感謝を示しつつ、結局、断る。こんな回りくどい断り方をするのは日本人だけだと思っていた。

 

 

ところが、日本語レッスンで、この課に入った頃、私も「謝絶」された。日本語ではなく、仏語で。仕事でも勉強でも出来るだけ言語を客観視するようにしている。

 

ただし、自分のこととなると、主観的になってしまう。都合よく解釈して、年を越そうと思っていたが、既に1月も中旬。せっかくだから仏語版「謝絶」を観察してみよう。

 

事のいきさつを簡潔に書くと、4月に友人家族が来日することになり、日程もほぼ固まったことだし、総勢8名で楽しめるアクティビティを考えてみたのだ。

 

日本好きな友人。その旦那さんと小学生の子供たち。それに旦那さんの弟。そして、夫、息子、私。提案したのは、忍者の里と陶芸の町巡り。

une journée d'excursion aux villages de Ninja et de céramique !

Votre séjour sur Osaka se trouve à la fin de votre itinéraire. Donc je suppose que vous souhaitez rester plutôt tranquilles avant de repartir pour la France.

Mais si ça vous dit, nous avons une idée : une journée d'excursion aux villages de Ninja et de céramique !

En fait, ils ne sont pas à Osaka, mais à Shiga, ma région d'origine dans le Kansai.

Ça devrait prendre une journée entière. Donc ça dépend de vos plans et si vous n'êtes pas trop fatigués.

 

Ils sont écrits tout en japonais...mais pour te donner une idée, je t'envoie des liens.

 

Shigaraki (Céramique) :

×××

Koka (Ninja) :

×××

 

友人からは、忍者は息子たちの気に入るだろうし、陶芸は自分好みだと好感触の返事が届いた。不安要素としては移動時間の長さ。その場合は、忍者を優先させたいと。

 

Merci ce sont de très bonnes idées.

Je pense que les ninja plairont vraiment aux garçons, et la céramique me plaira à moi ! 

 

これよりも前に私の妄想は始まっていた。窯元に問い合わせたところ焼き上がりまで数か月かかるとのこと。それなら今年、私たちがフランスへ行く時に届けにいこうじゃないかと。

 

友人からの返事を受けて、移動時間、交通費や入場料等を書いて返信したのが日曜。その週末に届いた返事を夜中の1時に読んだ。

 

その日は仏語の試験結果の喜びに酔いしれて、途中で目を覚ましたため。スマホに届いていた友人からのメールを見て、私の妄想は砕け散った。

 

「子供たちが忍者の里を楽しめる年齢は過ぎていると思う。それに特に下の子は ronchon(文句言い)で、移動時間が長いのが心配」とも書かれていた。

 

というわけで、忍者も陶芸も白紙に。友人の気変わりは理解しかねたものの、何らかの事情があるのだろうと思い、翌朝、返信しておいた。

大人の対応

Merci pour ta réponse et je comprends bien votre situation.

Il n'y a pas de problème de notre côté.

Oui, on va voir ce qu'on peut faire ensemble à Osaka ou à Kyoto pour profiter du temps.

De toutes façons, après cinq ans depuis notre visite à Lyon, on ne manquera pas de sujets de conversation !

Je vous souhaite également joyeux Noël et de bonnes fêtes de fin d'année.

 

A bientôt,

Shizuko

 

判断を下さないように、しばらく友人からのメールを放置しておいた後、読み返してみた。そこに、機会があれば使ってみたい「謝絶」の表現を見つけた。

 

Donc même si c'est une belle proposition je pense qu'on va privilégier une sortie plus près de Osaka/Kobe. J'avoue que c'est un peu dommage, j'aime beaucoup l'idée et ils auraient adoré ça il y a 2 ans !

 

≪ c'est une belle proposition (mais) ≫ 

≪ J'avoue que c'est un peu dommage, j'aime beaucoup l'idée (mais) ≫

 

この辺りに友人の申し訳なさが伝わってきた。そして、その環境を考えてみた。管理職で小学生の子供が2人いて、日本に来るのはたぶん10年ぶりぐらい。もちろん彼女の発案。

 

私たちは同じ歳だけれど、環境が違う。私の働き方は自由だし、息子はもう高校生。夫も家事や仕事に協力的。自分がその環境に持っていったのだけど、精神的に恵まれている。

 

そして、私が外部(職場や学校)からのプレッシャーで苦しんでいた30代に友人が教えてくれた言葉を思い出した。≪ charge mentale ≫ 直訳は「精神的負担・重荷」。

 

 

その頃、私は日本の外に答えを探そうと、夫の協力のもとフランス語のアンケートを作り、フランス人女性のライフスタイルを知ろうとしていた。

 

それを知った友人は仕事が忙しい中、質問内容にアドバイスをくれたり、自身の友人や知人にアンケートを転送するなど何かと協力してくれた。

 

自分も渦中にいて、苦しんでいたんだと思う。私は働き方を変え、抜け出すことができたけれど、友人はおそらく大黒柱で、そう簡単に環境を変えられないのだと思う。

 

私の提案を断る時、まず子供たちを持ち出したのはまるで日本人女性みたいで、そこに苛立ちを感じた。いつまで経っても、どこにいても変わらないことに対して。

 

3か月後には日本にやって来る。友人は何を思うんだろう。日本に留学していた頃の自由な生活か。

 

5年ぶりの再会。この5年のうち3年はただの3年ではなく、人生観が変わるほどの経験をしたのは世界共通だと思う。

 

20歳になるかならないかで出会った私たち。もう40代後半だ。いやいや、まだ40代後半だ。

 

友人との出会い、フランスとの出会い

 

ようやく書けた。もうわだかまりはない。というのも先週から頭の中を占めているのは「謝絶」ではなく、「申し立て」なのだ。

 

またしても仏語がらみ。冬休み中で家にいた息子に意見を聞くと、「揉め事が苦手だから自分ならそのままにしておく。」と言われ、私も泣き寝入りするつもりだった。

 

その晩、夫に話したら「何もしなかったら絶対に後悔するよ。」とフランス人みたい(笑)に主張し出したのだ。思い直して、翌朝、言葉を慎重に選び、申し立てした。

 

それ以降、1週間、悶々としている。言葉は難しい。