Sonny Stittは本当に不当な評価が付いて回るSax奏者であった。おそらく1920年代生まれのJazz Musicianの中で来日公演も行い、三桁を越えるような数多くの作品を残したのにも関わらず、日本でここまで評価されない人も珍しいのではないだろうか。かく言う自分もSttitの魅力に気付き、のめり込むのには、それなりの時間を要したのであった。とにかくSttitという人は楽器が上手い。Charlie Parker直系、ParkerのEpigonenとまで揶揄されたAlto Saxにしても、そういった批判から逃れるためか吹くようになったTenor Saxにしても、とにかく次から次に淀みなく繰り出されるフレーズは圧巻である。その二刀流のどっちつかず感とか、フレーズも超速ゆえに哀感や深みに欠けるのではといったイメージが付きまとう。しかし、細かいことは抜きにして、その小気味よいフレーズと共演者との指パッチンでSwingyな演奏に身を任せれば良いのである。StittのTenorは、Altoに比べると、スピード感よりも歌心とか鳴りを生かしたスタイルになっているのも興味深い。そういう意味では、今回ご紹介する60年代にPrestigeから量産されたOrganとTenor SaxのコンビでSoul-Jazz仕様のJam SessionでStittのTenorを心地良く楽しむのもアリだろう。Stittが"Brother" Jack McDuff あるいは "Captain" Jack McDuffとしても知られる黒々としたEarthyなOrgan奏者と共演した音盤である。しかも2人がデビュー・アルバム以来、縁のあるPrestigeからのリリースである。期待にたがわぬSoulfulで共に陽性と思われるご両人の性格を反映してか、問答無用で身体が動き出し元気が出るご機嫌な作品に仕上がっている。いつものコテコテの黒々としたOrganはチョイ抑え目のMcDuffに気持ちLooseでRelaxしたヤクザな鳴らしっぷりのStittもい味出している。ギターはBensonを期待してしまうとチョイ影の薄いEddie Diehl、DrumsはArt Taylor、Congasを叩くRay Barrettoというメンツで、出しゃばらずに2人を立てた激渋のバッキングも素晴らしい。
『Stitt Meets Brother Jack』は62年にPrestigeからリリースされたSonny Stitt With Jack McDuff のアルバム。
アルバム1発目はStandard“All Of Me”。Ray Barrettoが叩く心地良いCongasをバックに至極真っ当で脱力したともいえるRelaxした演奏が心地良い。McDuff のHammondのざらついた感じが、より一層Soulfulな香りをまき散らしている。余裕というか、ドッシリ構えたStittのTenorが
心地良くSwingする思わず指パッチンのBlues“Pam Ain't Blue”はStitt作。BluesyなTenorがCongasとMcDuff のOrgan Bassのランニングが生み出す生命感に満ちたRhythmにのってド渋く歌いまくる。McDuff のコテコテ抑えたHammondソロも控えめな(音小さっ)ギター・ソロも気持良いっすなあ。
Sarah Vaughanの名唱で知られるSammy Cahn作曲のStandard“Time After Time”は雰囲気タップリのBalladでStittのコクのある歌うTenorが味わえる。
再びStitt作のBlues“Ringin' In”。コテコテに攻めずSoulfulに歌うMcDuffのHammondが良い。鳴りの良い艶のあるStittのTenorもご機嫌である。
Laid BackしたStitt作のBlues“Nother Fu'ther”。Relaxしながらも時々鋭く速いPassageのフレーズをかますStittが良い。Earthyに歌うMcDuffのHammondが絶品。
StittとMcDuff共作の必殺の男泣きのBallad“When Sonny Gets Blue”。男性的だけど、まろやかで甘さを抑えつつ味わい深いTenorに酔いしれる。Stittの名前をかけたタイトルが洒落ている。
最後をシメるのは、これまたSitt作のご機嫌なBlues“Thirty-Three, Ninety Six”。StittとMcDuffのソロもBluesyに歌いまくるMidiumの心地良い指パッチンJazz。
(Hit-C Fiore)