盗作漫画の世界・漫画のトレース問題 | 20世紀漫画少年記

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 漫画の世界ではごくたまに盗作が問題になる。一口に盗作と言っても、それはネタだったり設定だったりタイトルだったり絵柄やタッチだったりと様々だが、近年問題になるのはやはり「トレース」であろう。

 

 ちなみに「トレース」とは「なぞる」や「追跡する」や「写す」という意味で要するに「丸写し」なのであるが、そうした漫画のトレースで現在ネットで有名なのは「メガバカ」(豪村中)「エデンの花」(末次由紀)「クロスハンター」(カイマコト)の3作品(いずれも講談社)。

 

 「メガバカ」は2007年12月12日に発売された「週刊少年マガジン」の増刊号「マガジンドラゴン」の新人マンガ賞「ドラゴンカップ」にエントリーされた作品で発売直後に「DEATH NOTE」(大場つぐみ/小畑健)「天上天下」(大暮維人)からのトレースが発覚。作品は「ドラゴンカップ」から除外され、編集部は「マガジン」本誌にお詫び広告を出した。その後も他のコマからも盗用が発見され、情報をまとめたサイト「メガバカ盗作検証画像倉庫@ウィキ」

https://www33.atwiki.jp/megabaka/

では全ページから盗用が確認できる。

 

「エデンの花」は 2000年から2004年に『別冊フレンド』に連載された作品で2005年にネット上で「スラムダンク」(井上雄彦)からの多くのトレースを指摘され、同年10月中旬に作者の末次由紀氏が謝罪。講談社は該当作品のみならず、末次由紀氏の全作品の単行本を回収・絶版。当時連載されていた別作品の連載も中止した。以後2年間、末次由紀氏は活動を停止していた。

「末次由紀氏盗作盗用検証用画像置場 」

https://blog.goo.ne.jp/yuki155misaki

 

「クロスハンター」は 2000年にコミックボンボンの読者参加型ゲームソフト制作企画『史上最強のRPG計画』において開発されたゲームのコミック版で2001年に同誌で連載された。 しかし2005年に入り数々の作品のトレースが発覚。 演出や作風が「ドラゴンボール」(鳥山明)「ベルセルク」(三浦建太郎)「ストリートファイター」(中平正彦) からのトレースで大部分を占めていることが判明。現在では「ドラゴンボール」のパクリ作品としてネットで有名になった。

「ドラゴンボール」のパクリ作品、盗作、トレース作品「クロスハンター」がネット上で話題に。」

https://matome.naver.jp/odai/2144465178550441001

 

 こうしたトレース・盗用への指摘はネットが普及した2000年代から多く見られるようになり、竹熊健太郎氏が言うように 「今は漫画家にとっては恐ろしい時代。ネットの複数の人間がよってたかって検証を始め、あっという間に元ネタが丸裸にされる。全体をみると価値がある作品でも、一部が模倣やトレースだとネットでは盗人扱い。人間性まで否定されるくらいバッシングを受ける」 ようになった。

「「漫画トレースもお互い様だが・・・・」竹熊健太郎氏が語る、現場と著作権法のズレ」

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0804/16/news075.html

 

 竹熊氏は更に「 構図や絵のトレースは、ほめられたことではない話かもしれないが、漫画の歴史にはざらにある話。末次さんはちょっと極端にトレースはしているが、この人がだめならあの先生はどうか、ということになる 」と述べている。

 

 確かに上記の3作品の場合は度が過ぎているところがあるが、手元に適切な資料がない場合、他の著作者の作品や雑誌の写真を参考にすることはあるだろう。あまり厳しすぎると「偶然の一致」を恐れ、作家の創作活動を委縮しかねない。後進の漫画家が先人の漫画家の手法を真似して、そこから更に発展した手法を生みだし、それによって漫画制作の世界が発展していったのも事実である。

 

 とは言うものの、他作品のトレースや(権利者がいる)写真の模写が著作権法違反になるのもそれもまた事実である。次回はそんな例を指摘したい。