
【出演】
鈴木京香、役所広司、堀北真希、手塚理美、森下愛子、唯野未歩子、有坂来瞳、田中直樹、きたろう、岸部一徳
【監督・脚本】
長尾直樹
“哀しみを乗り越えてよみがえる父と娘の美しい絆”

両親と仲良く暮らしていた女子高生の涌井みつこ。

だが、母が病死。
毎日、病院に通っていた石彫り職人の父・悟は、最愛の妻が死んだショックから……その日に突然、失踪してしまう。
みつこは、叔母や従兄弟に助けられながら、冷蔵庫に晩酌用のビールを冷やし、父の帰りを健気に待ち続ける。
それから半年後……。
‘行方不明の父が見つかったのは、私の町のはじっこに建つ、古い遺跡のようなビルでした……’
そこは、小さな田舎町の中の異国?
昔はタンゴやスペイン語を教えていたが、変わり者でちょっと頭がおかしいとさえ噂される……アルゼンチンババアことユリの住む屋敷だった。

妻を亡くしたばかりの悟が、そんなババアと関わり合いになるとは誰一人思いも寄らなかった。
「母の供養もせず、どうして父はそんなところに?!」
みつこは勇気を奮って父親の奪還に向かうが……。
ドアから出てきたユリは、いきなりみつこを強く抱きしめると、
「みつこちゃん、あなたを抱きしめたかったの。お母さんのこと辛かったね……寂しかったね」
そして、悟と対面するも……
「よ!みつこ」
「よ、じゃないでしょ!ずっとここにいたの?何してたのよ、こんなところで!何か言うことないの?」
「お前、曼陀羅って知ってるか?」
「はあ?曼陀羅???」
ワケの分からないことを言う悟に戸惑うみつこ。
しかも悟はアルゼンチンババアと恋に落ちていた!?

そんなみつこが目にした屋敷の内部の光景は、温かな陽だまりのように気持ちよく、穏やかな空気が満ちていた。

悟は屋上で、毎日こつこつと奇妙なものを制作しながら、少しずつ妻の死の痛手から回復しているようだったが……。


妻に先立たれたことで心の支えを失った男とその娘が、風変りな女性・アルゼンチンババアとの交流を通じ家族の絆を取り戻してゆく姿を綴る人間ドラマ。

妻の死を受け入れられず娘を置いて失踪する父親と、その父の帰りをひたすら待つ娘。
そして強烈な厚化粧にぼさぼさ白髪頭、異様な体臭を撒き散らす……謎めいた女性・アルゼンチンババア。
この3人のふれあいを軸に、人の生死をテーマに扱いながらも、じんわりと体中に染み渡るような幸福を描き出していきます。
繊細すぎて妻の死に向きあえず、現実逃避した挙げ句、娘をほったらかしにするダメな父親。
「俺は逃げてた。ずっと逃げてた。あいつが死んだことを受け入れるのが怖くて、逃げていたんだ」
一方、父親に翻弄される一人娘のみつこも、母の死に対して辛い思いを抱えていた。
「お母さん、だんだん小さくなって……汚くなってって……わたし、早く死んだ方がいいと思った。そしたら本当に死んじゃった。わたしが殺したも同然だよ……」
大きな愛で人々を包み込む不思議な存在、アルゼンチンババアは、みつこに優しく語りかける。
「どうして人は愛し合うか知ってる?時間よ、どうか流れないでって……永遠にいつまでも続いていてほしいって……そう願うからなの」
お伽話のように美しい世界観と、愛と絆の物語に心癒される一作でした。
それから、堀北真希のセーラー服姿が拝めるのも今となっては貴重!?