>オリジナルフルアルバム+ベストアルバム

>タイトル:THE LAST
>アーティスト:スガシカオ
>リリース日:2016年 1月 20日
>記事作成日:2016年 3月 13日





聴きました!

フィジカルアルバムとしては、何と6年ぶりだそうです! でもまぁ、配信作品はコンスタントに発表されてたし、フィジカルシングルも出してるし、むしろその活動は精力的でしたけど。

本作は幾つかの形態でのリリースですね。ぼくは、『THE LAST』に『THE BEST 2011-2015』と『ぶらり途中下車しない旅』(DVD)が付いたヤツを購入。そちらの感想も併せて。

「J-POPになる前のスガシカオ」とご本人がおっしゃっていたのが印象的でした。





まずはメインのDisc 1、『THE LAST』の収録曲から。



『ふるえる手』
何とも“凄い”曲からスタート。トータルプロデューサーである小林武史Pとのやりとりの中から生まれたというこの曲のコンセプト。でも、言われなければ“『アストライド』の前日譚”とは気付かないですよー。それ程までにパーソナルで、赤裸々で、パンチの強いフレーズ。
シンプルなアコースティックサウンドに、訥々とした歌声で、すんげぇ事を言ってる(笑)。その鋭利な表現は、スガシカオをスガシカオたらしめる部分の炸裂だと感じました。

『大晦日の宇宙船』
アシッドでアンダーグラウンドな匂いのするこの曲。でも、ヴァースでグッと溜め込んだ熱量は、サビで一気に爆発する。こんな攻めた構成、近年…特に若手のアーティストさんにはあまり見られなくなった自由さですね。ほんと、スガさんが好きなようにやってる感じ。
「ベテランよりも若手が小さくまとまっててどーすんだ?」と思ったりもして(笑)。

『あなたひとりだけ 幸せになることは 許されないのよ』
先行配信シングル。
怖い…例えばストーカーであるとか、もしくは絶対的な権力者であるとか、そういう種類の人が持つ鬱屈したエネルギーとか粘着性とかが。。。
スガさんの中の変態性(褒め言葉)を、一切隠そうとしないその潔さに乾杯(笑)。そして、それを、配信限定とはいえシングルで切るとは。

『海賊と黒い海』
大人の色香が漂う曲。ゆったりとしたテンポの上で非常に洒脱なメロディ&ボーカルが。コーラスワークも美しい。
何だか、この曲は初期のスガさんを彷彿とさせます。カッコよさと哀愁を共生させる事が出来る、稀有な才能。

『おれ、やっぱ月に帰るわ』
アッパーに、遊び心たっぷりに。
いい意味で軽薄。何かの暗喩のようでいてそうでもなかったり、何でもないようなフレーズの中にハッとするメッセージが隠れていたり。
今回のアルバムのジャケットを手がけたインベカヲリさんという方の写真集に、着想を得ているそうです。そっちもチェックしたい。

『ごめんねセンチメンタル』
(表面的には)爽やかでキャッチーなポップチューン。けれども、歌詞には当然のように毒というか、エグみが。これがクセになる、これがあるからスガシカオから目が離せない! アコギのストロークも、エレキの乾いたリフも、色んな音をサンプリングしたデジタルな音も…全てが爽快なのに。もう、最高。

『青春のホルマリン漬け』
これもまたマニアック(褒め言葉)で猥雑(褒め言葉)で変態的(褒め言葉)な曲。タイトルからして、ポップソングとはかけ離れてますよね。でも、言いたいニュアンスは物凄くビンビンに伝わってくる。

『オバケエントツ』
ストリングスの爽やかなイントロが怖いくらいに新鮮なこの曲。スガさんの原風景は、やはりこういう街並みなんだろうなぁ。雑多な街並みが容易に想像出来るけど、それが重苦しいトラックではなくてこのような爽やかでカラフルなトラックに乗っているので安心出来ます(笑)。「自分の人生を肯定的に捉えられているんだなぁ」って。

『愛と幻想のレスポール』
Funkが炸裂! グルーヴに任せたアゲアゲな曲。『ふるえる手』と同じコンポーザー/ソングライターが作った曲とは思えません(笑)。
スガさんは、その飾らない歌詞が武器ですが、頭じゃなくて体で奏でるファンキーグルーヴもまた武器ですよね。

『真夜中の虹』
生と死という、壮大で深遠なテーマを扱いつつ、一方でそれがうんざりする程見慣れた日常の中にあるんだという事を知らしめられる。
例えば、凡人の発想でいくと、これは、どマイナーなスローバラードに仕立てると思うんですよね。けれどもそうではなく、躍動感のあるアッパーなビートの上で歌い上げる事に、“答え”があるような気がしました。
もう1つ特筆すべきはクレジット。小林Pが、アレンジャーとしてではなくピアニストとして参加している…小林Pの、斬新な使い方(笑)。

『アストライド(Album Mix)』
もはや哲学の域。哲学というか…生き様? スガさんの価値観の全部が、歌詞の隅々に至るまで込められている。スガシカオの新章の、狼煙のような曲ですね。



そしてDisc 2、『THE BEST 2011-2015』へ。
こちらは、スガさんがインディーに戻っていた時代にリリースした作品を一挙にまとめた作品ですね。殆どが配信限定作品、初のフィジカル化作品という構成。



『Re:you』
インディー第一弾の配信シングルからスタート。当時、SNSを通じて曲タイトルを公募するなど、いろんな意味で斬新な曲でしたね。
とにかくカッコいい。それ以上でも以下でもなく。オーガスタ後期のスガさんは“J-POP”に軸足を置いていたように感じるのですが、この曲はその枠からはみ出してます。エグくてグロいのにスタイリッシュ、そんな事スガシカオにしか出来ません。

