
【キャスト】
ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド、マーク・マーゴリス、トッド・バリー
【監督】
ダーレン・アロノフスキー
“家族、金、名声、すべてを失った……それでも俺はリングに立つ”

1980年代に大人気レスラーだったランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン。

だが、20数年経った現在は……落ち目となり、スーパーでアルバイトをしながら、辛うじてインディー団体でプロレスを続ていた。


そんなある日、往年の名勝負と言われたジ・アヤトラー戦の20周年記念試合が決定する。
メジャー団体への復帰チャンスと意気揚がるランディだったが、長年のステロイド剤使用が祟りその副作用で試合中に心臓発作を起こして倒れてしまう。

手術をしてどうにか命は取り留めたものの、医者は引退を勧告。
「激しい運動は無理。命が惜しければ、リングには立つな」
「俺はプロレスラーなんだぜ」
泣く泣く現役続行を断念したランディは、馴染みのストリッパー・キャシディから家族に連絡するようにと勧められる。

長らく会ってない娘・ステファニーに思い切って会いにいくが……案の定、冷たくあしらわれてしまう。

しかしランディは娘との関係を修復し、新しい人生を始めようと決意し……。
一時は栄華を極めた男が自らの人生を省み、“人生とは自分との戦いだ”と再びリング(=自分が輝ける場所)に立つ!
中年の悲哀漂うプロレスラーの光と影を描いた人間ドラマ。
誰も避けることの出来ない老いと孤独、迫りくる死の影。
その足音を間近に感じながらも、自分が最も輝ける舞台に舞い戻っていくランディの生き様は、哀しくも美しい。
引退してスーパーで働いているランディにひとりの客が声をかけます。
「あんた、どこかで見たことがあるな?」
ランディは激しく狼狽する。
「そうだ!“ザ・ラム”だ!あんたプロレスラーのラムだろ?」
「人違いだ」
「いや、間違いない。何でこんなところで?」
その瞬間、ランディは溜まりに溜まっていた鬱積が爆発します。
「ふざけんな、冗談じゃない!辞めだ!こんな店、辞めてやる!」
自分の居場所は、やはり四角いリングしかない!
彼はまたいつ‘ハートアタック’が起きるか分からない状態で、レスラーに復帰する。
そしてボロボロになりながらも戦う姿は、切なすぎる……が、痺れるくらいカッコイイ!
かつての栄光から滑り落ちても、プロレスにしがみつくランディ。
これは何となくテリー・ファンクのイメージとダブるものが。
(ただランディの外見は、‘HHH’風な雰囲気)
プロレスファンには正に涙モノの作品です。
またドレッシングルームで段取りの打ち合わせをしたり、‘ジュース’用のカッターをテーピングに仕込み、試合中に自らの額をカットするなどのケーフェイをリアルに描写したシーンも印象的。
肉体改造や苦痛を和らげる目的で大量の薬物を購入する光景、プロレス界の暗い実態及び全盛期を過ぎてもなお引退の機会を逸したプロレスラーの生活苦や悲哀の実態を見事に映し出しています。
ECW風のハードコアプロレスのシーンもかなりリアル。
(対戦相手同士がホームセンターで凶器に使えそうな物を買い漁る姿は、笑えました)