こんばんは、柳川淳二です。
ちょいとパソコンが壊れちゃいましてねぇ、携帯だと文字数が制限されてお噺が全然書ききれないもんでね、更新が大分遅くなってしまいました。
楽しみにしていて頂いた方、ごめんなさいねぇ。
今夜のお噺はねぇ…広島県にお住まいの方で、仮に矢島さんというお名前にさせて下さい。
この方がね、実際に体験されたお噺なんです。
矢島さん、12階建てのね、結構大きなマンションの10階に住んでいたんですがね、毎晩眠りに着く前に楽しみがあった。
矢島さんの部屋のベッドなんですが、窓に向かって直角に置いてありましてね、ベッドの上でうつ伏せになって頬杖ついてねぇ、そのまま外の景色を眺める事ができたんですよ。
寝る前なもんでね、電気消して暗くなった部屋の中でもって、外の景色を眺める。
10階ですからねぇ、かなり遠くまで見渡せるわけだ。
月や星、遠くを走る高速道路の光…キラキラ輝く街の夜景。
そりゃあもう綺麗なんだ、絶景ですよねぇ。
なもんでね、矢島さん就寝前のこのちょっとした一時を毎日楽しみにしていたんですよ。
その日もね、いつものように寝支度を済ませましてね、矢島さんベッドに入ったんですよ。
うつ伏せになって、頬杖ついてね、外の景色を眺めてた。
街の灯りがキラキラしてて…高速を光の筋がスゥーと流れてく。
でもね、なんだ~かおかしい、何故か違和感があるんだな。
間違い探しじゃあないですがね・・・なんだかいつもの景色と違う気がするんですよねぇ。
矢島さん、なんでだろうとよ~く景色を眺めてみた。
するとね、視界の端…ちょいとした丘というかね、木々が鬱蒼と茂っている小さな山が目に入った。
ここね、民家や道が無いのかいつも真っ暗なんですよ。
山ですからねぇ、不思議ではないんですが…その日はその山にチラチラチラチラ青い光が見えたそうですよ。
いつも真っ暗な山に光があったもんだから矢島さん、違和感を感じたんですよねぇ…。
それにね、その光ってのが電灯のようにね、綺麗じゃないんだ。
なんだか青白くボヤーとしててね、小さいからハッキリとはしないんですがね、それがいくつも固まってチラチラチラチラ動いてるってんですよ。
矢島さんなんだか気味悪くなりましてね、その日はもう…景色見るのやめて寝ちゃったんだ。
でもね、その青白い光…翌日もそのまた翌日も見えたもんですからね、矢島さんいい加減気になって来た。
で、その週の日曜日にね・・・正体確かめたろってんで、矢島さん散歩がてらその山に行ってみたそうなんですよ。
そこ、周りは住宅地でね、その真ん中にポッコリと3~40m位の緑に覆われた山がある感じの場所なんだ。
山の入り口はってーと・・・あるにはあるんですがね、これがまたひどいもんでねぇ・・・ろくに舗装もされていないようなね、言ってみりゃほとんど獣道っていう感じのさぁ、荒れた道なんだ。
とはいえ、矢島さん気になっているもんだからその荒れた坂道をトットトットと登り始めたわけだ。
いざ登ってみるとね、それなりに手入れもされているんでしょうかねぇ・・・木々が道を遮っているような所は一つもないんだ。
おそらくね、誰かしらこの道を使っている人間がいるという事なんですよね。
季節は新緑の頃でね、良く晴れた日だったもんで・・・まだ午前中ですからねぇ、緑の中を歩いているとなんだか気持ちがいい、空気もうまいんだ。
そんな感じなもんで矢島さん自然に鼻歌なんか出て来ちゃってね、機嫌よくズンズンズンズン坂道を登って行ったんですよねぇ。
・・・やがて、結構開けた場所に出た。
でね、そこの景色見たとたん・・・矢島さん、「うっ」と鼻歌止まっちゃった。
そこねぇ・・・小さな墓場だったそうですよ。
真ん中にね、土のまーんまの道が1本、奥まで続いていてね・・・その両脇に小さなお墓がポンポンと幾つか並んでいるんです。
お墓はねぇ、さして荒れている様子も無く花や線香なんかも供えてあるんだ。
(あ~ここは小さいけどちゃんとしたお墓なんだな・・・地元の人のかな?)
