
【出演】
岡田将生、榮倉奈々、原田泰造、松坂桃李、鶴見辰吾、檀れい、染谷将太、柄本明、堀部圭亮、吹越満、津田寛治、宮崎美子、洞口依子、諏訪太朗、渡辺真起子、江口のりこ、斎藤洋介
【監督・脚本】
瀬々敬久
“君に出会えたから、ひとりじゃないと思えたから、もういちど、生きたいと思った”

僕は、親友を二度殺した。そして……壊れた。

高校時代に親友を‘殺した’ことがきっかけで、心を閉ざしてしまった永島杏平。
そんな杏平は父親の紹介で遺品整理業‘クーパーズ’で働くことになる。
遺品整理業とは、遺族に代わって故人の部屋を片付ける仕事。
「荷物を片付けるだけじゃなく、遺族が心に区切りをつけるのを手伝う仕事だ。言ってみたら遺族のプロだ」
クーパーズの社長、古田はそう言って杏平を迎えた。
先輩社員・佐相、そして久保田ゆきとともに現場に向かった杏平。

死後1ヶ月以上経って遺体が発見されたその部屋では、ベッドは体液で汚れ、虫が黒いチリのように部屋中に散乱していた。
最初は誰もが怖気づくという現場に、杏平は黙って向き合う。

ゆきに遺品整理のやり方を教わっている最中、ゆきの手首にリストカットの跡を見つける。
「そんなに珍しい?永島君だって、病気だったんだよね」

三年前……生まれつき軽い吃音があり、緊張するとなかなか言葉が出てこない杏平は、高校時代、同じ山岳部の松井たちに陰でからかわれていた。
同級生たちは、表面では仲が良いふりをしながらも、どこかイライラし、見えない悪意の中で毎日を過ごしていた。
そんな中、松井による陰湿ないじめと周囲の無関心に耐えられなくなった山木が、みんなの眼前で飛び降り自殺をする。
山木の死後、松井の悪意は表立って杏平へと向かった。
何も抵抗できない杏平だったが、登山合宿で松井と二人きりになった時に、ふと殺意が生まれる。
崖から足を踏み外した松井を突き落とそうとする杏平。
揉み合う二人。
結局、松井を助けてしまうが、
「滑落した杏平を助けたのは自分だ」
と周囲にうそぶく松井。
後日の文化祭。
山岳部の展示室には松井を助ける杏平の写真が大きく飾られていた。顧問の教師が撮影していたのである。
表情を失う杏平。
それは、教師や同級生が松井の悪意や嘘を知っていながら、それを見過ごしていたという証拠だったからだ。
「黙って耐えていた君は立派だった」
そう教師は褒めるが、杏平の心には届かない。
「じゃあ、なんで黙ってたんですか!?おかしい、みんなおかしいよ!」
杏平は、松井に2度目の殺意を抱く。
が、周囲は無関係なふりをして誰も止めようとしない。
「なんで黙ってるんだよ!関係なくないだろう!」
杏平は叫びながら松井に刃を向けた……。

生前、板前をしていた50代の男性の部屋。
整理が終わる頃、遠方に住んでいる故人の妹・美智子が訪ねて来る。
佐相は、美智子を気遣うように、
「いい板前さんだったんですね」
と遺品の伊万里焼の皿を渡した。
去って行く美智子の後ろ姿を見ながら、佐相は杏平に……
「生きるってことは、すごく恥ずかしいことだ。綺麗に掃除して、その人の良いものだけ残してあげて、亡くなった人の面子を守ってやることが俺たちの仕事だ」
杏平は思う。
「人は死ぬときはひとりだ。死はひとりで迎えるしかないのだけど、生きているときは誰かと繋がっていたい」
ある日、ゆきは仕事中に依頼主の男性に手を触られ、悲鳴をあげ激しく震えた。
心配した杏平は、仕事帰りにゆきを追いかける。
ゆきは、ためらいながらも少しずつ自分の過去に起きた出来事を杏平に告げた。
「わたし、高校の頃に一度殺されてるの」
その出来事のことでゆきは自分を責め続けていた。
「忘れたくても……‘痕’は、ずっと消えないんだよ」

なぜ自分は生きているのか。自分の命は何なのか。
ゆきの話を聞き、何かを伝えようとする杏平だが、言葉が見つからない。
互いに心に傷を持っている二人は、次第に強く惹かれ合うようになる。

ところが……ゆきは杏平の前から姿を消してしまうのだった。
その数ヶ月後、二人は再会するが……。

「元気ですかー!」
「元気ですかー!」
