エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて -36ページ目

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』


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【出演】
設楽統、片瀬那奈、螢雪次朗、村上航、尾上寛之、鈴木砂羽、日村勇紀、杉作J太郎、平田満、前田健、モト冬樹、堀部圭亮、大石吾朗、徳永えり、北尾トロ、阿曽山大噴火


【監督】
豊島圭介




“ちょっと不謹慎、けれどポップでタメになる”




美人映画プロデューサーの須藤光子から依頼された‘愛と感動の裁判映画’の脚本を書くために、三流ライターの南波タモツは、生まれて初めて裁判所に足を踏みいれる。

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ところが法廷には、映画のようにドラマチックな‘愛と感動’どころか……。


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収穫した大根の大きさをめぐって友人を大根で撲殺した真面目なサラリーマン。

「歯が痛くて覚醒剤を打った」と泣きわめくシャブ中の女。

痴漢事件の裁判に社会見学で傍聴に来た女子高生たちの前で正義の味方をを気取りつつ、聞きようによっては卑猥すぎる医学用語を乱発して被告を罵倒する裁判官。

はたまたAV3本万引犯やら……突っ込みどころ満載のワイドショーのネタにもならないものばかり。


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そんな中、傍聴席で知り合った傍聴マニアの西村、谷川、永田たち‘ウオッチメン’のメンバーと行動をともにすることとなったタモツ。


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ある時、法廷内でさながらSM女王のごとき(!)の美人鬼検事・マリリンこと長谷部真理からタモツは、きつい言葉を浴びせられてしまう。


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「さぞかし楽しいでしょうね。他人の人生を高見の見物して!」


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傍聴人、裁判官、検察官、弁護士、裁判員、被告人……法廷という舞台で繰り広げられる様々な人間模様を描いた法廷コメディ。



映画の脚本を書くための参考で裁判所に足を踏み入れた売れないライターが、おかしな仲間との交流を通して傍聴の楽しさを知っていくという……事件の裁判に群がり、ライブ感覚で傍聴する人々をキツく笑い飛ばしている。


ウオッチメンが無実を確信し密かに応援していた被告人が、まさかまさかの大どんでん返しで罪を認めてしまうとは……。


それからマリリンが子持ちだったことを知ったタモツでしたが、そこから何らかの展開が生まれるのかなと思ったら、ただそれだけで終わっちゃった。


金髪スカート男の阿蘇山大噴火が傍聴マニアそのまんまの役で出ていたり、杉作J太郎がヤクザの被告人役で登場するなど、なにげにサブカル臭が漂っているあせるあせる


バナナマンの設楽の微妙にすっ惚けた演技も可笑しい。

一方、相方の日村は反則スレスレの(?)顔芸で笑いを誘う。


全体的に中途半端な作りでちょっと物足りなさを感じましたが、エンディング曲でなんとバービーボーイズの「ごめんなさい」が使用されている!

これだけでも多少、満足度はアップか?!あせるあせる


『エクスペリメント』


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【キャスト】
エイドリアン・ブロディ、フォレスト・ウィテカー、キャム・ギガンデット、クリフトン・コリンズJr.、マギー・グレイス 

【監督・脚本】
ポール・シェアリング




“わずか6日で中止になった実在の心理実験”




平和主義者でデモに参加するトラヴィスは職を失ったばかり。

恋人とインドへ旅行するため、日給1,000ドルで14日間ある実験に参加すれば高額報酬がもらえるという被験者募集の広告をみて選考に参加することに。


温厚で人当たりの良いバリス、冴えないグラフィック・ノベル・ライターのベンジー、女好きのチェイスら個性的な24人の男たちがトラヴィスとともに選ばれた。


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その実験は単純なものだった。
刑務所と同じ環境で‘看守役’と‘囚人役’に分かれ、ルールに沿って過ごすこと……それだけだ。


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但し、途中で脱落した者やルールを破った者、暴力を振るった者がひとりでも出た時は、その時点で実験は中止。且つ、連帯責任で報酬は支払われない。


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始まりはただの役割に過ぎなかったが、2日目には崩壊。

対立する囚人役のトラヴィスと看守役のバリス。


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日ごとに極限状態に置かれていく彼ら。

実験が進むうち、看守役たちは囚人役たちに暴力を振るうようになる!


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やがて、理性が狂っていき事件が起きる!
それを見守る多数の監視カメラ。
いったい何が起こったのか?


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『es [エス]』の元ネタにもなった1971年にアメリカのスタンフォード大学で実際に行われた「スタンフォード監獄実験」を題材にしたサスペンス・スリラー。



被験者が刑務所と同じ環境で看守役と囚人役に分かれ、14日間を過ごす心理実験の結末が描かれる。


特殊な環境に置かれた場合、人間はどうなっていくのか……という非人道的な実験。

まったく普通の人なのに、服装を皮切りに、場所や設定をそれなりにすると、やがては支配する者、される者の人間関係がその通りになってくる恐ろしさ。

普通の人、善良な人、小心者などがその環境下では、まるっきり変わっていき、直接的な暴力がNGでも、その代わりに屈辱を与えたり恐怖を与えたりして支配者が被支配者を操ることができることも判明する。


普段、抑圧された生活を送っている人間が、看守という囚人を抑圧する側に回ったことで‘規律を守るため’という名目のもと、冷酷な行ないを平気でするようになっていく姿は衝撃的。


看守役として凄まじい演技を見せるフォレスト・ウィテカーの物語前半、中盤、最後の表情のコントラストに注目を。
別人のような変貌ぶりです。


ドラマ『ピースボート』にも影響を与えた(ていうかパクりまくってた)この作品、といっても元をただせばこれも『es』に誘発されて作られた作品なワケですが……。



それにしても‘フライング・マン’を殺してしまった看守役の連中は、お咎めなしだったのかな?

