朝食を10時、昼食を15時、夕食を22時にとる。生活リズムが完全に狂っている。普段と違う食べ物に胃も驚いている。
 
料理だけでなく、あちこちで繰り広げられた会話に対しても消化不良をおこしている。旅を総括しようとすればするほど、分からなくなる。
 
日本に戻ったら日常に追われて、詳細は少しずつ忘れてしまうのだろうけど、物事の核心は残るはず。もう少し寝かせておこう。
 
Prendre du recul、つまり一歩引いてみたら何か見えてくるかもしれない。特に情報があふれる社会では、この姿勢が大事だと思う。
 
Shizuko, prends du recul ! 
 
20年前に上司から耳にタコができるほど言われた。確かに当時は仕事にも仏語にも余裕がなかった。だから、この表現には苦い思い出がある。
 
今回の滞在中にもあちこちで耳にしたけれど、みな自分を戒めるために、互いに確認するために口にしていたように思う。
 
社会が分断されていて、昔のように誰とでも政治の話ができるわけではない。私が出会ったフランス人たちはそう言っていた。
旅も間もなく終わり。たくさん話して、たくさん聞いた。その国を知ろうと思ったら、そこに住む人と会話するのが一番だと改めて思った。
 
ここでは私は外国人。ネイティブが3人も集まれば、話す速度にも使う表現にもついていけなくなる。Compréhension orale/聴解力が試される。
 
村の石造りの家に滞在3日目。一時は60人ほどが集まったのが噓のよう。この日の午後には、家の夫婦と2家族だけになった。気心の知れた人たちばかり。
 
意見の相違はあるものの価値観にそうは違いはない。つまり、私が見ているのは、この国の一面だけ。そして、カメラの前では、たいてい笑顔を見せるものだと思う。
 
以下、旅の終盤を振り返る。

 

翌朝6時半に出発。その前に寝起きの仲間たちと集合写真を撮った。7月中旬なのに田舎の朝は肌寒い。

 

私にとっては、どこからどう見ても「フランス人」の人たち。オリビエ、アルチュール、シャルロット、マエヴァ、ブノワ。それぞれ気難しく、それぞれに温かみがある。

 

ブノワの運転で駅へ向かった。

 

残された2日間。そろそろ日本に帰りたいのが本音…私も息子も夫さえも。急ぎ足で「会いたい人たち」の元へ向かった。電車に乗り、市の中心部へ。7時半に到着。

 

会うたびにホッとするレイラとそのパートナー、フランソワ=ロイック(実は長年、夫も私も名前が覚えられなかった。「ロイック」の前って何だったけ?というふうに。だからブログに明記しておく)

 

朝、家にお邪魔するのを快諾してくれた2人。朝食を頂きながら当たり障りのない話をする。前回と同じく、居心地がよくて、まるで日本にいるように錯覚した。違うのは前回訪れたのは真冬だったこと。

 

 

レイラは夫の大学時代のクラスメイトであり、和紙を使った装丁家でもある。今回も自宅の一室にあるアトリエで作品を見せてもらった。作家から直接、作品を購入する。贅沢な時間だ。

 
 
柄も色も手触りも柔らかい。それでいて装丁はしっかりしている。まるでレイラたちのよう。旅の前に書いたように穏やかさの中に熱さを秘めている人たち。この機会にさらにお近づきになりたかった。
 
そこで、再びリビングに戻った後、私から政治の話を振ってみた。水を得た魚のように、ただし、言葉を選びながら話し始めた2人。表面的な付き合いから少し関係が深まったように思う。
 
次、いつここに戻ってくるか分からない。でも、同じようにリビングで朝食を頂き、アトリエで作品を見せてもらい、他愛もない話から少し深い話までする私たちを想像できる。