【怪談】近道 | 柳川淳二の怪談部屋

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実話も織り交ぜたオリジナル創作怪談をメインとして、その他色々と記して行きます。
当ページの怪談は怪談朗読師のIsAM(136)殿にも朗読頂いておりますのでゼヒ、ソチラもお聞きになってみて下さい。
YouTubeの知的好奇心CLUBでは心霊部隊に所属。

こんばんは、柳川淳二です。





今夜のお噺はね、アタシがとある心霊スポットを訪れた時のものなんです・・・。


神奈川県のね、とある場所なんですが・・・ここ、詳しい場所は言えませんがね、待ち伏せをしていた男に女性が乱暴されて絞殺されたという殺人事件があった場所なんです。





住宅地の真ん中にねぇ、ちょっとした丘がありましてね・・・ここ木々が結構茂ってましてねぇ・・・周辺からは中、全然見えないんですよ。





でもね、この丘は下から上までちょっとした道が続いていて・・・通り抜けられるようになっているんだな。





なんでね、地元の人の中ではショートカット・・・所謂(いわゆる)近道として利用する方もいたそうなんですよ。


ここ、通りませんとね・・・丘を迂回するけっこう遠回りの道しか無いもんですからねぇ。





でもねぇ・・・この道、夜になりますとね・・・すごく暗いんだ。


街灯は入り口と出口あたりにポツンとあるだけ。


途中はというと薄暗くてねぇ・・・もう不気味なんですよ。


普通なら怖くて夜にここを通ろうとは、とても思いませんよねぇ。





で、ある日のこと・・・一人の女性が夜間の帰宅時にここを通ったんです。


女性ですからねぇ、もちろん暗い道には警戒心がある。


普通ならこんな道、通らないんですがね・・・その日はかなり疲れていたんでしょう、ちょっとだけ・・・今日だけ近道しようと思ったわけだ。





でね、その薄暗い道を上へと登って行ったんですが・・・その日に限って途中の暗がりに男が潜んでいたんです。


男もその道を利用したことがありましてね、まれにですが女性もここを通る事や、夜間の人通りがほとんど無いこと、隠れる場所があることを知っていたんでしょう。





女性が来たら襲ってやろうとね、暗がりに身を潜めていたんです。


そこへ、運悪く被害者の女性が上がって来た。





で、その女性は男にまんまと襲われ・・・抵抗したのか命までをも奪われてしまったというわけです。


暗闇で背後からいきなり襲われる・・・どんなにか怖かったことでしょう、首を絞められ息絶えるまでの間、どれだけ苦しかった事か。





なぜ、この道を使ってしまったんだろう・・・女性はきっと後悔していたに違いありません。


そして自分を殺した男への恨みと・・・現世への後悔の念が今でもこの場所に留まっているんでしょう。





その為か、事件後からこの場所では女性の幽霊と思われるものの目撃談が複数寄せられていたんですよ。





で、ある日の深夜・・・アタシこの場所を訪れたんですがね・・・入り口まで来ますとね・・・ポツンと薄暗い蛍光灯の街灯が一本だけ立ってる。





その場だけが・・・ボンヤリと照らされているんですがね、そのおかげでかえってこれから入ろうとしている奥の方がね、より闇の色を濃くしてしまっているんですよねぇ。





深夜ですからね、辺りはシーーンとしてる。


人っ子一人歩いてやしないんだ。





道の上の方を見るとね、もう真っ暗なんだな。


・・・怖い。これね、普段でも怖いですよ。





ましてやこの上でね、殺人事件があったと思いますとねぇ・・・もう怖さが倍増ですよねぇ。





で、アタシ意を決してその薄暗い階段をね、上り始めたんですよ。


コツコツコツ・・・苔むした石の階段をね、一歩一歩上っていく・・・。





後ろを振り返りますとね、入り口のあの街灯がだんだんと遠ざかって行くんです・・・それがなんだか心細い。


街灯が遠くなる度に、自分が異世界へとまた一歩近づいているという感じがするんです。





しばらく上がったあたりでしょうかねぇ・・・なんだか急に寒くなって来た。


7月ですからねぇ・・・深夜とはいえ寒いと感じる気温ではないんですが・・・でも寒い・・・なんだか異常に寒いんですよ。





それに、先程からなにやら視線を感じるんです。


誰かにじぃーっと見られているような・・・そんな感じがするんです。





辺りを見回すんですがね、もちろん誰もいるはずがない。


道の両脇は深い茂みで囲まれていて・・・見通しはほとんど利かない。


じっとしていると、何の物音もしない・・・シーーンとしてる。





上に行けば行くほど・・・寒さは増してくる。


なんだか視界も・・・こうなんというかね、ザラザラとした感じになって来た。


粒子が粗い・・・そんな感じなんですよねぇ。





やがて・・・左側にちょいとしたスペースが現れたんです。


ここなら人一人が潜むにはもってこいの場所だなぁ・・・と思ったその時。





アタシ、視界の隅にスッと白いものが通り過ぎたのを感じたんです。


と、同時に微かにではあるんですが・・・女性の声のようなものを聞いたような気がしたんですよ。





アタシ、思いましたね。


あ・・・ここだな、と。





きっと男は、ここに潜んで女性が通るのをじっと待っていた。


で、被害者の女性を襲い、このスペースに引き込んで殺害した。





良く見ますとね・・・ありましたよ、花束が。


被害者の魂を慰める為にね、ご遺族やご友人か供えたもんなんでしょう。


アタシ、そこで手を合わせましてね、被害者のご冥福をお祈りしておきました。





で、そのまま上へと上ってその場所を抜けたんですが・・・現場を遠ざかる度に寒さが和らいで行くのを感じましたよ。





やはり・・・ここは居ますね。


女性の霊はいまだこの場所に留まって・・・犯人の男を捜しているんでしょうか。


それとも・・・何かのメッセージを伝えようとしているんでしょうか。





このお噺を通して、アタシね・・・ひとつ女性にお伝えしたい事があるんですよ。


ここに限らず・・・こういった人通りの無い場所、街灯が無い暗い道はまだまだたくさん存在しています。





先日もねぇ・・・ありましたよ。


帰宅途中の女子高生が暗い道で待ち伏せされて殺害された事件がねぇ。





ひとつ・・・覚えておいて下さい。


どんなに面倒くさくても疲れていても、どれだけ遠回りになろうとも暗く、人通りの無い道を近道に使ってはいけません。





そしてそういう道を常に使っている女性の方がいましたら、明るい人通りの多い道にすぐルートを変更して下さい。





もしも、そういった道を使わなければ帰れない場所に住んでいるのであれば、タクシーや車で帰るか、引越しすることも考えてください。





暗く、人通りのない道。


そんな場所には路地に、茂みに・・・暴漢が常に潜んでいると思って下さい。


自転車に乗っていても安全ではありません、自転車くらいならば男の力で簡単に止めることができるからです。





いつも使っている道だから大丈夫、自分が襲われるわけがない・・・ついそう思ってしまいがちですがね・・・犯罪者は確実にあなたを狙っているのです。





もしもまだ、そういった危険な道を夜間に通ろうとしているのなら・・・次の被害者はあなたかもしれません・・・。





どうぞ、お気をつけ下さいねぇ・・・。


今夜のお噺はこれでおしまいです、また次回お会い致しましょう。





それじゃまた。