カーテン | 柳川淳二の怪談部屋

柳川淳二の怪談部屋

実話も織り交ぜたオリジナル創作怪談をメインとして、その他色々と記して行きます。
当ページの怪談は怪談朗読師のIsAM(136)殿にも朗読頂いておりますのでゼヒ、ソチラもお聞きになってみて下さい。
YouTubeの知的好奇心CLUBでは心霊部隊に所属。

こんばんは、柳川淳二です。


今夜のお噺は都内でサラリーマンをされている・・・お名前を仮に横内さんとしておきましょうか。


この、横内さんがねぇ、出張でもって三重県に行った時に体験された世にも恐ろしいお噺、なんです・・・


横内さん、3ヶ月の予定で三重県のある会社に出張していたんですがね、滞在中は会社の手配した借り入れ寮で生活をすることになっていたんですよ。


その寮はというと、2階建てでしてね・・・横内さんは2階の6号室で、一番端っこなんだな。


部屋はなんてことはない8畳一間のワンルームマンションでしてね、ユニットバスがついて・・・小さなキッチンがあってねぇ・・・ホントになんてことはない部屋だったんですよ。


ちょいと違いますのはね、窓なんだ。

玄関を入ってキッチン前の短い廊下を歩き、部屋に入る。

すると部屋の突き当たりにベランダへ出る窓・・・サッシですよねぇ、それがあるわけだ。


その窓が普通のものよりちょいと長いんですよねぇ。

サイズが縦方向に長いんですよ。


・・・なもんで、横内さんが持ってきたカーテンじゃ長さが足りなかったんですよ。


カーテン、かけますとねぇ・・・空いちゃうんだ、隙間が。

床から15cmくらいかなぁ、下に隙間ができちゃうんですよねぇ。


見ると、その隙間からベランダの床が見えてる。

アララ・・・横内さん思ったそうですがね、どうせ3ヶ月くらいのもんだし、すぐに引っ越しちゃうんだから・・・買いなおす程の事じゃあないよな。


と、そのままにしたそうなんです。

ベランダの柵も良くある向こうが見えるものではなくて、ちゃんとした壁になっていてね、外からは見えないという事もね、あったんじゃないかなぁ。


で、引越しも終わって翌日には職場での歓迎会なんかがあって、横内さん夜遅く帰宅したわけだ。


熱いシャワーを浴びて、歯なんかを磨いて、部屋の電気を消して・・・ベッドに入った。


そこは田舎の方でしてね、隣の部屋には住人も入っていないし、深夜に出歩く人間もほとんどいない。


なもんで、自分の出す音が無いとびっくりするくらいシーーーンとしてる。

季節は6月中旬で・・・梅雨真っ只中なんだ。


部屋の中も湿気でちょっとジメジメしていて寝苦しい。

そんな中、横内さん寝返りをうった。


視線がふと窓の方に向いたんですがね、カーテンが見えて・・・その下に15cmくらいの例の隙間がある。

そこから暗~いベランダの床が見えてる。


(あの隙間・・・なんかやだな~。あそこから誰か覗いてたりしたら気持ち悪いな~)


なんて思ったそうなんですがね、その日は酔っていたせいもあってか・・・やがて眠っちゃった。


それから数日が立ったある日なんですが、その日は夕方からシトシトと雨が降っていたんです。


今年は空梅雨でしてねぇ、ほとんど雨、降ってなかったんですがね・・・今日は珍しく降ってたわけだ。


横内さんが引っ越して来てから初めての雨だった。

でね、いつものように帰宅して、シャワー浴びて、コンビニ弁当食べて・・・ビール飲んでね、横内さん部屋の電気消してベッドに入ったわけだ。


慣れない場所での仕事で疲れていたのかすぐに寝てしまったんですよ。


・・・どのくらい時間が立ったのか、横内さんふと目が覚めた。

時刻は深夜2時を指していたそうです。


外では相変わらずシトシト雨が降っている。

周り、シーーーンとしてますからねぇ、雨の降る音がサーーーーーーーーッと聞こえてる。


それにな~んだか寒い。

この季節、こんなに寒いわけないんだ・・・部屋の空気もなぜか淀んでいるような感じもする。


横内さんなんだか眠りにつけず、ウツラー、ウツラを繰り返してた。


そうしましたらね、なんだか音が聞こえるんですよ。

サーーーーーーーーーーッという雨の音に混じって・・・


ピチョン、ピチョン・・・ピチョン・・・

なんだか雫の垂れるような音。


雨が降ってますからねぇ、雫の垂れる音がしても不思議じゃないんですが・・・その音、やけに近いんだ。


横内さん、気になりましてね・・・音のする方、見てみたんだ。

それ、ベランダからしてるようなんですよね。


カーテンがあって、床がある・・・その隙間、15cmくらいの隙間。

ベランダの暗~い闇が見えてる。


そこ・・・見た瞬間・・・!!