『傷口』
『Re:you』のカップリング。
喪失感と虚無感が漂う、ビターな曲。「君のアドレスを消したら 携帯少し軽くなった」(歌詞より)は名文句ですよね。この一節だけで、その後ろにある色んな気持ち、色んな経過、色んなストーリーが浮かんできます。“リリシスト・スガシカオ”、健在。

『Festival』
配信シングル。
その華やかで賑々しいイメージのタイトルとは裏腹に、どこか斜に構えたような物悲しさを含む曲。フェスティバルの瞬間ではなく、終わった後の虚無感がテーマのように感じます。

『アイタイ』
近年では数少ないフィジカルシングルでしたね。
妖しげな雰囲気は、これまたスガシカオさんの持ち味の1つ。スガさんが元来持つ感性と、タイアップ先の『×××Holic』の持つ世界観は、元から抜群の相性なんでしょうね。
鳥肌が立つほど美しくて、背筋が凍るほど怖い。この世界観にホリックです。

『したくてたまらない』
ジャムセッション的なノリの曲。『アイタイ』のカップリングですね。『アイタイ』とのあまりの雰囲気の違いに、もはや笑ってしまいます(笑)。なんてくだらないんだ! そしてなんてかっこいいんだ!!

『赤い実』
再び配信シングルに戻って。なんというか…BPM的な事とかアレンジ面の事ではなくて、もっと感覚的なところで、異様にテンションが高い曲。アドレナリン出まくりというか。
もう、この辺りからは完全に“スガシカオ”という音楽ジャンルに突入。

『赤い実 REMIX』
続いては、なんとスリップノットのシドさんによるリミックス曲。なんと豪華な共演か。才能と才能のぶつかり合う様は、“共演”というよりも“競演”か。
ヒップホップ的な味付けが成されつつ、ちゃんとスガさんの音楽でもあるという。

『情熱と人生の間』
ここからは配信限定ミニアルバム『Acoustic Soul』の中から代表曲を2曲収録。まずは『情熱と人生の間』から。インディーに戻って以降、毒々しくてサイケデリックな曲を次々に放ってきたスガさんがこの時に見せてきたのは、ストレートなポップソング集。特にこの曲は、プラスの音なども加わって軽快でカラフルな仕上がりに。

『航空灯』
オーガスタ時代初期の楽曲のように、アコースティックでゆったりとしていてそれなのにほんのりクセが香るこの曲。アコギのアルペジオに絡むボトルネック(多分)のゆったりとしたエレキが、ノスタルジーを感じさせます。

『LIFE』
メジャー本格復帰作。
タイトに刻むビートと、性急感を煽るマイナーなメロディライン。それなのに驚く程にキャッチーなサビ。シーンのど真ん中に、直球ストレートを放ってきましたね。
映画のタイアップも付いてたりして、かなり華々しい再デビューシングル曲。でももちろん、一番の特徴は“売り方”ではなく“楽曲”ですけどね。

『モノラルセカイ』
メジャーに復帰してもフットワーク軽く配信リリースする事を何だか嬉しく思った記憶のあるこの曲で〆。メジャーの強みとインディー方式の利点とを上手くハイブリッドした活動が期待出来る気がして。
楽曲は、EDMの要素を多分に含んだ爽快で軽快でダンサブルなアッパーチューン。



そして、DVDのDisc 3。『ぶらり途中下車しない旅~伊豆急行語らひ旅~』。



衝撃のタイトル(笑)で、スガさんとニコ生のチビT社長という方とライターの内田さんという方の3人で、本作の製作裏話を滔々と語っておられます。
これ、電車に乗る必要あったのか?(笑)
詳しい内容は、各自ご確認ください。



そんな、3枚組。計22曲、プラス動画1本。

Disc 1について。
セールスとかアーティストイメージとか、そういうものを排除して、本当にやりたい事をカタチにしたのが伝わってくる作品という感想。判で押したような作品が溢れる昨今のシーンにおいて、これ程までに攻撃的で獰猛な作品が他にあるでしょうか?
スガさんの作品は昔からずっと好きだけど、スガさんの活動スタイルは今がダントツで一番好き。

そして、Disc 2について。
こちらもとにかく奔放で、自由度の高い1枚。自由さはありつつ、その時その時の試行錯誤も感じられて、スガさんの活動年表のようでもありました。

一方向に向かって全エネルギーを放っているように聴こえるDisc 1と、まるで表裏一体のようなこちらDisc 2。それは放射線状に、強弱と濃淡を織り交ぜながら広がる作品集でした。
『THE LAST』と『THE BEST 2011-2015』は、ニコイチのようでした。これから購入する方は、絶対にこっちがいいと思います。

ちなみに…ぼくが購入したセットには“ベビースガシカオ人形”も付いてきました。これは、何だかよく分からん(笑)。

という事で、内容的にも商品的にも大充実の『THE LAST』。スガさんと小林Pという化学反応もまた、聴きどころのひとつかと。





お気に入りは、
Disc 1 - #01 『ふるえる手』
Disc 1 - #02 『大晦日の宇宙船』
Disc 1 - #06 『ごめんねセンチメンタル』
Disc 1 - #08 『オバケエントツ』
Disc 1 - #10 『真夜中の虹』
Disc 2 - #01 『Re:you』
Disc 2 - #03 『Festival』
Disc 2 - #04 『アイタイ』
Disc 2 - #06 『赤い実』
Disc 2 - #08 『情熱と人生の間』
Disc 2 - #10 『LIFE』





この作品が好きなら、
・『呼吸』/Lily Chou Chou
などもいかがでしょうか。





CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/










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