矢島さん思いながらね、その土の道をトコトコ歩いていった。
やがてね、両脇のお墓が無くなったんですが・・・道はまだ先に続いてるんだ。
不思議に思って更に奥へと進んで行くと・・・
道、無くなっちゃったんですよ。
藪というか茂みというかね、草や木がからまったものが道を塞いでるんだ。
どうやらここから先はだれも手入れをしていないらしい。
矢島さんせっかくここまで来たんだからと茂みを掻き分けてね、奥に入ってみたそうですよ。
もうね、こうなると心が少年に戻っているというかね、冒険気分なんだ。
ちょっとね、楽しくなってきちゃってたんですよねぇ。
で、しばらく茂みを分けて歩いて行くとね・・・また少し開けた場所に出たんだな。
矢島さん、来なきゃ良かったと後悔したそうです。
その場所・・・苔むしてボロボロになった墓石がね、いくつも固まって置いてある・・・無縁仏だったそうですよ。
お墓はね、亡くなった方の魂が安らげる場所ではあるんですがね・・・無縁仏というのは・・・親類縁者も無く、もはやお参りに来る人間もいない・・・とても寂しい魂達が眠る場所なんですよねぇ。
お寺なんかではね、ご住職さんなんかが手入れやお参りをしてあげている場合もあるんですがね、これだけ荒れ果てているとねぇ・・・おそらくかなりの年月放置されているもんなんでしょう。
アタシね、良くお墓は怖くないんです、怖いのはどちらかというと神社なんだと言っていますがね・・・無縁仏はねぇ・・・怖いですよ。
で、そこからの景色見て、矢島さん愕然とした。
なぜかそこは木々が開けていて・・・町の景色が一望できたそうなんです。
普通なら素晴らしい眺めなんですがね・・・そこからは、矢島さんの住むマンションも遠くにではあるんですがハッキリと見えていたそうなんですよ。
つまりね、矢島さんが夜に見た青白い光ってのはね・・・この無縁仏のある、まさにこの場所だったというわけですよねぇ。
こんな場所に深夜、やってくる人間なんているわけがない。
ましてや周りに電灯なんて一つもありゃしないんだ。
なのにあのたくさんの青白い光が見えたということは・・・
矢島さん、昼間とはいえゾーッとしましてね・・・逃げるように家へと帰ったそうですよ。
でもねぇ・・・この話、ここじゃあ終わらないんですよねぇ。
その日の夜なんですがね、矢島さん・・・しばらくの間夜は閉めっぱなしにしてたカーテンを開けましてね、外の景色を見てみたそうですよ。
怖いんですがね、やっぱり気になるわけだ。
今もまだ、あの青白い光は見えるのかと・・・恐怖より好奇心が勝ってしまったんですよねぇ。
見ると、窓の外はいつもの綺麗な夜景。
街の灯りがキラキラキラキラ輝いてましてね、遠くの高速を光の筋がスゥーと流れてく。
で、問題の小さなあの山。
見えるんだ・・・やっぱりあの青白い光が。
自分が昼間行った、無縁仏のあるあの場所。
いくつもの青白い光がチラチラチラチラ動いてるってんですよねぇ。
矢島さん思ったそうですよ。
(間違いない!あれはあの墓場で成仏できていない無縁仏の霊の姿に違いない。)
普通ならね、そこで正体を確信したわけですからねぇ・・・終わるはずなんですがね。
矢島さん、何を思ったかデジカメを取り出して来た。
それね、光学ズームでもってね、夜景に強くて倍率を何十倍にもできる遠景を撮影できるやつなんですよ。
こんなもの滅多に見られるもんじゃあないってんでね、写真に収めようとしたらしい。
で、その青白い光を液晶画面に納めてね、それを見ながらグゥウーーっとズームをかけていく。
青白い光が画面の中でどんどんどんどん大きく拡大されていくんだ。
矢島さん、なんだかやってはいけない事をしているようでドキドキしてきたそうですがね、もうここまで来ちゃあ後へは引けないってんで・・・更にズームをかけていったんですよ。
・・・やがてね、その光が何らかの形を成して来た。
それねぇ、その青白い光の中心なんですがね・・・
ざんばらの髪を振り乱したね、無表情で青白い顔をした男の生首だったってんですよ。
それがいくつもいくつもフワフワと空中に浮いてねぇ、漂っていたんです。
矢島さん、ブワーと汗が吹き出して来た。
こりゃすごいもん見ちまったな~・・・とね、興奮していたそうですよ。
で、いよいよそれをカメラに収めようとシャッターに指をかけ・・・半押しをしたその時。
無表情で視線も定まらずあっち向いたりこっち向いたりしてフワフワ漂っていただけの生首達がね・・・
物凄い形相で一斉に矢島さんを睨んだんです!
あっ・・・!
矢島さん驚いて思わずシャッターを切った。
ピピッと音がして・・・画面が真っ暗になってしまったそうです。
それ以降、もう何をしてもカメラの電源はオンにならなかったそうですよ。
あわてて山の方を見ますとね、あの光は一つも見えず・・・まるで何も無かったかのように山は暗く闇に沈んでいたそうです。
それから矢島さん、三日三晩原因不明の高熱にうなされましてね・・・なんとか命は取り留めたんですが・・・子孫を残せない身体になってしまったそうです。
矢島さん、言ってましたねぇ・・・。
「柳川さん・・・祟りってあるんですね・・・しかも霊って、自分に気づいて見えている人間がいることを察知できるんですね・・・距離に関係なく・・・。そうなんですよねぇ、きっと。」
みなさんもね、偶然に写ってしまった霊は仕方がないとして・・・面白半分にね、この世の者でないものを写真に撮ろうなんてね、しない方がいいですよ。
どんな祟りがあるか・・・分かったもんじゃありませんからねぇ。
今夜のお噺は、これでおしまいです・・・また次回、お会いいたしましょう。
それじゃまた。