
【出演】
宮崎あおい、西島秀俊、永作博美、瑛太、小山田サユリ、野波麻帆、加瀬亮、大森南朋
【監督・脚本】
石川寛
“その言葉を17年前に忘れてきた”
お互いが相手に対して好意を持っているにもかかわらず、「好きだ、」という一言を言えない二人。

17歳のユウとヨースケは、同じ高校のクラスメート。
ヨースケは、いつも放課後になると川辺でギターを弾いている。

まだまだ下手で、同じところばかり弾くギターのメロディを聞いていて、ユウも自然と曲を覚えてしまった。
ヨースケの弾くギターのフレ一ズをロずさむユウ。

そんなユウは姉がいる。
半年前に大切な人を亡くした姉をユウも、そしてヨースケも心配していた。
ある日、ヨースケがユウの姉を川辺に誘った。
帰ってきた彼女は、ヨースケのあの曲を口ずさんでいた。
そんな時、ヨースケはユウにこう訊く。
「高校ん時、お姉さんはブレザーだったの?それともセーラー服?」
「セーラー服」
「ふぅん、そっか……」
その翌日、姉のセーラー服を着て登校してくるユウ。
二人の感情は、近づき、もつれ、また惹かれ……。
しかし、ある哀しい出来事が起き、二人の関係は断ち切れてしまう。
それから17年、東京で偶然に再会する34歳のヨースケとユウ。

二人は17年間の空白を埋めるように、再び惹かれあう。

変わってしまうことと、どうしても変わらないこと。

17年前に忘れてきた言葉を果たして伝えることができるのだろうか……。
川辺でいつも同じ部分をギターで弾くヨースケとその同級生で密かに想いを寄せるユウの17年間に渡る恋を2部構成で描いたガール・ミーツ・ボーイのラブストーリー。
好きな相手に、想いを伝えることが出来ない。
誰もが経験する、その感情を見事に映像に定着させ、ラストでユウが遂に口にする言葉……「好きだ、」
素直に自分の気持ちを言い表せないユウと、そのユウからの好意を真っ直ぐに受け入れられない無骨さと繊細さを併せ持つヨースケ。
17歳篇はユウ、34歳篇はヨースケと主体となる視点が変わって描かれていき、キャスティングも宮崎あおい→永作博美、瑛太→西島秀俊へとチェンジ。
同級生のヨースケに惹かれながら、素直に気持ちを伝えられない17歳の少女の心の内を宮崎あおいが好演。
瑞々しく見せる繊細な演技は、思春期にある不安定ながらも真っ直ぐな気持ちを思い起こさせてくれます。
ヨースケ役の瑛太は、少年ならではの戸惑いを見事に表現。
そして17年後、34歳になったふたりを演じるのは西島秀俊と永作博美。
ふたりとも、17歳のユウとヨースケからの違和感を全く抱かせない。(絶妙なキャスティング!)
少年少女が惹かれ合いながらも、いま一歩の距離を近づけないもどかしさ、ユウの姉の存在、想いを伝えられなかった相手との再会。
誰もが心の隅にあるだろう淡い感情を静かに優しく掬い取ったあたりも素晴らしい。
また、とてもゆったりと流れる時間、澄んだ青空の色、土手の緑、自然の音……ほんのりほろ苦くて優しい気持ちにすらなれるような空気感が心地良くもある。
あまりに自然すぎる台詞のやり取り、ほとんど起伏のないストーリー展開、無駄に長いとも思えるカットなど、一歩間違えると退屈極まりない内容だけれど、いつしか画面から目が離せなくなってしまう不思議な魅力を持った作品でした。
現場では台本なし、キーワードだけが渡されるという独特の方式で撮影されたらしく、アドリブで演じる役者陣の自然な姿は、それぞれの登場人物のリアルな息遣いやストレートな感情が痛いくらい伝わってきて、透明感に溢れてもおり、グイグイ引き付けられてしまいます。
これは‘その場の空気感’で勝負した映画です。
好きだ、こういう映画。