
【キャスト】
カトリーヌ・ドヌーブ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール
【監督】
フランソワ・オゾン
“何と人生は美しい”
1977年、フランスの地方都市。

毎朝、ジョギングに出かけ、森の動物たちの愛らしい仕草に心を打たれては趣味のポエム作りに生かす優雅なブルジョワ主婦のスザンヌ。
「仕事への口出しも家事もするな。妻はただ美しくおとなしくしていればいい」
が持論の夫・ロベールは、雨傘工場のワンマン経営者だ。

ところが、折から労働争議真っ直中の工場で、ロベールが心臓発作で倒れてしまう。

急遽、工場運営を任されたスザンヌだったが……全くの素人だった彼女が意外な能力を発揮していく!
「そうよ、人生は美しい」

夫が倒れ、工場を切り盛りすることになったブルジョワ婦人が、思わぬ自分の才能を発見していく姿をを描くヒューマンコメディ。
ジョギングをするスザンヌの姿で幕を開けるが……なんとその格好は赤のジャージ!
ゴージャスなイメージの大女優、あのカトリーヌ・ドヌーブが田舎の中学生が着ていそうなダッサい赤ジャージで登場するという衝撃的な(?)オープニング。(ところがこれが、意外と似合っていて可愛いのだ!)
彼女が走り着く先は森の中。
そこで暮らす様々な動物たちを観察し(リスの交尾を目撃して驚いたりもする)その様子をイメージにしてポエムを書くのが日課のようである。
何とも優雅ではないか!
しかしそんなスザンヌは、家ではただの‘お飾り’的存在にしかすぎない。
夫は「お前は‘potiche’(この作品の原題でもある)でいればいいんだ」
と言い放つ。
‘potiche’とは、暖炉や棚の上に飾ってある壺のことで、美しいだけで何の実用性のないものを指し、自身のアイデンティティを持たない女性に対して軽蔑的に用いられる言葉。
つまり彼女は‘飾り壺’のように、綺麗なだけで役には立たない……と見做されているのです。
「自分の意見を言わず、行動もせず、ただ男を引き立てるためだけに存在する……私はお飾りの妻」
ところが工場のスト騒ぎの影響で持病の心臓発作で倒れた夫の代役として、彼女が社長を務めることになり……やがて人生が一変する!
夫だけでなく息子も娘も会社の重役陣も、「あなたには無理だ」と口を揃えて反対するも、
「大丈夫。私はやるわ!」
そして意外や意外、経営の才能を発揮して傾きかけていた会社を立て直しまうのだ。
その後、会社の再生の援助をしてくれた昔の恋人である市長や夫を敵に回して争うことにもなるが、スザンヌは自我に目覚めていき……遂には国会議員に立候補して、見事に当選!
大勢の支持者を前にした演説の場で、スザンヌはこう高らかに宣言して大喝采を浴びる。
「女性に力を!アマゾネス帝国復活を!」
するとマイク片手に歌声を披露し、大団円のラストを迎える。
「何と人生は美しい。美しい人生。そうよ、人生は美しい!」
世間知らずの主婦が、数々の問題を乗り越えながら自分の居場所を見つけて、やがては栄光を掴むというお伽話的ストーリーですが、コミカルな演出と台詞を交えながら綴られる女性讃歌の楽しい作品となっています。
ドヌーブのコケティッシュでキュートな魅力が全開!
とても60代後半とは思えない可愛さ。
歌声やダンスを披露するなどサービス精神も旺盛です。
70年代が舞台だけに、ディスコでのダンスシーンは『サタデー・ナイト・フィーバー』のトラボルタ風


それをフランスの名優ふたり、ドヌーブと作品ごとに太ってくる(?)ジェラール・ドパルデューが並んで踊るのだから、たまらない!
また、雨傘工場の新製品のカラフルでオシャレな雨傘は、『シェルブールの雨傘』へのオマージュが感じられます。
邦題の『しあわせの雨傘』は、もちろんその『シェルブールの雨傘』に引っかけて付けられた訳ですが、とてもいいタイトルですね~!