
【出演】
藤田まこと、富司純子、ロバート・レッサー、フレッド・マックイーン、リチャード・ニール、蒼井優、田中好子、西村雅彦、頭師佳孝、竹野内豊 (ナレーター)
【監督】
小泉堯史
“今だからこそ、この「遺言」を明日の世界に届けたい。
実在の人物・岡田資の、「愛」と「誇り」に満ちた生涯。
極限状態下において、信念を貫き誇り高く生き抜いた一人の男と、それを見守る家族との深い絆と愛の物語である”
昭和23年3月。
元東海軍司令官・岡田資中将は、B級戦犯としてスガモ・プリズンに入所していた。

岡田とその部下に対する起訴理由は、‘捕虜となった38名の米軍搭乗員に対し正式の審理を行わず処刑を行った’というもの。
被告人20名のうち、15名は斬首処刑の執行者であった。
主尋問が始まるまでの約1ヶ月ほどは、証人への尋問が続き……検察側は「略式手続は不当で、岡田中将の行為は殺人である」との証言を引き出した。
対して弁護側は「処刑された搭乗員はジュネーブ条約の定める捕虜ではなく、無差別爆撃を行なった戦争犯罪人である」と主張。
岡田は、略式裁判の正当性をこう訴える。

「我々は日本の歴史と運命を共にしなければならない……これが東海軍全体の考えであった。しかし米空軍は優勢で、翌日のために計画を作ろうにも見通しが立たなかった。日々、直面している問題について、第一総軍の指令を仰ぐことは不可能であった」
彼は法廷闘争を法による戦い……「法戦」と名づけ、飽くまで戦い抜こうと心に誓う。
3日目の公判では、
「責任の筋を辿って行けば、司令官たる私の方へ来る。司令官は、その部下が行った全てについて唯一の責任者である」
と発言。
この頃から、彼の態度、言葉によって、全面的に責任を取ろうとしていることが明らかになってくる。
4日目の公判。
結婚式を1週間後に控えた、岡田の長男・陽とその婚約者・純子が現れる。
二人の幸せな姿を傍聴席に見せて安心させたいという家族の思いやりであった。
フェザーストーン弁護人と岡田の間には、いつしか親愛感が生まれていた。
弁論する堂々たる態度、余裕のあるそぶり。彼が弁護人であることに、岡田の妻・温子は深く感謝する。

連日、傍聴席で岡田の姿を見つめる家族、そして最愛の妻・温子の存在。
言葉を交わすことは許されないが、笑顔を交わすだけで、岡田にとっては非常に心強いものであった。
バーネット検察官は2ヶ月間、執拗極まる敵だったが、一面で時たま紳士らしい姿も見せ、時には岡田に有利な論告もした。

岡田の証言は既に7日に及んでいるが、答弁に少しの乱れも見せてはいなかった。
5人の裁判委員、3人の検察官の面々共、次第に親愛感すら湧いてくる。
その日、岡田の長女・達子が、赤ん坊を抱いて入ってきた。
万感の想いで赤ん坊を抱く岡田を優しく見詰める検察官、弁護人、そして裁判長。
東海軍の公判は結審となり、いよいよ5月19日……判決が申し渡された。

「判決、岡田資、絞首刑」
岡田は軽く頷き、5人の裁判委員を見上げる。
手錠を掛けられ退場する彼は、法廷を出る間際、接近しえた温子へこう告げる。
「本望である」
なすべきことは、なし終わった……。
処刑の前々夜、中将は妻・温子にこう書き遺す。

‘温子よ、短い様で永い、又永い様で短い此世は、そなたにはえらい世話になったね。
御礼の言葉もないよ。そなたの誠実さと私に対する純愛は、公人としての私を十二分に働かせしめた。余生尚有れば、十二分に老妻をいたわってと想うて居たが、今は私の強い業力思念を以て御護りする事に致しませう。家族も一同も共に、共に……私は今、久遠の命を確信しています’
その晩は、月夜であった。
「見事な月ですね」
岡田はブルー・プリズンから13ゲートまで、両側を監視兵に挟まれて行く。
刑場の扉の前、
「御機嫌よう……」
そう言い遺して、ドアの中へ。
昭和24年9月17日、午前零時半であった……。
太平洋戦争末期、米軍機の搭乗員を処刑した責任を問われ、B級戦犯として戦争裁判にかけられた岡田資中将の法廷での戦いを描いた実話の映画化。
岡田は一貫して「太平洋戦争における米軍による市街地無差別爆撃は大量殺人である」と主張。
処刑した搭乗員は‘戦犯’なのかどうかを深く考えさせられます。
そして、部下を守り全責任を負う覚悟を見せる岡田中将の潔い佇まいは、次第に敵国の検事や裁判官をはじめ法廷内にいる全ての人を魅了し心動かしていくのです。
自らの戦争犯罪を潔く認め、言うべきことを堂々と主張し戦い抜く。
部下が命を預けることが出来るほどの信頼関係と尊敬の念を抱く人物……最後まで自分の信念を貫き、責任を全うするという潔く清々しい態度に感銘。
誇りや品格といった人間としての美徳を大事にし、そして筋を通し、全責任を全うした岡田資中将は、正にトップリーダーとしてあるべき姿そのもの。
それに比べて……己の保身に走り、無意味なパフォーマンスや空虚な発言を繰り返す今の日本のトップリーダーときたら……などと思ったりして

