『悪魔を見た』

【キャスト】
イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、チョン・ググァン、チョン・ホジン
【監督】
キム・ジウン
“映画史上最も強烈な比類なき復讐劇!”
ある夜、雪の夜道で車がパンクし、レッカー車の到着を待っていた若い女性が黄色いスクールバスに乗った男に連れ去られた。

地元警察は大規模な捜索を開始するが、まもなく川底から切断された頭部が発見される。
人間の所業とは思えぬこのおぞましい殺人事件の被害者は、引退した重犯罪課の刑事チャンの娘ジュヨンだった。
一ヵ月前にジュヨンと婚約したばかりの国家情報院捜査官・スヒョンは、最愛の女性を救えなかった自分のふがいなさを何度も呪う。

深い絶望感に苦しむ彼は、自力で犯人を追い詰める決心をする。

スヒョンはチャンが入手した捜査資料をもとに、ギョンチョルという中年男が犯人だと特定。
ギョンチョルとは血も涙もない凶行を繰り返し、ひたすら快楽のみを貪り尽くす常軌を逸した男。
良心のかけらも持ち合わせていない悪魔そのものだった。

スヒョンは彼女を殺した男に同じ苦しみを与えるため、恐ろしく冷酷な報復を誓う。
残虐な殺人鬼に復讐することは、彼自身も悪魔になることだとしても……。

ギョンチョルのネグラを突き止め叩きのめしたスヒョンは、その場ではとどめを刺さず、GPSカプセルを飲みこませて解放するのだった。
「これからだ。もっともっと残酷になる」

こうしてスヒョンの復讐劇が幕を開けるが……。

血も涙もない凶行を繰り返す猟奇殺人鬼と、最愛の婚約者を殺された男の熾烈な攻防と復讐劇を描くサイコ・スリラー。
冒頭からメチャ怖い。
雪が降りしきる真夜中の寂しい道で、パンクのため車に缶詰状態の若い女性。
不安を押し殺すように婚約者と(本作の主人公、スヒョン)電話で話していると……一台の車が止まり、男が降りてくる。
「どうしました?パンクですか?私が見てあげましょう」
「大丈夫、レッカー車を呼びましたから」
「でもこの雪だ。時間がかかりますよ」
この様子を電話で知ったスヒョンは彼女に言う。
「相手にするな。絶対に車から降りるなよ」
この時点でのスヒョンは、どこかの男が彼女をナンパでもしていると思っていたのか、さほどの危機感は持たず電話を切って仕事に戻っていく。
一方、男の方も車に戻っていくも……なぜか車は動く気配がない。
彼女の不安がピークに達したその時、いきなり男は鉄パイプで窓を叩き割るや侵入してきて彼女を執拗に殴り続けるのだ!
この男こそ、本作のもうひとりの主人公、シリアルキラーのギョンチョルである。
ギョンチョルは顔面血まみれの彼女をネグラへと拉致し、両手を鎖で縛り付け……と大きなナタを手にする。
「殺さないでください」
「心配するな。すぐに済む」
「お願いします……お腹の中には赤ちゃんがいるんです」
彼女の命請いも虚しく、ギョンチョルはナタを無造作にグサッ!
凄まじい導入部としか言いようがない。
その後はスヒョンの復讐劇と相成るワケだが、復讐の機会は映画が始まって1時間も経たないうちに訪れ、ギョンチョルは半殺しの目に遭ってしまう。
残りはまだ1時間半近くもあるのに、これはどうなるのか?……と思いきや、これは復讐劇の序章にしかすぎなかった!
失神したギョンチョルの体の中にマイク付きのGPSチップの入ったカプセルを飲ませ解放するのだ。
そしてギョンチョルが犯行に及ぼうとするたびにふらりと現れ、ボコボコにするわ、腕を粉砕するわ、アキレス腱まで切るわなどの残虐な制裁を加えていく。
こんなキャッチ&リリース状態の鬼ごっこが延々としつこく繰り広げられる。
それにしても、ギョンチョルは街中をウロウロしまくっているのに、警察は何をやっているんだってくらいのダメダメぶり。
一方、スヒョンは完全無欠の強さと類い稀なる行動力でギョンチョルを肉体的にも精神的にも追い詰めていくも……。
ギョンチョルは、呆れ返るくらいの超タフネス男だったりもする。
アキレス腱を切られても応急処置しただけで歩いてしまうし、鉄パイプで頭をボコボコに殴られて血が噴き出しても何のそので、すぐに元気を取り戻し……匿ってくれた仲間の女とちゃっかりエッチまでしてしまう。
有り得ないくらい元気すぎるぞ、このオッチャン!
最も衝撃的なのは(?)体の中にGPSチップがあることを知ったギョンチョルが下剤を飲んでそれを見つけ出すシーンだ。
便器の中に溜まっている汚物をなんとドアップで映し出す……それが色といい、緩く出た感じといい、本物にしか見えないくらい超リアルなのだ( ̄□ ̄;)
しかも素手でまさぐってチップを発見し……なぜかクンクンと臭いまで嗅ぐ


リアルすぎる描写に唖然(笑)。
設定的にはかなり無理がある展開ですが、インパクトだけはあるので強引にグイグイと引き込んでいく演出のパワーに脱帽。
グロい描写も強烈だが、恨みや憎しみといった感情の描き方もハンパない。
勧善懲悪とはかけ離れたまさに悪魔と悪魔の対決だ。
それにしても、この作品に於けるギョンチョルは、とんでもない鬼畜キャラだ。
女は犯してから殺した挙げ句にバラバラにして捨て、男は即座に殺す。
こんな鬼畜の悪魔野郎に情けはいらないと対抗するスヒョンも、ありとあらゆる方法で復讐を敢行するうちに自らも悪魔と化していくのですね。
最後はギョンチョルが自首しようとしているところをかっさらい、法の裁きを受けさせようとはせず、あくまでも自分の手でで決着をつける!
その執念は凄まじすぎる……が、ラストで慟哭する姿からは虚しさだけが漂ってもいる。
チェ・ミンシクが異様に怖い!まさに鬼気迫る怪演。
甘いマスクのイ・ビョンホンが残虐行為を繰り返す様は、たとえ復讐とはいえ常軌を逸していてこれまた怖い。
息の詰まるような攻防の末、善悪を超越した人間の執念と驚愕のラストに背筋がゾクッ!
とにかくここまで徹底した復讐劇を見せられたら、もう拍手喝采するしかない!?