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エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『ヨコハマBJブルース』


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【出演】
松田優作、辺見マリ、蟹江敬三、田中浩二、山田辰夫、山西道広、鹿沼えり、清水宏、岡本麗、財津一郎、安岡力也、殿山泰司、戸井十月、奥村公延、馬渕晴子、宇崎竜童、内田裕也


【監督】
工藤栄一




“優作、お前と会うのが楽しみだ!ガッデム、今度は何をやらかすか!?”




港ヨコハマ、うらぶれたストリート。
売れないロックシンガー兼私立探偵が、ちょっとばかしダーティーな事件に首をつっこんだ!


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横浜に住むBJは、毎晩場末のうらぶれたバーで歌っているロックシンガー。


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だが歌だけでは食えない状態で、生活のために私立探偵紛いな副業でセコイ小銭を稼いでいる。


そんなある日、BJはある女性から失踪した息子・明の行方調査を依頼される。


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調査の末、‘ファミリー’と呼ばれる非合法組織に辿り着く。

彼らはゲイ集団でもあり、明はボスの牛宅麻の男娼となっていた。

BJはそこでファミリーの裏側を探っているものだと勘違いされてしまい……。


翌日、BJはニューヨーク時代の親友で刑事の椋と久々に再会。

BJは椋から「自分もファミリーから狙われている」という話を打ち明けられる。

「警察とファミリーは裏で繋がっているようだ。俺は刑事を辞める。その前にその内幕を暴露する」

とその瞬間、
「危ない!」
椋はいきなりBJを突き飛ばす。

椋はBJの目の前で何者かに射殺されてしまう!?


BJを何故か快く思っていなかった椋の同僚刑事・紅谷から殺人容疑をかけられて、取り調べと称した烈しいリンチを受ける。


容疑をかけられ、自ら犯人捜しに乗り出すBJ。


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更に牛からも麻薬取引で運営している組織のメカニズムに触れたと見なされて命を狙われ、BJは窮地に陥るが……。


しかし事件の裏には、女と刑事の醜い策略があった……。




横浜の街でブルース・シンガー兼私立探偵を営むBJが、麻薬取引の絡む暴力団のいざこざに巻き込まれていく姿を描く、松田優作原案のハードボイルド・ムービー。


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優作演じるロックシンガー兼私立探偵BJ。
オープニングは、BJがトイレの便座にしゃがんで○○○をしながら、カレーを食べ、ビールをグビグビ飲む。

何とも汚いお下劣なシーン……でもこれがメチャメチャかっこいいのだ!
ていうか、優作なら何をやってもかっこいいのだが。

次にはヨコハマの街をひた走るBJの姿が映し出され、彼はバーに駆け込む。

「遅刻だぞ。早く歌えよ」
と強面のマスター。(演じるは宇崎竜童だ!)

「まだ客なんかロクにいねえだろ」

そして……ステージに立ち「灰色の街」を歌うBJ。

冒頭から鳥肌モノの痺れるシーンです。


やがてライヴを終えたBJはバンドのメンバーと別れ、ひとり徒歩でネグラに帰る。

こんなくだりがある。
「車は?」
「持ってませんよ」
「じゃあ、いつも徒歩か?」
「ええ」
「そいつは体にいいや」
「……まあ」

「歌だけで食っていけんのかい?」
「いつも歌ってるバーでメシを食わせてもらったり……あとはたまにチップをもらうくらいですね。だから探偵で小銭を稼いでるんですよ」

車もなく、着ている服も黒いコートにマフラーと同じものばかり。
カツカツの生活を送っているBJなのだ。

しかし女には全く不自由していない様子で、情報屋から「どこに連絡すればいい?」と問われると、やおら幾つも束ねた鍵を取り出し、
「適当に選んでくれ」
「じゃあ、これ」
「よし、この女のところにいる」


が、何人も女がいる割には、BJが女と寝るシーンは一度も出てこない。

女から誘ってきても、寝不足を解消するためにベッドを借りるだけだったり、闇の女医者に‘ポン’を打ってもらうだけだったりなど、彼にとっての多数の女は、単に利用価値があるから付き合っているだけのようだ。

唯一の濡れ場でも……
「欲しけりゃ俺のボトル飲ませてあげてもいいんだよ……欲しいか?」
と女を興奮させて起きながら、情報を聞き出すや、あっさりと……
「この続きはまた後でな」

実はBJはゲイ?(少年愛?)と解釈できるくだりもあります。



ストーリー的に、やや分かりづらい点は否めないものの、ヨコハマの情景描写や、BJのうらぶれた味わいが秀逸で魅了されてしまう。


それと優作が歌うシーンだけでなく、劇中でもバックに数曲流れるので、このあたりも優作ファンにはたまらない逸品です!
「灰色の街」「ブラザーズ・ソング」「マリーズ・ララバイ」そして名曲中の名曲「YOKOHAMA HONKY TONK BLUES」



この作品での優作は、終始シリアスモードで『探偵物語』でのような軽やかでコミカルな演技は一切なし。


決して一般受けはしないパーソナルな内容だけれど、優作ファンの間では絶大な人気を誇る本作。
渋い、かっこいい、泣ける、言うことなしのハードボイルドだ!

