
【出演】
森田彩華、中山卓也、黒川芽以、佐々木和徳、多部未華子、橋爪遼、西原亜希
【監督】
長澤雅彦
“大切な友達がいなくなる。本当の別れを初めて知った日……痛みと切なさが胸につき刺さる”

東京・三軒茶屋。
新聞でいっぱいになった自転車を颯爽と走らせる、西原中学3年の高橋正樹。
彼が人知れず新聞配達をしているのには理由がある。
毎朝、同じ家に新聞と一緒に手紙を入れ、2階の部屋ヘピースサインを送るためだ。
そこは正樹の幼馴染み、矢島信二の部屋。
信二は勝也のせいで、もう2年も学校へ来ていない
自分は信二を助けられなかった。勝也との対決を避けた正樹の心には悔いがある。
新聞配達を終えると、朝練のため誰よりも早くバスケットコートを目指す。正樹のいつもの朝の儀式。
そんな1学期も残りわずかなある日のこと。
ホームルームの最後に、正樹が突然、今学期限りでアメリカへ転校することを発表した。
「今までありがとうございました。アメリカに行ってもバスケやります。NBAで10年後に活躍する僕の姿を楽しみにしててください!日本でやり残してることは……ひとつだけかな?」
「やり残したこと」……突然の転校発表もさることながら、この正樹の意味深な発言にクラスの全員が騒ぎ出す中、複雑な表情をしている面々がいた。
女子バスケ部キャプテンの速見有美、正樹の親友で男子バスケ部副キャプテンの杉原雄大、学級委員長で優等生の高橋亜里沙、正樹が何かと面倒を見ている鈴木貴子。

正樹の幼馴染みの河原春名と海外生活の相談を受けていた帰国子女の市田尚子以外は、事前に転校の話を聞かされていなかったのだ。
「残る俺たちの気持ちはどうすんだよ!」
たまらず詰め寄る雄大。
「水臭いじゃん!」
怒る貴子。
その日を境に、バラバラだった彼らの関係が、少しずつ動き始める。

正樹はバスケ部の最後の練習日に、「本当は好きな女の子がいた」と皆の前で告白する。
雄大は正樹の好きな相手が有美ではないかと牽制する……何故なら彼は、小学生の頃からから6年間ずっと有美のことを好きだから。
「俺は今年も彼女の誕生日に告白する」
「またフラれるのに?」
「それでもいいんだ」
亜里沙は休日に正樹と偶然のデートをしてから、彼を意識し始めてしまい勉強も手につかない。

「何かよく分かんないんだけど、気になる存在になっちゃった。これって好きになったってこと?」
有美はそんな亜里沙の様子を見て、
「正樹の好きな人が亜里沙ならいいのに……」
と願う。
貴子は正樹が尚子とメール交換をしていることを知り、彼女を知ろうと接近する。

「尚子?あぁ、あのコって誰とも喋んないじゃん」
春奈は母親同士が産婦人科で知り合ってから15年間一緒だった正樹がいなくなることの実感がなかなか湧かない。

「あんたがいなくなるのは勝手だけどさ……やっぱ淋しいよ」

尚子は転校生である自分の経験から、去る正樹と残る友達の気持ちを誰よりもわかっていた。
「転校してきて不安でいた私に、最初に声をかけてくれたのが高橋君だったの」
こうして、1学期も終わり、皆で過ごす最後の夏休みが始まった。


引越しの日は1ヵ月後の8月22日。
「やり残したこと」とは何なのだろうか?
それぞれが、正樹がいなくなることを次第に実感し始める。
雄大は20日の夜に校庭に忍び込み、正樹を驚かせるようなお別れ会を企画する。
正樹を囲んでの花火大会。
そして、それぞれメッセージを書いた紙をタイムカプセルに入れ、
「10年後にまた集まって、その時に開けよう」
「10年後……25歳かぁ」
みんなの気持ちが少しずつすれ違い、少しだけ重なり、とうとうお別れの日になった……。
そして……正樹がいなくなった新学期。
また普通の日常が始まった。
でも、みんなの中では何かが変わっていたのだった……。


15歳の夏、隣にいることが当たり前だったクラスメイトの突然の転校。
初めての別れを経験する少年少女たちの揺れ動く心情を美しい映像で綴る青春群像劇。
誰の心にもある忘れられない記憶を喚起する青春の姿が切なくも清々しい!
十代の宙ぶらりんな心。
それは友情?初恋?
今日が、あっという間に明日になる。
明日には自分は何処にいて何をしているのか?誰といるのか?
友達がいなくなるということ、初めて人を好きになったこと、受け入られなかったこと、いじめられたこと、自分が今暮らしているこの場所を大切だと思うこと、言いたかったこと、立ち向かいたかったこと……。
そんな様々な想いと出来事が毎日積み重っていき……あることは大切に、あることはいつの間にか心の中にしまわれていく、そんな一瞬を鮮やかに描き出していきます。
メイン9人の若手俳優が好演。
特に黒川芽以(

二人共、微妙な心理描写を見事に演じきっています。
長澤監督は『夜のピクニック』という青春群像劇の傑作がありますが、この『青空のゆくえ』も素晴らしい作品でした。