『武士の家計簿』


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【出演】
堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、草笛光子、西村雅彦、藤井美菜、嶋田久作、宮川一朗太、小木茂光、中村雅俊


【監督】
森田芳光




“激動の時代を、知恵と愛で生き抜いた家族の姿が、168年前の実在の〈家計簿〉から、今、よみがえる”




江戸時代後半。
御算用者として、代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家。

八代目の直之は、生来の天才的な数学感覚もあって働きを認められ、めきめきと頭角をあらわす。


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これといった野心も持たず、与えられた職務を全うするべく、ただひたすらそろばんを弾き、数字の帳尻を合わせる毎日。


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その姿は、周囲の者が「そろばんバカ」と呼ぶほどだった。


そんな直之に、町同心・西永与三八の娘のお駒との縁談話が持ちこまれ……やがて結婚。


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そろばんを手に、直行は、
「これしか生きる術がない、不器用で出世もできそうもない……それでもいいか」
「生きる術の中に、私も加えてください」


御蔵米の勘定役に任命された直之は、城の役人たちが経理の不正をして私腹を肥やしていることを知るが、口封じのために左遷を言い渡されてしまう。

しかし、一派の悪事が白日の下に曝され人事が一新、左遷の取り止めに加えて異例の昇進を言い渡される。


直之の昇進は名誉ながらも、身分が高くなるにつれ出費が増える……という武家社会特有の構造からますます出費のかさむ猪山家。
すでに父・信之が、江戸詰で重ねた膨大な借金もある。

そんな折、息子の直吉が4歳になり開かれる‘着袴の祝い’を目前に、家計が窮地に追い込まれていることを知る。
その借金総額銀6000匁!

嫡男を武士として内外に示す盛大なお披露目……それには更なる出費がかかる。


直之はお駒とともに知恵を絞り‘絵鯛’を祝膳に欠かせない‘鯛’の塩焼きに見立てるのだった。


宴の後、責める父母の前で、直之は‘家計立て直し計画’を宣言。

それは家財一式を処分、質素倹約をし、膨大な借金の返済に充てるという苦渋の決断だった。


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世間の目を気にする父、愛用の品を手放したくないと駄々をこねる母・お常。

「お家を潰す方が恥である!」

直之の強い意志により、家族は一丸となって借金を返済することを約束する。

こうして、猪山家の家計簿が直之の手で細かくつけられることになった。


近所の者や同僚などの好奇の目に曝されながらも、倹約生活を実行する猪山家の人々。

塗りの弁当箱は竹皮に、囲碁の碁石は貝殻に……質素倹約の知恵はそのまま勤めにも生かされ、藩主・前田斉泰をも喜ばせることになる。


「貧乏と思うと暗くなりますが、工夫だと思えば楽しいです」

厳しい暮らしの中で、とりわけお駒は、直之の一番の理解者として、明るく献身的に家を切り盛りするのだった。


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そんな生活の中、直之は直吉にも御算用者としての道を歩ませるべく、4歳にして家計簿をつけるよう命じ、徹底的にそろばんを叩き込んでいくが、それはお駒の目から見ても厳しすぎると思えるほどのものだった。


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やがて時は幕末。
父の英才教育のおかげもあって、11歳で算用場に見習いとして入り、元服を済ませた直吉、改め成之は、時代に取り残されまいと自らの進むべき道を模索していた。

しかし彼の目には、父の平時と変わらない泰然とした様子がもどかしく映り、激しくぶつかるのだった。

父子の間の葛藤が解消されないまま、攘夷の下、前田家嫡男・慶寧に従って京都へと向かった成之。
そこで彼は新政府軍の大村益次郎にそろばんの腕を見込まれ、軍の会計職に就くことになる……が、大村が暗殺され、共に殺された加賀者がいたという知らせが届き、猪山家は不安に包まれる。

息子の身を案じ、京都へ向かおうとするお駒をなだめる直之。

堰を切ったように成之への想いを切々と訴えながら慟哭するお駒の姿は、ただひたすらに子を思う母のそれであった。

直之は胸をつかれ、そんな彼女を抱きしめるのだった……。


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激動の時代を世間体や時流に惑わされることなく、つつましくも堅実に生きた猪山家三世代にわたる親子の絆と家族愛を描いた物語。


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古書店で偶然発見された家計簿。
日々の買い物、親戚付き合い、子供の養育費、冠婚葬祭……等々、家計簿から蘇る幕末に生きた下級武士一家の暮らしぶり。

その家計簿をモチーフに、体面を重んじる武士の世にあって、世間の嘲笑を浴びながらも、知恵と工夫で日々の暮らしを前向きに乗り越えようとする猪山家の暮らしと、見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした熱い思いが綴られていきます。


猪山家の生き方は、様々な社会問題に直面している現代を生き抜くためのヒントを教えてくれるような……そんな感じを受けました。


時代劇ですがチャンバラシーンは皆無。
主人公は刀の代わりに、‘そろばん侍’としてそろばんをひたすら弾きまくる。
(ちなみに森田作品でそろばんといえば……『そろばんずく』がパッと頭に浮かびます)


そろばんとともに生き、そろばんとともに一生を終えた直之の生き様が心に響く渾身の一作でした。