Sonny StittというSax奏者にのめり込むのには時間がかかった。StittといえばCharlie Parker直系のAlto Sax、ParkerのEpigonenといわれたくないために吹いたTenor Sax、そしてBaritone Saxまで吹いてしまう。しかも、その何れもが上手すぎるぐらい上手い。ところが、奇を衒わない直球一本勝負のプレイは、自分にとって情緒に訴えかけるものや侘び寂を感じさせるLyricism、押し引きで勝負する部分に関しては、それほど感じ取ることはできなかったのであった。さらに、あまりにも多くの作品を残しているMusicianでもある。そういったところが自分にとっては、何か漠然としたSttitの掴みどころのなさとなってしまっていたのかもしれない。ところが、ジャケットにつられて思わず手にした本盤を聴いた時に、爽快感と何ともいえない心地良さになるほどと思ったのである。陽気である種、脳天気ともいえる明るさと小洒落た名人芸が持ち味であるWest Coastの名手たちの演奏をバックにSttitの艶のあるAltoが映えること。One Hornで吹きまくり。あの伸びやかではりのあるAltoが淀みなくフレーズを次々に繰り出す、これぞ正にSttitの本領発揮の一枚なのだ。Standardを中心に、Parkerのそっくりさんなどと言われようが何の迷いもなく一心不乱に吹き飛ばす。クドイといえばクドイのかもしれないが、それを上回る脳天気なほどの爽快感。ここまでやってくれれば文句なし。ドラムスにMel Lewis、ベースにLeroy Vinnegar、ピアノにLou LevyといったWest Coastきってのセンス良子な腕利きたちをバックにStittが自分が持てる力を出し切ったアルバムである。小難しいことや、新しいことなんか俺には関係ねえとばかりにBop一筋に芸を磨いてきた男の、これこそがDandyism溢れる一枚である。ジャケットにつられたとはいえ本作は、自分にStittの楽しみ方を教えてくれた大切な一枚となった。
『Saxophone Supremacy』はSonny Stittが59年の年の瀬に録音しVerveからリリースしたアルバム。
59年にSttitは実に多くの作品をリリースしているが、この年の12月にLAで『Sonny Stitt Blows the Blues』を録音した時に同じメンツで制作されている。
アルバム1発目は“I Cover the Waterfront”。Stittの陽性でWarmなToneのAltoがここぞとばかりに流麗に吹きまくるのが最高。West Coastの名手たちを従えて思い切り気障に、いつもに比べて少々洒落こました感も素晴らしい。これぞ愚直に音楽一筋、一本気な男のDandyism。
雰囲気タップリの“Lazy Bones”。Bluesyに転がりまくりのLou Levyの歌心満点のピアノも気持ち良い。
Sax奏者Bennie Krueger作の“Sunday”も指パッチンのSwinger。もう気持ち良いぐらいStitt節全開。
ピアニストJohn Klenner作の“Just Friends”。Chet Bakerの『Chet Baker Sings and Plays』にも収録されていた小粋なナンバー。こちらもLevyのピアノ・ソロが素晴らしい。
West Coastらしい小洒落たイントロで始まる“All Of Me”。小細工なしに朗々とAlto saxを鳴らすSttitの心意気。
Sttit自作の“Two Bad Days Blues”。天衣無縫なSttitにLevyも見事に応戦。
小粋な“It's You Or No One”はLevyの洒脱にキメたイントロから胸が高鳴る。Sttitも歌心たっぷりにBlowし、Levyのご機嫌なソロに心地良さ満点指パッチン。
最後をシメるのはSttit作“Blue Smile”。急速調で本気モードのSttitがビシバシと直球一本勝負。Levyは勿論、Mel LewisとLeroy Vinnegarがキレキレですわ。とはいえ次々とフレーズを繰り出すSttitの殆ど独壇場ではある。
(Hit-C Fiore)