【怪談】ガレージ | 柳川淳二の怪談部屋

柳川淳二の怪談部屋

実話も織り交ぜたオリジナル創作怪談をメインとして、その他色々と記して行きます。
当ページの怪談は怪談朗読師のIsAM(136)殿にも朗読頂いておりますのでゼヒ、ソチラもお聞きになってみて下さい。
YouTubeの知的好奇心CLUBでは心霊部隊に所属。

こんばんは、柳川淳二です。

今夜のお噺なんですが・・・アタシの知り合いにね、小島さんという方がいるんですがね・・・この方、車が好きなんだな。
でね、その小島さんが体験された・・・恐ろしいお噺なんですよ。

小島さん、若い頃に苦労して一生懸命働きましてね、ついに念願の一戸建てのマイホームと車を買ったんだ。

車なんですが、クラウンのね、上位クラスのやつで新車ですからピカピカなんですよ。前々からね、これに乗るのが夢だったっていうんですよねぇ。

かなり値が張ったそうなんですがね、夢だったわけですから・・・大したもんですよね、ええ。

で、一戸建ての方にはシャッター付のガレージが付いてましてね、電動じゃないんですがね・・・手で閉めるタイプのやつなんですが、大事な大事な車を盗難や雨風から守るにはもってこいだったわけですよ。

それもあってこの建売の一戸建てを購入したわけなんですがね、この条件にしては少しばかり安かったそうなんですよねぇ。
でも、新築ですしねぇ・・・ワケありってほどそんなに気になるような安さではなかったもんですからね、小島さん喜んで買ったそうなんですよねぇ。

それでね、引越しも済みましてねぇ・・・大分落ち着いたってんで、小島さん夜のドライブに行くことにした。

奥さんやなんかも誘ったんですがね、皆引越しで疲れていたらしく行かないって言う。
小島さん自身もかなり疲れてはいたんですがね、もう車に乗りたくて仕方ないもんですから疲れなんてどうってこと無かったそうなんですよ。

ガレージのシャッターを開けて、車に乗り込む。
前の道路で一旦停車させてシャッターを閉める。
でもって小島さん、夜の単独ドライブに飛び出した。

車はスゥーっと滑るように走り、ほとんど振動も無くすこぶる調子がいい。
街を抜けて郊外の広い道を一走りして小島さん機嫌もよろしく愛しのマイホームへと戻って来たんです。

ちょいと調子に乗りすぎてしまったのか、もう大分夜も更けていたそうなんですよねぇ・・・出発した時間も遅かったもんですから・・・家はどの部屋も真っ暗で皆寝静まっているらしい。

小島さん、ガレージの前に車を止めると周囲を気遣ってなるべく音を立てないようにシャッターを上げた。

で、車をガレージに入れましてね・・・エンジンを止めた。
そして、扉を開いて車を降りた瞬間。
小島さん、なんだかゾクーッと背筋が寒くなったそうなんです。

(やだなー風邪ひいたかな?疲れてるからなぁ・・・)

思いながらね、ガレージを出ますとね・・・周りの家はみーんな真っ暗で寝静まっている。
住宅地なんで出歩く人も無く・・・辺り、シーーンとしてるんだ。

小島さん、シャッターの方へ向き直ると音をなるべく立てないようにシャッターを閉めた。

で、家の玄関の方にね・・・歩き出そうと踏み出したとたん!

ガンガンガンガン!

今出て来たガレージの中からシャッターを叩く音がするんですよ。

小島さん心臓飛び出す程驚きましてねぇ・・・後ろ振り向いてシャッター見た。
でもね、それ以降・・・何の音もしないんだ。

(まさか・・・誰かガレージに忍び込んでたのか!?)

小島さん思いましてね、ゴルフクラブ片手に警戒しながらシャッター、開けたんですよ。

中、なーんの音もしない・・・真っ暗なんだ。
電気点けて、車の周りをゆっくり一周する。
・・・誰も居ない。

一応、車の中、トランクの中・・・全部見てみたんですがね、やっぱり何も居ないんだ。
その間も、背筋がゾクゾクゾクゾクしてるんですよねぇ。

(おかしいなー)

小島さん、首ひねりながらね・・・電気消して、シャッター閉めたんですよ。
でもね、今度はシャッターに手かけたまーんま、耳を澄ましてたってんですよねぇ。

するとね・・・しばらくして・・・

ガンガンガンガン!!

やっぱり誰かが中からシャッター叩いてるんだ。
そら来たっ!ってんでね、小島さん間髪入れずシャッター勢い良く開けたそうですよ。

・・・誰も居ない。
中、真っ暗、シーーンとしてる。

そんなバカな!?今、たった今、シャッター中から叩いてたんだ。
その直後ですよ、シャッター開けたの。

叩いてすぐ逃げたとしてもですよ・・・素早く動く必要があるわけですからねぇ、何らかの音がするはずなんだ。

小島さん考えた。
叩いた直後に素早く身を隠せる場所・・・。
ああ、そうか!

