
【出演】
芦名星、安田顕、大森南朋、小市慢太郎、平泉成、白川和子、夏生ゆうな
【監督・脚本】
野口照夫
“想い出は生き続ける……いつか、また逢える日まで”

余命数年と医者に宣告され、自暴自棄になっている宮田真奈美は、インターネットの自殺サイトで集団自殺をしようと考える。

待ち合わせの駅に着くと、そこには真奈美と同じく自殺希望者の男女が。
そして、自殺サイト管理人の妙田が車で現れるが、真奈美に対し……
「お久しぶりです」
「???」
一行は自殺場所の山の中へと向かうも……「TVの最終回が見たい」とか、「ダイエットの為に我慢していた夜中のラーメンを食べたい」とか、「ボーリングでストライクを出したい」とか好き勝手なことばかりしていて、いつまでたっても自殺する気配がない。

業を煮やした真奈美は、
「早く行きませんか!こんなことしてたら、夜が明けちゃいますよ!」
しかし、夜が明ける頃にはみんな自分の生活に戻っていってしまった。
翌日、会社の屋上から飛び降りようとした真奈美の前に、なんと妙田が現れ……。
「あの頃は死にたくないって言ってたのに、今度は死にたい死にたいですか。随分、我が儘なんですね」
「どういうこと?」
「あなたに助けてもらいたい人がいる。その人を助けてくれたら苦しまずに死ねる薬をあげますよ」
と囁き、去っていく。
その夜、妙田からの連絡を受けた真奈美は、彼の管理するボロアパートを訪ねると……。
「懐かしいでしょ?みんなここに帰ってくるんです。覚えてませんか?昔、ここに住んでたの」
と不思議なことを言う妙田。
そこへたまたま入ってきたアパートの住人でカメラマンをしている長田寛治を紹介される。

すると妙田はこっそりと真奈美に、
「彼と結婚して欲しい。そしたら苦しまずに死ねる薬を渡すよ」
とんでもない交換条件を出してきた。
長田は肺がんを患っているものの親から勘当され身寄りがなかった。
「生命保険金を彼にあげてくれ。無駄な命だというならその命で彼の命を救って欲しい」
悩んだ末、真奈美はその頼みを引き受けることにするが……。


人生に絶望感を抱いていた女性が、ある男の15年ぶりの帰郷を共にしたことがきっかけで、新たな人生を歩み出す姿を描く……生と死をめぐるハートフルストーリー。

ファンタジーと現実の境界線が曖昧なような、何とも不思議な物語が展開されます。
長田は言う。
「妙田さんのアパートに住む人たちは、前世で妙田さんがお世話になった人ばかりらしいんだ。あの人に会った時、なぜか懐かしい感じがしたんですよね」
世捨て人のような得体の知れない存在の妙田は、死に神か?はたまた天使か?
真奈美が哀しみを乗り越えて再生していく過程は、切ないながらも最後にはじんわりとした幸福感で満たされる。
泣ける要素が満載ながら、敢えて引いた演出をしているためか、お涙頂戴的な臭さやくどさがない辺りも良い。
エンドロール後に、妙田に関する意味深なシーンが用意されているのにも注目を。
ヒロインを演じた芦名星が可憐で美しい!
長い黒髪、憂いげな表情、そして最後に見せる笑顔など、とても魅力があります。
それから狂言回し的存在の大森南朋が抜群の演技で、おいしい部分をひとり占め。
地味で目立たない作品ですが、なかなか見応えのある佳作でした。