流星の漫画家たち・常にレギュラーだった名選手「中島徹」① | 20世紀漫画少年記

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わたしの胸に生きている
 あなたの行った北の空
 ご覧なさいね 今晩も
 泣いて送ったあの空に
 流れる星は生きている
 

 

藤原てい『流れる星はいきている』より

 

 流れ星とは不思議なものである。閃光と同じ一瞬の光には違いは無いのにいつまでも心に残る。

 

 煌めく一瞬の光のように駆け抜け、そして読者の心に残る作品を残した漫画家はまさに流れ星のような存在なのかもしれない。

 

 当ブログではそんな漫画家たちを拙記事「流星の漫画家たち」で追悼いたします。そしてこれを私たちの心に残る作品を残してくれた漫画家たちに捧げたいと思います。

 

 

 

 2011年3月11日、この日は全ての日本人にとって忘れられない日となった。

 

 「東日本大震災」

 

 そしてその15日後、一人の漫画家がこの世を去った。

 

 「中島徹」

 1963年7月11日生まれ。神奈川県横浜市出身。1986年「増刊少年サンデー」で『恋の上体ひねり』でデビュー。代表作は『玄人のひとりごと』『 戦え!グリーンベレーくん 』『五月原課長のつぶやき』等

 

 

 「ビックコミックオリジナル」で22年間連載していた「このド素人がぁ!」でおなじみの『玄人のひとりごと』でご記憶の方も多いかもしれません。

 

 2011年の3月11日以来、毎年3月11日になると各メディアが「震災から○年」と報じるようになった。そしてその度に全ての国民が「あの日から○年経った」ことを実感するようになった。そして私は同時に「中島氏が亡くなって○年」と実感するようになった。

 

 中島氏は1986年、大学在学中に「週刊少年サンデー編集部」に『恋の上体ひねり』を持ち込み、同年「増刊少年サンデー5月号」に同作品が掲載されデビュー。

『恋の上体ひねり』  

 

デビュー当初はいかにも(当時の)サンデーちっくな絵柄だったことがわかる。同作品は『ギャンブル王子 嵐』5巻に収録されている。

 

 そして翌年「週刊少年サンデー・昭和62年40号」に『少年雀鬼 東』を読み切り掲載。続く「昭和62年42号」に続編を掲載。そして「週刊少年サンデー・昭和62年10月増刊号」より連載作品となる。 平行して『週刊少年サンデー』にも不定期に掲載された。  

 

『少年雀鬼 東』(1987年ー1990年)

 天才少年雀士「東  槓 (ひがし かん)」が様々な雀豪と麻雀勝負をする少年誌としては異例の麻雀漫画。後半になるとサンタクロースや閻魔大王や童話の登場人物や歴史上の人物と対局したり、麻雀五輪や麻雀甲子園などギャグ漫画らしい展開になっていった。後の氏の代表作である『玄人のひとりごと』の主人公「南倍南」が登場している。単行本は全6巻出ている。

 

 そして『少年雀鬼 東』連載中に「ビックコミックオリジナル・1988年7月20日第14号」にて 『南倍南勝負録 玄人のひとりごと』 を連載開始。

 

『南倍南勝負録 玄人のひとりごと』(1988年ー2010年)

「少年雀鬼 東」に登場した南倍南を主人公としたこの作品は「ビックコミックオリジナル」にて中島氏が病気療養に入る2010年まで22年間連載され氏の代表作となった。当初は「東」同様に麻雀ネタが中心だった。倍南が麻雀のみならずギャンブル全般・グルメ・レジャー・日常生活とあらゆる物事に通ぶり、赤っ恥かいたり、当人や関わった人間がヒドイ目にあう展開が人気となった。毎年年末にその年の話題を振り返る「十大ニュース」は同誌の名物となった。単行本は全11巻。

 

 

『ギャンブル王子 嵐』(1991年ー1994年)

 1991年より「増刊少年サンデー」にて連載開始。麻雀ネタに限定していた前作「東」と変わり、本作はギャンブル全般をネタにしている。前作と比べてレギュラーキャラも多く、嵐の学園生活が中心にストーリーが展開していたので、そういった意味では前作より少年誌らしい作品だった。最大の違いはヒロインが殆ど不在(最終巻に2回だけ東を好きな「牌原夕子」が登場している)だった前作と違い最初からヒロインがいたことだろう。同作品には中島氏のもう一つの代表作「戦え!グリーンベレーくん」の名物キャラ「ゴンダ先生」がレギュラーとして登場している。単行本は全5巻。

 

『きちんと軍配!』(1992年ー1994年)

 「少年雀鬼 東」で人気キャラだった東の祖父「東暗刻」を名前と設定を変え「ビックコミックオリジナル増刊号」で連載された。相撲漫画で唯一の行司が主人公の作品。「東暗刻」を「徳盛亀之丞」と変え大相撲の立行司という設定となっている。名前と設定は現実の大相撲の立行司「式守伊之介」がモデルと思われる。また同作品には同じく東の両親と祖母が名前を変えて登場しているが、東本人は出てこない。中島氏は相撲が好きだったようで「東」「嵐」「玄人のひとりごと」にも相撲ネタが扱われていた。単行本は全1巻。未収録作品がいくつかある。

 

 

『戦え!グリーンベレーくん』(1997年ー1999年)

 小学館の学年誌「小学5年生」で連載。グリーンベレー帰りの小学生コテツが軍用犬アンドレと共に繰り広げるドタバタギャグ漫画。「ギャンブル王子 嵐」に登場していた名バイプレイヤー「権田先生」がコテツの担任「ゴンダ先生」として登場している。ゴンダ以外にもスネ夫的キャラの「八奈小路」やその執事の「鴨居」など動き回るキャラが多い。学級委員で怪力のマツリちゃんは一応ヒロイン的キャラだがコテツに好意を寄せているわけではなく、主な役割はツッコミ役。2巻では転校する「山本君」に告白している。児童誌のギャグ漫画らしくチンチンネタなどの下ネタも多かった。単行本は全2巻。

 

 

『五月原課長のつぶやき』(1999年ー2009年)

 やることなすこと全て裏目に出る営業二課の課長・五月原清隆の天然セクハラによる騒動を描いたコメディ漫画。主人公の名字「五月原」は「さつきばら」と読むが、タイトルでは「セクハラ」と読む。「ビックコミック」で連載。連載は10年に渡り、「玄人のひとりごと」に次ぐ長期連載作品となった。「玄人のひとりごと」同様に年末になるとその年の話題を振り返る「十大ニュース」の回があり同誌の名物にもなった。単行本は全6巻。ただし単行本は巻数ではなく、それぞれの巻に副題が付いている。

 

 アニメや映画・ドラマ化した作品は無いが、代表作である「玄人のひとりごと」は「ビックコミックオリジナル」(小学館)で22年間連載され、同誌のギャグ部門を支える重要な柱となった。

 

しかし氏が特筆されることがもう一つある。

 

それは

 

全ての連載が数年やっていた

 

ことであろう。