
【出演】
宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信
【監督】
黒木和雄
“おとったん、ありがとありました”

盛夏の広島……昭和20年8月6日午前8時15分。
突如、頭上に炸裂した一発の閃光が人々の運命を襲った!
広島を「ヒロシマ」に変え、父と娘の未来を変えた……。
人類史上初の原爆が投下されてから3年後の広島。
図書館に勤める福吉美津江は、愛する者たちを一瞬の閃光で失い、自分が生き残ったことへの負い目に苦しみながら、息を殺すようにひっそりと暮している。

その彼女の前に、ある日ひとりの青年が現れた。

原爆の資料集めに情熱を注ぐ木下正に好意を示され、美津江も一目で彼に魅かれていくが……。
「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」
自分は人を好きになったりしてはいけない。
幸せなど望んでいない…。
美津江はそんな自分の恋心を押さえつけ、黙殺しようと必死である。
美津江が恋に目覚めたとき、父の竹造が亡霊となって現れる。

頑なに恋心を否定し、幸せの一歩手前で躊躇する美津江に、竹造は自ら「美津江の恋の応援団長」を名乗る。
宥めすかし、励まし、ありとあらゆる方法で何とか美津江の心を開かせようとするのだが……。

広島の原爆投下から3年、生き残った後ろめたさから幸せになることを拒否し、苦悩の日々を送る美津江が、父の竹造に励まされ、悲しみを乗り越え、未来に目を向けるまでの4日間を描いた物語。
登場人物は3人のみ、しかもその9割くらいは娘と父のふたり芝居の会話劇。
原爆のヒロシマの悲劇を描きながらも、広島弁の父娘の会話には心が和む。
亡霊として姿を現している父に何の違和感もなく、当たり前のように接している娘。
父は娘を心配してイロイロとお節介をやき、娘はそんな父をちょっとうるさく思いながらも、愛情を注いでいる。
そんなふたりが暮らす家は、どこか奇妙な雰囲気。
それが最後の最後に明らかになり……思わず鳥肌が。
なるほど、そういうことだったのか!
このあっと驚くラストは注目です。
「最悪の状況下でも、人間は常に未来をみている」
重い題材を扱った内容ですが、観終えた後には清々しさが残る小品でした。