きっと奴は車の下に隠れていて・・・そこから上半身だけ身体を出してシャッターを叩き・・・すぐに引っ込んだに違いない。

小島さん、確信したんですよ。
でね、ゴルフクラブ握り締めて、電気点けてね・・・車の横に回りこむと、下覗いて叫んだんです。

「そこにいるのは誰だっ!」

てねぇ・・・でもね、そこにはだぁ~れも居なかったそうですよ。
もちろんトランクにも、車の中にも誰もいやしないんだ。
ましてや狭いガレージの中・・・隠れる場所なんて他にありはしないんですよねぇ。

小島さん思ったそうですよ・・・この狭いガレージの中、姿も見せずにシャッターを中から叩ける人間なんているわけがない。
もし、いるとしたら・・・それはこの世のもんじゃあないに違い無い。

そう思った途端、小島さんさっきから感じてた寒気を思い出した。
もしかして、ここ・・・なんかいるのか?

その瞬間ですよ、シャッターが音を立ててひとりでに閉まったんです。

ガラガラガラガラッガシャンッ!!

「わああっ!」

小島さん、叫んでシャッターの方・・・見た。
するとね、シャッターが引き込まれる天井のスペース・・・あるじゃないですか。
そこねぇ、シャッターとの間に少し隙間があるんですよねぇ。

その隙間からね、青白い血まみれの手首だけがね、ズゥウウーっと這い出して来てたってんですよ。

そいつは数十センチも這い出して来ると・・・その手首だけの手でもってね、シャッターを・・・

ガンガンガンガン!!

叩いたそうですよ。
と、同時にね・・・ガレージの電気、フッっと消えちゃったんですよ。

もうね、中・・・真っ暗、真の闇。
なーんにも見えない。
この狭いガレージの中でもって、血まみれの手首と二人きりなわけだ。

小島さん、もう生きた心地しなかった。
ガレージの隅に縮こまって、ガタガタガタガタ震えてた。

・・・やがて音が聞こえて来たそうですよ。

ズゥッ・・・ズゥッ・・・ベチャッ!

(ヒイッ!)

どうやらあの手首、地面に落ちたらしい。
小島さん、ますます身を固くして縮こまっちゃった。
走って逃げ出したいんですがね・・・腰が抜けちゃって一歩も動けない。
冷たい汗が首筋を滴り落ちて来る。

・・・また音が聞こえた。

・・・ピタ・・・ピタ・・・ピタ・・・ピタ・・・

シーーンとした深夜のガレージの暗闇の中、血まみれの手首が這い寄って来ている。

・・・ピタ・・・ピタ・・・ピタ・・・ピタ・・・

だんだんだんだん近づいてくる。
暗闇の中、ゆっくりと確実に、自分に向かって来てるんだ。
小島さん、もうギュッと目を閉じてね、祈るしかなかったそうですよ。


(来ないで~助けて下さい!お願いですから来ないで下さい!帰ってくださいぃ!!)

でもね、そんな祈りも虚しく・・・血まみれの手首はもうすぐそこまで来てるんだ。
真っ暗ですからね、見えはしないんですよ・・・見えはしないんですがね・・・。
間違いなく来てるんだ・・・もう、すぐそこ、数十センチの位置ですよ。

・・・やがて、何かが小島さんの靴に触れた。
ズズッ・・・ズズッ・・・這い上がってくる。

それが剥き出しの足首に触れた。
冷たい・・・ゾッっとするほど冷たい感触・・・そしてヌルリとした血のぬめりを感じた瞬間!

ぎゃぁあああああああああああああああああああーーーーー!!

小島さん、耐えられなくなって絶叫してね・・・気、失っちゃったそうですよ。

「あなた!大丈夫!!あなた!しっかりしなさいよ!」

帰りの遅いのを心配した奥さんに起こされた時にはね、もう辺りが明るくなった明け方あたりだったそうなんです。

もちろん、あの手首はねぇ・・・もう影も形も無かったそうですがね・・・。

後から聞いた話ではねぇ、あの土地・・・家を建てる前にちゃんとお祓いがされてなかったようなんですよねぇ。

普通はね、家を建てる前には清め祓いをするもんなんですがね・・・最近はやってない所も多いみたいでねぇ・・・何も無い土地ならば大丈夫なんでしょうがね、どうも小島さんの家の土地には何かがあったみたいなんですよねぇ。

その後小島さん、専門家にお祓いをしてもらいましてね・・・それ以降ああいったおかしな事は起きていないそうなんですがね。

「いやぁ・・・柳川さん、今思い出しても身の毛がよだちますよ・・・」

小島さん、言ってましたよ。

みなさんもねぇ、土地や分譲住宅を購入する際にはねぇ・・・ちょいとそんな事にも気をつけて頂いた方が、いいとおもいますよ・・・ええ。

今夜の怪談はここまでです・・・また次回お会いいたしましょう。
それじゃまた。