2週間に1回、早朝4時半からオンラインレッスンをしている。5月上旬、画面に現れた相手の背後に目が行った。いつも閉め切られていたvolet(鎧戸)が開放されていて、その後ろに青空が広がっていたから。

 

画面の向こうは夜の9時半。あーもうそんな季節かと思い、相手に夏の過ごし方を聞いたり、私は私で昔、留学していた頃の夏の思い出を話したりして、ゆっくりレッスンが始まった。

 

文法中心の内容。相手がテキストに目を落としているうちに次第に背後の空は深みを増していき、レッスンが終わるころには夜空になっていた。私も背後の障子を開けてみせた。こちらは夜明け。

 

朝型の私も4時半からのレッスンは隔週ぐらいがちょうどいい。3月末に相手の国でサマータイムが始まった時点で本当は1時間前倒しされ、4時開始になるはずだった。それを30分ずらしてくださった。正直、助かる。

 

この日のレッスンの後、谷川俊太郎さんの詩『朝のリレー』を思い出した。以下、引用。

 

カムチャッカの若者が
   きりんの夢を見ているとき
   メキシコの娘は
   朝もやの中でバスを待っている
   ニューヨークの少女が
   ほほえみながら寝がえりをうつとき
   ローマの少年は
   柱頭を染める朝陽にウインクする
   この地球では
   いつもどこかで朝がはじまっている

   ぼくらは朝をリレーするのだ
   経度から経度へと
   そうしていわば交替で地球を守る
   眠る前のひととき耳をすますと
   どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
   それはあなたの送った朝を
   誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

 

 

↑これを書いてから4年が経った。同じく谷川俊太郎さんの詩に「生きる」がある。この間、生死について考えることが多かったと思う。

 

最近、新しい出会いが増えてきた。そのたびに、この人はどんな数年を過ごしてきたんだろうと考えてみる。言語や文化は違えど、同じ状況を経験してきたのだから。

 

↑『朝のリレー』を紹介したくて、日英仏で書いたもの。