ちなみに『ロング・グッドバイ』のパクリではないかとの声も上がったようですが、優作自身も公開当時のインタビューにて、「話のヒントにした」とあっけらかんとした調子で公言していたらしいです。



東映セントラルフィルム製作で、優作主演の作品としては『最も危険な遊戯』から数えて5作目である1981年公開の『ヨコハマBJブルース』。
優作自ら原案を務め、スタッフ、キャストもお馴染みのメンツが集結しているのもたまらない。

製作・黒沢満、脚本・丸山昇一、撮影・仙元誠三。
キャストも裕也さん、力也さん、山西さん、宇崎さん。

優作ファミリー勢揃いみたいな。



ところで今回、超久々に観て感じたこと。

ちょっとした表情とか目の雰囲気などが……一瞬、松田龍平かと錯覚してしまう時があった。

当時、優作31歳。現在、龍平28歳。
もうたった3歳しか違わないんですね。
松田龍平が歳を重ねる毎に、ますます優作に似てきていると感じる。

『ハゲタカ』で松田龍平と共演した大森南朋が、龍平の無精髭姿を見て、「『ヨコハマBJブルース』の時の優作さんにソックリだなと思った」と語った……という話もある。

確かにこの作品での優作は驚くくらい龍平と(あ、この場合は逆か)瓜二つです。



『好きだ、』


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【出演】
宮崎あおい、西島秀俊、永作博美、瑛太、小山田サユリ、野波麻帆、加瀬亮、大森南朋


【監督・脚本】
石川寛




“その言葉を17年前に忘れてきた”




お互いが相手に対して好意を持っているにもかかわらず、「好きだ、」という一言を言えない二人。


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17歳のユウとヨースケは、同じ高校のクラスメート。

ヨースケは、いつも放課後になると川辺でギターを弾いている。


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まだまだ下手で、同じところばかり弾くギターのメロディを聞いていて、ユウも自然と曲を覚えてしまった。

ヨースケの弾くギターのフレ一ズをロずさむユウ。


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そんなユウは姉がいる。
半年前に大切な人を亡くした姉をユウも、そしてヨースケも心配していた。


ある日、ヨースケがユウの姉を川辺に誘った。

帰ってきた彼女は、ヨースケのあの曲を口ずさんでいた。


そんな時、ヨースケはユウにこう訊く。

「高校ん時、お姉さんはブレザーだったの?それともセーラー服?」
「セーラー服」
「ふぅん、そっか……」


その翌日、姉のセーラー服を着て登校してくるユウ。

二人の感情は、近づき、もつれ、また惹かれ……。


しかし、ある哀しい出来事が起き、二人の関係は断ち切れてしまう。


それから17年、東京で偶然に再会する34歳のヨースケとユウ。


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二人は17年間の空白を埋めるように、再び惹かれあう。


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変わってしまうことと、どうしても変わらないこと。


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17年前に忘れてきた言葉を果たして伝えることができるのだろうか……。




川辺でいつも同じ部分をギターで弾くヨースケとその同級生で密かに想いを寄せるユウの17年間に渡る恋を2部構成で描いたガール・ミーツ・ボーイのラブストーリー。



好きな相手に、想いを伝えることが出来ない。
誰もが経験する、その感情を見事に映像に定着させ、ラストでユウが遂に口にする言葉……「好きだ、」


素直に自分の気持ちを言い表せないユウと、そのユウからの好意を真っ直ぐに受け入れられない無骨さと繊細さを併せ持つヨースケ。

17歳篇はユウ、34歳篇はヨースケと主体となる視点が変わって描かれていき、キャスティングも宮崎あおい→永作博美、瑛太→西島秀俊へとチェンジ。


同級生のヨースケに惹かれながら、素直に気持ちを伝えられない17歳の少女の心の内を宮崎あおいが好演。
瑞々しく見せる繊細な演技は、思春期にある不安定ながらも真っ直ぐな気持ちを思い起こさせてくれます。

ヨースケ役の瑛太は、少年ならではの戸惑いを見事に表現。

そして17年後、34歳になったふたりを演じるのは西島秀俊と永作博美。

ふたりとも、17歳のユウとヨースケからの違和感を全く抱かせない。(絶妙なキャスティング!)


少年少女が惹かれ合いながらも、いま一歩の距離を近づけないもどかしさ、ユウの姉の存在、想いを伝えられなかった相手との再会。
誰もが心の隅にあるだろう淡い感情を静かに優しく掬い取ったあたりも素晴らしい。

また、とてもゆったりと流れる時間、澄んだ青空の色、土手の緑、自然の音……ほんのりほろ苦くて優しい気持ちにすらなれるような空気感が心地良くもある。


あまりに自然すぎる台詞のやり取り、ほとんど起伏のないストーリー展開、無駄に長いとも思えるカットなど、一歩間違えると退屈極まりない内容だけれど、いつしか画面から目が離せなくなってしまう不思議な魅力を持った作品でした。


現場では台本なし、キーワードだけが渡されるという独特の方式で撮影されたらしく、アドリブで演じる役者陣の自然な姿は、それぞれの登場人物のリアルな息遣いやストレートな感情が痛いくらい伝わってきて、透明感に溢れてもおり、グイグイ引き付けられてしまいます。



これは‘その場の空気感’で勝負した映画です。

好きだ、こういう映画。


地元の図書館では年に一度、古い雑誌の処分コーナーが作られていて何冊でも自由に持ち帰りOKなので~今年も大量に貰ってきちゃいました。


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2008年のキネマ旬報!



そしたら、こんな写真が~~


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仲さん、若い(笑)。

今よりも顔がかなりポッチャリしてますね(^^;


『純喫茶磯辺』の特集記事も載っていた。


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