
【出演】
山田五十鈴、岡田英次、月丘夢路、神田隆、原保美、加藤嘉、花沢徳衛、信欣三、松山英太郎、河原崎建三、下條正巳、梅津栄
【監督】
関川秀雄
“1945年8月6日、ひろしま……”

広島A高校三年、北川の担任するクラスで原爆当時のラジオ物語を聞いていた大庭みち子は、
「やめて!やめて!」
と叫ぶと突然、恐怖に失神した。
原爆の白血病によって前から身体の変調を来していたのだ。
クラスの三分の一を占める被爆者達にとって、忘れる事の出来ない息づまる様な思い出だった。
それなのに……いま広島では、平和記念館の影は薄れ、街々に軍艦マーチは高鳴っている。
「また戦争が起こるのではないのだろうか?」
あの日……昭和20年8月6日の朝。
鳴り響いていた警報が解除された後、米原先生をはじめ同級の女学生達との疎開作業の最中、空から爆音が聞こえてきた。
「Bか?あの音はBじゃな?でも警報発令は解除されたはずじゃろ?」
とその時、激しい閃光に包まれた!
みち子は爆風で吹き飛ばされた!
弟の明男も黒焦げになった!

遠藤幸夫の父は、妻が梁の下敷で焼け死ぬのをどうする事も出来なかった。

広島の街は阿鼻叫喚の世界と化していた……。

「これは地獄だ……地獄だ……」

原爆投下直後の広島の街と人々の姿を描いた反戦映画。
広島に原爆が落とされてから、わずか8年後に作られた作品。
まだ生々しい記憶が残っていただろうに、よくぞこれほどの映画が撮れたものだと驚いた。
とにかくリアル、原爆が落とされた後の描写がヤバいくらいリアルです。
1時間以上に渡り地獄絵図そのものの凄まじい光景が繰り広げられる!
あまりに悲惨な場面の連続に、ただただ唖然。
克明に阿鼻叫喚の原爆被災現場における救援所や太田川の惨状などの修羅場を再現、そして被爆者たちのその後の苦しみも描いています。
58年も前の映画なので仕方ないのでしょうが、オリジナルネガの保存環境が悪かったのか、フィルムが傷だらけの‘雨ふり’状態。
でもそれが逆にリアルさを増幅させるという思わぬ効果を発揮しているのは何とも皮肉。
原爆投下前後の広島の町並みの再現、広大な瓦礫のセットや膨大な数のエキストラの起用など、58年前の日本映画はかなり贅沢な作りをしていたことにも驚いた。
なんでも広島市民の全面的協力の下で撮影されたらしく、一般市民ら約8万8500人が手弁当のエキストラとして参加したという。
しかもその中には、原爆実体験者も多く含まれていて、逃げまどう被爆者の群集シーンは圧倒的な迫力を醸し出している。
(道理でリアルなワケだ)
ちなみにこんなシーンがありました。
「投下されたのは新型の原子爆弾だと国民に発表するべきだ」
と強く主張する学者陣に対し、軍の上層部はこう言い放つ。
「それは断じてならん!戦争の不利になるような発表は許せん!こういう時こそ、一億火の玉で必ず勝つという信念を植え付けるのだ!戦意高揚を促すのだ!」
事実を隠蔽して情報操作をする……今年の春に、どこかで聞いたような話!?
ちなみに音楽はあの伊福部昭で、この作品に使用された曲が翌年に公開された『ゴジラ』の劇中曲にも転用されているとか。