(ううぅぅぅうーーーーーっ!!!)


横内さん叫びそうになるのを必死でこらえた。


そのカーテンの隙間に、青白~いビショビショに濡れた・・・裸足の女の足が立っていた・・・そうなんです。


足元に水溜りができていて・・・そこに髪や服から滴っているのか・・・雫がピチョン、ピチョン、と落ちていたんですよねぇ。


横内さん、変質者かなんかがベランダに侵入してきたのかと思ったんですがね・・・部屋も真っ暗、外も真っ暗、この状態でその青白い足、やけにハッキリ色が分かるんですよ。


・・・ありえない、それにあの青白さ、とうてい生きている人間のものとは思えない。


てことはこの女、サッシとカーテン一枚挟んでベランダに立っているこの女、この世のもんじゃあないんだ・・・!


そう思った瞬間、横内さんゾクーッとしましてねぇ・・・身体、固まっちゃった。ブルブルブルブル震えて、歯がガチガチガチガチ鳴っている。


(どうしよう、俺幽霊見ちゃってるんだ、どうしよう・・・)


横内さん、どうすることもできずに身体固まったまーんま、ただただじぃーっとその足、見てた。


やがて・・・その足がちょっと横に傾いたと思うと、足の横に黒い何かがビチャッと落ちてきたんだ。


それ、やはりビチャビチャに濡れた・・・女の髪、だったそうですよ。

その髪の先端の部分が、床の水溜りにベチョリと垂れ下がって来たってんですよねぇ。


そして最初は床にくっついている部分が先端だけだった髪が、だんだんだんだん多くなっている。


そこで横内さん、気付いてしまったそうなんですよ・・・


(おい、まてよ・・・髪が床についてるって事はこの女!身体を横に傾けて・・・隙間から中・・・覗こうとしてるんじゃないか!?)


思っている間も髪は下がり続け、やがてビチャッという音を立てて女の細~い左腕が床に下ろされた。


女は更に体勢を低くして、中を覗き込もうとしているらしい。


やがて、女の左耳が見えて来た。

このままだと、もうすぐに女の目が見えてしまう。


(いやだ~見たくない!見たくない!見たくない!)


横内さん思ったそうなんですがね、恐怖で身体・・・固まっちゃって動かない。


女の左目が見えて来た。

そして・・・


ゴトンッ!重々しい音を立てて女の左耳が床に押し付けられ・・・両目までもが見えてしまった。


異常に青白い顔・・・血走った目・・・妙に赤ーい唇。

その女の目がギョロリと動き・・・ベッドの上で震えている横内さんの視線と交錯した。


その瞬間、女の赤~い口がパカーッと開かれ・・・


「ぐぅげぇえええええーーーー!」


世にも恐ろしい奇声を発したってんですよねぇ・・・。

横内さんそのまーんま、意識失っちゃった。


・・・横内さん、翌日そのマンションを管理している会社に行きましてね、昨夜こんな目にあったが、あそこは一体どういった部屋なんだと聞いてみたそうなんですがね・・・。


するとそこの担当の方が言うには、実は1年前あの部屋に住んでいた一人暮らしの若い女性が男女関係のもつれでもってベランダで首を吊って自殺した・・・梅雨の時期で発見されたとき女はずぶ濡れ状態だった。


と、いうことだったんですが・・・その後入った住人からは何も苦情が出ていなかったらしいんですよねぇ。


横内さんそれ聞いて思ったそうですよ、多分前に住んでいた住人はちゃんとしたサイズのカーテンを下げていたから気付かなかっただけなんじゃないかってねぇ。


あの女は絶対ベランダにいたはずで・・・

もし間違えて雨の日の夜中にカーテンを開けたりしたら・・・前の住人も必ずあの女を見たんじゃないかと。


横内さん、見えなきゃいいとは思えませんでね、どうしても気持ち悪いってんで、会社に交渉して・・・こういう理由だからと、マンションを変えて貰ったそうですよ。


・・・みなさんも、寝る前には戸締りと、カーテンはしっかり閉めて外から覗かれたりしないようにお気をつけ下さいねぇ。


今夜の怪談はここまでです・・・また次回、お会いいたしましょう。


それじゃまた。