京生まれ東京育ちにしか書けないのかもしれないですね(ぜひ、アルバム『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』収録の『おれだってギター1本抱えて田舎から上京したかった』も併せて聴きたい)。
ある意味で、非常に“スガシカオらしい”曲。

『コンビニ』
アコースティックサウンドの、こちらはノスタルジーでいっっっぱいの曲。“あの頃”を思い出す歌詞ではあるけど、“今”を否定も肯定もしてないのが良いと思います。大概、過去を振り返る曲はそのあと“今”に言及するのがセオリーだけど…言外に哀愁はぷんぷん漂わせているけれども直接的に言及していない辺りに、リリシストとしてのこの方の才能を再確認するのです。歌詞の温度感を象徴するのが、2番の「まぁそんなもんでしょう」。この感覚(“言葉”ではなく“感覚”)を表現出来る作詞家は、この人くらい。
「街がひとまわりやせた気がした」って、すげぇ表現。奇抜だけど、すんごい伝わってくる。

『真夜中の貨物列車』
アレンジが被ってるとか曲が似通ってるとかそういう話ではなくて、漠然としか言えないんだけど“空気感”みたいなものが、前曲『コンビニ』と共通してる気がするんですよね。同じ世界の、コンビニのお話と貨物列車のお話。(言い方は悪いけど)懐古趣味的な切なさが胸を締め付ける一方で、決してそこに卑屈になったりはしないという。
スガさんの数多ある楽曲の中でも、(さりげなくだけど)前向きな気持ちで溢れてる曲だと思う。

『ネコさん』
シングル『はじまりの日』のカップリングとして聴いた当時は「随分可愛いタイトルを付けたなぁ」くらいだったけど…大人になって、自分がネコ(というか生き物)を飼うようになった今改めて聴いたら、なんか、涙が止まらない。「愛してるって一体どうゆうこと?」…今でも、ぼくにも分からない。去年亡くなったハムスターのなまちゃんは、ぼくたちの愛が足りなかったから亡くなったの?そもそも、金魚や熱帯魚よりもなまちゃんが亡くなった時のほうが悲しかったぼくは、感情が変なの? 分からない、分からないけど、考え続ける事がきっと大事。
この曲は、ちょっと、さらりとは聴けない…。

『ガリレオの数式』
基本的にこのアルバムはシングルのカップリング曲であったり、既発曲の別アレンジver.であったり、そういうものが収録された企画色の強いアルバムなんですが、こちらは新曲。
ここまで割と“低刺激”な曲が続いてきたけど、これはサウンドやアレンジの面でかなり刺激的な曲。一方で、歌詞的にはゲスさみたいなものはなく凄く“整って”いる。
クールなマッドネス、好きです。

『黒いシミ』
この曲の歌詞は、ある意味で、小林武史Pとのコラボ曲である『ぼくの街に遊びにきてよ』の世界と地続きのようにも感じます。大切な人を、綺麗な面ばかりではない自分のテリトリー(=街)に招く…付き合い始めのカップルのはじめてのお泊まりみたいに、「寝顔を晒す覚悟を持って」みたいな雰囲気(例が下世話ですいません 笑)。

『Progress(piano ver.)』
これはこれで良いんだけど、こうして聴き比べられるようになる事で、改めてオリジナルの良さを感じました。この曲は歌詞が特に素晴らしい曲だと思ってたんだけど(もちろんそれはそうなんだけど)、個人名義ではなくkokuaというバンド名義でリリースした事に納得がいく、演奏陣の存在感に気付いた感じです。
同じくkokuaの武部聡志Pがこちらでも弾いてらっしゃるし、別にこっちのバージョンがイマイチだとかそういう話ではないです。

『アオゾラペダル』
ぼくはやっぱり、スガさんver.のほうが好きですね。多分どっちが優れているとかいう話ではなくて、ブラックコーヒーとカフェオレのどっちが好みか?ってだけの話なんだと思います。嵐のそれも良いけれど、ぼくにはちょっと甘味が強過ぎる。

『世界が終わる5秒前』
こんなにも華やかなアコースティックギターが、あるんですね…曲調自体がアッパーでテンション高い感じはあるんだけど、それにしてもゴキゲン過ぎでしょうこのアコギの音色。
適度に軽くて、それなのに聴いた後になんか“引っかかり”が残る、スガシカオが炸裂してる曲。

『ぬるいビール』
なんか初期のスガさんの、マニアックでダーティな匂いの強い作風を彷彿とさせるアレンジ。『19才』とか『赤い実』とかともまた違う、初期スガシカオの特有の匂い。“匂い”というか、もはや“臭い”。中毒性がごく強い。

『Loveless』
中毒性という意味では、これもまたかなりのもの。本作中で一番毒っ気が強いと、ぼくは思ってます。
COILのトリビュート盤『10th Anniversary Songs〜Tribute to COIL』に収録されていた曲ですね。あのアルバムで聴いた時から、大好きな曲。COILのカバーなので作詞作曲はスガさんではないわけなんですが…ぼくは、凄くスガシカオっぽい曲だと思ってます。毒々しくて、エキセントリックで、センセーショナルで、そしてスタイリッシュ。

『1/3000ピース』
そうかと思えば、毒っ気ゼロの爽やかポップチューン。毒っ気の代わりに盛られているのは、ほのかな感傷。秋の空のように、あくまでも爽やかな感傷。

『Real Face』
まさかこの曲までセルフカバーするとは…セルフカバーって言うのかな? 作詞はスガさんで、作曲はB'zの松本さんという、豪華ではあるんだけど今ひとつ謎の拭えないコンビによる曲。単にコンペとかで決まったんですかね…でもスガさんにせよ松本さんにせよ、コンペに参加する“格”じゃないですよね。かといって、このお二人に接点があるなんて話は聞いた事がないし…今もって謎な組み合わせ。
こちらのスガさんver.は、編曲が田中義人さんなんですね。ゴールデンコンビと言って差し支えないでしょう。なんとも濃厚で重厚で、ラウドかつメタルみたいなサウンド。



そんな、計18曲。

銀盤のキャパギリギリ、パンッパンに音楽が詰まってる、幸福な一枚。

ほんと、名曲揃い。例えば「スガシカオって言ったら『夜空ノムコウ』だよね〜」っていう人には「『夜空ノムコウ』ばりの素晴らしい歌詞がいっぱいあるよ!」と言えるし、「『19才』の変態的な世界観こそ全てでしょう」という人には「色んなアプローチの変態プレイが楽しめるよ!」と言えるし、「『Progress』の哀愁に勝るものナシ」っていう人には「あの哀愁に勝るとも劣らない曲があるよ!」と言える。
ある意味で全方位型のアルバム。だけどマニアックさを忘れていないところがなおGood。





お気に入りは、
#01 『コーヒー』
#02 『月とナイフ(Piano ver.)』
#04 『夏陰〜なつかげ〜(Original ver.)』
#05 『ファスナー』
#07 『コンビニ』
#08 『真夜中の貨物列車』
#09 『ネコさん』
#10 『ガリレオの数式』
#13 『アオゾラペダル』
#16 『Loveless』





この作品が好きなら、
・『B-SIDE』/Mr.Children
・『おるたな』/スピッツ
・『POP VIRUS』/星野源
などもいかがでしょうか。





CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/










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